「未来はゾンビの手の中に!!!」と。二本立て×2
◆『それでも夜は明ける』キネカ大森1

▲主人公(左)とカンバ演じる飼い主(中)
五つ星評価で【★★★クロンボに生まれると大変だ、な一本】
自由黒人という人たちがいるのね。
彼等は常に自分が「自由黒人」であるという証明書を持ち続けていなければ、自分の立場を保持できない。現代日本で大袈裟にデフォルメするなら、免許証を携帯し忘れたら捕縛されるみたいな状態だ。人間の身分から家畜に落ちる。良くてペット扱いである。「うちのわんちゃんはペットじゃないんです、家族なんです」と言い張ろうが、射殺されてもお金さえ積めば保証は済んでしまう。そんな存在になるという事なのである。そういう位置への転落がとても簡単にシフトチェンジできてしまう事が怖い。1841年、日本では天保12年、明治元年の27年前、まだチョンマゲだ。それを考えるとアメリカの生活様式は見た目、ほとんど変わらない。逆に奴隷制度がなくなった事が日本がチョンマゲやめて世界に鎖国を解いたくらい大きな事なんだろうなあ。
今回この映画ではシスティマティックなビジネスではなかったが、自由黒人を奴隷として売る闇ビジネスが普通に成立してたと思うとこんな話はゴロゴロしてたに違いない。ただ、奴隷から自由黒人に戻ってきた例が希少すぎて規模も何も分からないと言うのが実情ではないだろうか。
奴隷商が奴隷を売るのに、古代ローマの市場みたいな競りにせず、全身裸に剥いた奴隷を室内に調度品のように立たせ、サロンのような雰囲気の中、売買しているというのが、絵空事でないリアリティがあった。ヨドバシカメラやビッグカメラの1フロアに奴隷専門のフロアがあるみたいな感じである。
SF小説の中でドイツ・日本が第二次世界大戦に勝利する、架空戦記物等は日本にもあるが、同じようにアメリカでは南北戦争で南軍が勝利を収めて奴隷が解放されなかった架空未来SFとかあるのだろうな。あまりに現実から遠くて日本人には予想できない。
カンバーバッチみたいに、いい人なんだけど奴隷制度に支えられた生活をしているので、奴隷制度は肯定せざるをえないという飼い主と、骨の髄まで奴隷制度を支持している飼い主とを併記している所は構造として良心的だと思う。
『それでも夜は明ける』って何かタイトル的にどこかで聞いたような気がすると思ったが、アレだ。藤圭子の『夢は夜ひらく』だ。せっかく思い付いたのに、そんなに似てないなあ。
◆『ムーンライト』キネカ大森1

▲色覚検査っぽい。
五つ星評価で【★★★切ない一本】
切ない話だ。
でもまあ、そんなに主人公に同一化できなかったので、思った以上にグッとは来なかった(人非人俺)。主人公の3世代を演じる役者はみんな真剣なよい表情をしている。麻薬ディーラーという存在は本来、撲滅すべき悪党だと思うが(アクション映画で唯一一切の背景なしに殺されても文句言われない悪役)、街の風景の中ではしっかり根を張って、それなりに人格者みたいな撮られ方をしてるのは面白いと思う。押し付けて売っているのでなければ、売る方より買う方が悪いという皮膚感覚が場所によってはあるのかもしれない。
章立てで使われる名前が
「リトル(チビという意味の別称)」
「シャロン(親からもらった社会的な名前、ウィキによると女性の名前)」
「ブラック(焦がれている人からもらった名前)」
という形で主人公が徐々に自己確立していく事を表わしているのではないか?
◆『ディストピア パンドラの少女』キネカ大森2

▲ポスタービジュアルに使われてるマスクもそうだけど、拘束用車椅子とかアイデアやビジュアルが斬新。
五つ星評価で【★★★ムチャクチャ作り込んだ世界観に好感が持てる】
新種ゾンビもの。ハングリーズと呼ばれる新ゾンビはキングが手掛けた『セルラー』の携帯ゾンビと行動がちょっと似てる。襲う時は果てしなく襲い、静かな時は集団として統制が取れながら静か。キングのアレ、あくまで映画だけを見た限りにおいては設定が適当なので、この映画のゾンビの複雑な設定には太刀打ちできない。と言うか、行動パターンはゾンビであるが、もうこんなに設定を作り込まれたら単純に「ゾンビ」ではないわな。
主人公側のゾンビ特性を持ちながらそれを抑制している少女のゾンビ特性演技が素晴らしい。いや、彼女に限らず、ハングリーズになった者の演技はみな素晴らしい。従来のゾンビとは異なる特徴のあるボディー・アクションが付いており、それがとても良い。演出の演技付けが上手いのかもしれない。
エンドロール見てグレン・クローズが出てるとは思わんかった。グレン・クローズなんてじっくり撮ったら確実にゾンビより怖い女優だもんなあ。
但し、あの特に何も解決せずに時間だけ先延ばしにしてるように見えるあのラストはちょっと好きじゃない。
◆『ゾンビ処刑人』キネカ大森2

▲ふじき的にビックリする結末が待っていた。
五つ星評価で【★★割と安い】
冒頭とラストに付けた特殊な場所での行動以外は
今までどこかで見たようなデジャ・ブが蘇ってくるありがちな話。
と思ったら、今はなきシアターN渋谷で昔一回見てた。
おいおいおいおい。覚えてなかったなあ。
どうりで見た事があるような映画と思った筈だ。
【銭】
2017年4月始まりで購入したキネカード(名画座回数券)。キャンペーン期間中につき半年間で3回入場券付で2000円。うち3回分の使用を終わったので一回1000円で見れるフリーパスとして使用(4回目と5回目)
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・それでも夜は明ける@ぴあ映画生活
・ムーンライト@ぴあ映画生活
・ディストピア パンドラの少女@ぴあ映画生活
・ゾンビ処刑人@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
・それでも夜は明ける@映画のブログ
・それでも夜は明ける@映画的・絵画的・音楽的
・ムーンライト@映画的・絵画的・音楽的
・ムーンライト@或る日の出来事
・ディストピア パンドラの少女@だらだら無気力ブログ
▼関連記事。
・ゾンビ処刑人(1回目)@死屍累々映画日記(コメとかTBとか)
・ゾンビ処刑人(1回目)@死屍累々映画日記・第二章