◆『散り椿』トーホーシネマズ新宿11

▲「お褒めいたしまする」。でも、長生きさせたいなら故郷には返さない方が良策ではないか? 返せばモメる事は分かってるのだし、現にモメて、岡田准一が生き残ったのは偶然にすぎない。
五つ星評価で【★★まあ、殺陣と役者はいいけど、脚本はきっとそんなでもない】
ネタ
P「この映画の売りは岡田准一の殺陣だ。だから殺陣にモザイクを掛けて、完全版で外す」
男客「岡田准一の殺陣がすんげーイヤらしくてモザイク入ってるらしい」
女客「何それ、さいてー、絶対行く」
殺陣は良かった。しかし、あの剣法は大上段から骨を断つような剛の剣ではなく、人体の弱点に対して着実にヒットさせて相手を出血させて死に追いやるナイフのような剣である。なら、最初の雪上の戦いからバシバシ流血させるのが本当だろう。演出としてはあそこでバシバシ流血させてないからラストの流血が効果として効くのだが、全体として嘘が残った。野討ちなどに関して、逆討ちしないという方針を取ってるなら別だが、そこまで寛容な態度を取ってるようには見えなかったし、取ってるのなら観客にそう見えるように見せるべきだ。返り血を浴びると麻生久美子が気遣うだろうから、刀による服の綻び同様知られたくはないのだろうけど、刀で服を斬られるような相手に流血を避けるために殺法を変えていたと言うのも又リアルでないだろう。いや、それより単純に妻を人質に取って嬲り殺しに掛ければいいのに、敵のバカ。
あと、下から来る太刀筋は防御しづらいから、実戦剣法として岡田准一はあの低い姿勢を取っているのだろう。なら、敵側は少し練習をさせた薙刀を使って複数で取り囲めばよい。襲撃者側からの間合が遠く取れ、間合を狭められても角度を変えた横薙ぎが出来る分、対処がしやすい(その点、槍は間合を狭められたら弱い)。と言う事も思い付かない敵のバカ。
で、そのバカの敵の奥田暎二はいい感じに爺になった。爺は近寄ると何もしなくても皺が悪さを演出してくれて良い。この人の皺は貫禄とかでなく、臆病な老人特有のそれだ。
あまり、出番がなく静かだが、蛍雪次朗の爺具合もいい。こちらは善悪関係なく、ただ老けてるっぽい。
この映画の一番の恐怖は富司純子。怖い怖い。『恋妻家宮本』でも怖かったけど引き続き怖い。
黒木華の「お優しすぎまする」がいい。あのセリフを成立させるために麻生久美子は心ビッチ女でも良かった。その方が話が分かりやすくなるし、岡田准一の孤高が引き立つ。みんな八方美人にしてしまった為、話が分かり辛くなった。
麻生久美子は恋愛を乗り越えた孤高の善人になるよりも、問題はあるが一生懸命生きた人にしてあげた方が、善人ではなくなるがチャーミングだったのではないか。
ただニコニコ笑ってるだけで芝居をさせてもらえないみたいな芳根京子も強烈。芝居をしない事が芝居と言う強烈なパラドックス。
池松壮亮がどこかチグハグ。言葉の使い方、テンポが彼だけ現代劇みたいだ。これは半分以上脚本の責任だと思うが、池松壮亮が岡田准一に心を開いていく過程が分かりやすく描かれていない。だから都度都度の態度が観客側が読み取れず、更にギクシャク感じてしてしまうのではないだろうか。
昔の事件の誰が誰を切って、どう自害に繋がったかとかはミステリー仕立てになってるが、分かっても何にもならないのであそこをそんなに深く踏み込まなくても良かったと思う。
スタッフロール、キャストロールは監督自ら書いたのだと思うが、あれは「おま、日ペンで勉強しなおせ」ってレベル(断言)。少なくとも私はあれ見て見苦しいと思った。何か達筆というよりは中学生とかの子供に書かせたみたいな字。
『散り椿』チリだから辛いか、とかも呟いてたな。
◆『夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~』トーホーシネマズ新宿8

▲「こんな写真使うなよ、俺」という一枚。
五つ星評価で【★★★悪くない】
一見さん状態で鑑賞。基本、見ていてストーリーに支障を来す程分からない部分はないが、妖怪払い人・名取と夏目の関係や、夏目の同級生が夏目の能力をどこまで知ってるかなどについて、当然、知ってるよねという体で解説されないのはちょっと歯痒く感じた。
祖母から受け継いだ「夏目友人帳」。これに載る妖怪は所持者の命令に逆らえない(らしい)。んー、形を変えたポケモンだったり、妖怪ウォッチだったりみたい。
エンドロールで脚本を村井さだゆきが手掛けている事を知ったので、「あっ、いい話だけど迷走する話だったな」と得心した。でも、村井さだゆきは劇場実写版『ブギーポップは笑わない』以来、その手腕に対してかなり信頼している。
柊、笹後、瓜姫とかのデザインは好き。あの妖怪三体にいやらしい事されたい(おいおいおいおい)。
◆『クワイエット・プレイス』トーホーシネマズ新宿3

▲ヤンマーの新型ディーゼル・トラクター「駆動静香」と言う商品が売れそうな世界。
五つ星評価で【★★★★単純にこーゆー「それしかない」系の映画が好き】
ネタ
「怖い越冬プレイス」って八甲田山みたいな映画かしら(音を立てると雪崩が!)。
静かにしないと『ドント・ブリーズ』のあの男がどんな所であろうとやってくるぞ、という映画。しかも高速で破壊力抜群。
やはり、あの釘はどうにかしとけよとは思うが(しょうがないな、やっぱやっちゃったよとも思ったが)全般、問題なく見た。これはイベント映画だから多少のありえなさや設定が正しいかどうかについては目を瞑る方向。と言うよりは私、ゆるいんでそういうのあまり気づかない。
あいつがいるのに新聞社の輪転機は回せないだろうというツイートが回ってきたが、あれは回せると思う。あいつが隕石に乗って世界各国にやってきたとしても市町村レベルまで満遍なく隕石が降り注いだとは思えない。例えば日本だったら怪物映画の経験則で一箇所か二箇所。産経新聞などは東日本で印刷工場を四つ持っているので、隕石が落ちてから被害者が出始めて蔓延する中でも、その全ての工場にアレが到達するまではタイムラグが発生すると思う。だから、そのタイムラグの間、輪転機は回せる筈だ。あと、あいつが蔓延しすぎている件については『ガメラ 大海獣空中決戦』のギャオスやエメリッヒ版『ゴジラ』のように単性生殖で爆発的に増殖が可能なのだろう。『ドント・ブリーズ』のあの男みたいにスポイトをいっぱい用意してるのかもしれない(イヤすぎる)。
『カメラを止めるな2』はこの映画の設定をいただいて作れ。予算は500万だ。
◆『太陽の塔』シネマカリテ1

▲芸能山城組とか似あいそう。
五つ星評価で【★★★前半のビジュアル・ショックがもっと後半まで続いてほしかった】
最近見た予告の中でこれは凄い。見ずにはいられないと思ったのが『太陽の塔』。予告編から感じる映画としての異物感が半端なかった。
鑑賞し終わって、前半が面白い。
それは前半は太陽の塔についての議論だから。
中盤以降は塔を引き合いにしながら岡本太郎論だったり、岡本太郎を引き合いにしながらの文化論だったりで、太陽の塔その物から話が逸脱してしまうのが寂しい。「太陽の塔をより深く知る為に、そのバックボーンを」という構造なのだけど、ちょっとそのバックボーンを広げすぎてはいないか? 冒頭とラストのビジュアル的な見せ方は興奮する。ラスト、骨の代わりに縄文土器が飛んで、『2001年宇宙の旅』のスターゲイトが開くとは思わなかった。確かに『2001年宇宙の旅』の2001年は未来だけど過去だし、過去だけど未来だ。その上、あの未来は一応「人類の進歩と調和」が満たされた上に構築された未来であると思う。

▲珍しい横から見た写真。「ぱお~」
【銭】
『散り椿』:映画ファン感謝デー料金1100円。
『夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~』:映画ファン感謝デー料金1100円。
『クワイエット・プレイス』:映画ファン感謝デー料金1100円。
『太陽の塔』:映画ファン感謝デー料金1100円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・散り椿@ぴあ映画生活
・劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~@ぴあ映画生活
・クワイエット・プレイス@ぴあ映画生活
・太陽の塔@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です(一部TBなし)。
・散り椿@yukarinの映画鑑賞ぷらす日記
・散り椿@お楽しみはココからだ
・クワイエット・プレイス@ノラネコの呑んで観るシネマ
・クワイエット・プレイス@yukarinの映画鑑賞ぷらす日記
▼関連記事。
・夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~(一作目)@死屍累々映画日記・第二章
・夏目友人帳 石起こしと怪しき来訪者(二作目)@死屍累々映画日記・第二章