◆『マレフィセント2』トーホーシネマズ府中2

▲「デビル・ウィンーグッ」
五つ星評価で【★★★話は雑だが見所は多い】
後半の話の閉じ方がかなり雑だったり、物語としての難点を幾つも抱えてはいるのだが、そういう繊細な部分をすっ飛ばして、「まあまあそもそも原作原典と正反対に突っ走って我を通して出来た物語なんだから」と割り切って見ると楽しめる。話なんて嘘でどうでもいいのだ(いや、そう達観もできんのだが)。
枠組みとしては前作、不寛容から呪いをかけてしまった育ての子にありえぬ愛をベタベタに感じマレフィセントが、今作もその育ての子のオーロラに頭が上がらずツンデレだけどベタベタ状態。端からこの設定が面白い。背中一面に刺青を背負った巨漢のヤクザが3才児に骨抜きにされるような面白さがある。アンジーのオーロラ姫以外には優しさのカケラも見せない毅然とした態度も良い。ああいう風に生きていけるなら生きていきたいという気持ちもある。その上、子供から好かれるならそれでオールOKでもいいじゃないか。
そして、アングルによっては未だに5才くらいに見えかねないエル・ファニングちゃんの母性本能くすぐり力が半端ない。これは骨抜きにされてもしょうがない。
アンジーのマレフィセントがエルのオーロラに「醜い娘ね」と言う。
確かにオーロラ姫は美醜の観点から「美しさ」控えめである。
でも「醜い娘ね」という突き放した言葉に「どんなに醜くても好きよ」という気持ちが潜んでいるし、
そんな悪態の言葉に「えへへへへへへ」と満面の笑顔で返すエル・ファニングちゃんがまじ天使で、あのやり取りが一番よかった。
あと、この映画のオファーを受けたミシェル・ファイファーも心臓に毛が生えてる感じで偉いわ。
最終的に最も力の強い者にああいう扱いをされちゃうのは可哀想である。つまり、一方的に優しい物語ではない。被害者も出るし。うーん、そこがね、嘘なんだから、全てハッピーエンドでも良かったんじゃないの? 星雲仮面マシンマン(※)呼んでこいや、我!
※ 星雲仮面マシンマンは特撮ヒーロー。必殺技は「カタルシス・ウェーブ」。悪人の悪い心を良い心に変える事が出来る。
◆『クロール ―凶暴領域―』トーホーシネマズ府中8

▲見てください。この鰐とタイマン張る女の面構え。
五つ星評価で【★★★★リアル・鰐鰐パニック】
こらあれだ。『シャークネード』の飛ぶ鮫が鰐に変わった映画。鰐は強いし、水中カメラで見る泳ぐ鰐は美しくて、強くて、でかくて、とてもあんなんには勝てない。『シャークネード』の鮫同様、鰐は恐怖の機能でしかないのだが、出現頻度が無理をせず、テリトリーの水中以外にいないのでリアリティーを守っていられる。あんな巨体の鰐がゴロゴロ成育できている環境という事だから、よくよく肥沃な川なのだなあ。PART2とか出来てのそのそ陸上に上がってくると、このリアリティーが消えるのだが、新たな刺激を加えるためには次からは地上戦もありかもしれない。最終手段は台風やハリケーンで飛ぶってのもあるからまだまだイケる。
単純に面白かった。もう、何も心に残らないこういう映画大好き。
主演女優のカヤ・スコデラリオ知らないけどいい。
こう、誰一人有名人が出てない。製作費は鰐のCGとセットの建築費に消えたのだな。潔くて良い。
とりあえず最後まで生き残るのは鰐と対峙しても往生際が悪い人。と言うか、大した役じゃないほどあっという間に早く排除される。ドライやなあ。
鰐が人を食う映画は『007 死ぬのは奴らだ』『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』とかか。あつ、『アリゲーター』があるか。人が鰐を退治するまで描くとリアルじゃなくなるからモンスターの設定としては難しいんだろうなあ。
◆『楽園』トーホーシネマズ府中8(ネタバレ的)

▲舐め回して固い声で「ダメです」とか言わせたい杉咲花。
※ その物ズバリではないけどネタバレ的な内容です
五つ星評価で【★★★順番負け】
何で強く好きになれないのかと言うと同じ吉田修一原作の『怒り』に似てるからだ。
確かにテーマが『怒り』と違うのは分かるが、宣伝が似ているのと、作品の中で完結しきれてないという共通点が好きでない。『怒り』以前にこっちを見ていたら、そこそこ評価したかもしれない。
『怒り』も役者の演技が素晴らしい映画だった。今回も役者の演技はみな素晴らしい。『怒り』は殺人犯が怒る事で物語が始まるのだが、その怒りが観客に分かるように上手に説明されなかった。だから、映画が何の映画だかがよく分からなくなってしまった。今回の『楽園』も事件が起こり、その起こった事件に振り回されてしまう人々を描いている。映画はその振り回されてしまう人々を描きたいのだというのは分かる。だが、その元々の事件が、誰によって起きたのか、なぜ起きたのか、などは「あなたたちが好きに判断したらよろし」と投げてしまっている。いや、そこを込み込みにしないと、感情の流れとか変わってしまうだろう。これはあえて事件を明らかにしない事で、その町の町民と同じ立場に観客を放り込むという手法をやっているのだろう、という事も分かる。
でも、それだったら「信じた人は殺人犯なのか」という映画を見れば殺人犯かどうかが分かるようなコピーを付けるべきではないだろう。
杉咲花はいつもの杉咲花だが、この人はこれでいい。
綾野剛は上手。肉がつかずただ痩せてる人というビジュアルは朝鮮系に寄せた肉体改造じゃなかろうか。役者の名前分からないけど母親役も凄く美味い。そう言えばその母親に寄生するクズがモロ師岡。この人、善人でも悪人でも本当にそう言う人にしか見えないよなあ。
柄本明こえー。その妻の根岸季衣、この人がもうこんなに「老いて死ぬ」に近い役をやるようになったのか。逆に行動力を伴う柄本明が痴呆を患うと新たな犯罪が起こりそうで怖い。それは全くこの映画とは無関係な話なのだが。うんいやあ、素の柄本明を知っているから(TVなどで見た記憶があるから)柄本明を怖くないと思えるのだけど、ここ最近の柄本明の仕事を凝縮すると老い故に何か狂気に囚われてしまう役ばかりではないか? 本人狂ってもいつもの映画のままだから気づかないかも。←『楽園2』はこれがいいかも(そもそも作らんだろう)。
村上虹郎の無駄ににじり寄ってくる「自分がそんなに悪い奴と思ってない感」が上手いこと滲み出てて、上手いけどイヤだった。
佐藤浩市はただひたすら可哀そう。「空気わかれよ」って話なのだけど、20年とか30年とかかかって作った空気は「わからないだろ」。ただひたすら同情する。いやそういうのバリバリ煽る脚本だからそれは乗せられる。あっ、他も含めて乗せられてるのに乗せられた事に対する御褒美の爽快感がない映画なんだなあ。
◆『劇場版おっさんずラブ』トーホーシネマズ日本橋5

▲後ろの炎のハートが炎の尻に見えるのは私の心が汚れているから。
五つ星評価で【★★いやあビックリポン】
熱にうなされた時に見る夢のような変なテンションの映画。
田中圭の演技は昔ながらの暑苦しい青春野郎にIKKOを忍ばせると言う気の狂った演技プランなのだが、世界観がそもそも何か熱病に犯されてでもいるかのように同性愛の方が異性愛より正しいように誘導してるような世界なので、何かもうその演技プラン裏の裏でOKだよみたいな、正気を保てない感じ。
『ハイローワースト』に不良のテッペンで出てた志尊淳はこっちではカマスレスレのキャラ。降り幅広いな。
えーとね、総合的に凄くくだらない話だと思うのだけど、くだらなくても全力で作っている姿勢には好感が持てる。
映画内でTVの粗筋とかはないが、何となくアウトラインは伝わる。しかし、映画も見終わって、後からチラシを見たら、TVの粗筋が乗っていた。ええーっ、そうなの。そんな伏線があったの。てめバカこの野郎。映画の冒頭に粗筋を載せろよ。そういうのした方が常連も喜ぶだろ。そこは知らずに見て損したなと言う事実が幾つかあった。
【銭】
2019.9.25から一か月間トーホーシネマズのフリーパス使用その20~23本目
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・マレフィセント2@ぴあ映画生活
・クロール ―凶暴領域―@ぴあ映画生活
・楽園@ぴあ映画生活
・劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です(一部TBなし)。
・マレフィセント2@yukarinの映画鑑賞日記α
・クロール ―凶暴領域―@いやいやえん
・クロール ―凶暴領域―@yukarinの映画鑑賞日記α
・楽園@ノルウェー暮らし・イン・原宿
・楽園@ノラネコの呑んで観るシネマ
・楽園@yukarinの映画鑑賞日記α
・劇場版おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~@yukarinの映画鑑賞日記α
▼関連記事。
・マレフィセント@死屍累々映画日記
・マレフィセントもう一言@死屍累々映画日記
・マレフィセント2@死屍累々映画日記・第二章