
▲メンズ化粧品みたいなポスターだなあ。
五つ星評価で【★★★推理より情感】
ちゃんと驚くべき推理やトリックは用意されているが、割とそれは二の次。トリックより観客の感情を乱高下させて「観た」実感を与えてくれる映画である。最初に『オリエント急行殺人事件』のような状況を作りだした後、秘かにその配列を少しだけ変えていくのは、『犬神家の一族』で直接の加害者と殺人デモを行う二次加害者が別にいたパターンを思いださせる。そして、女の子を運ぶ車に、犬のハウが乗り込んでいたらみな幸せになったかもとか思わないでもない。
にしても、最初の10分くらいで映画の観客に、こんなにステキな女の子がいたんですって知らしめた後に、ドーンと葬式に突き進む落差がエグい。ずん飯尾の本来とことん地味で、刑務所にも5年くらい入ってましたみたいな凄みのある顔が活きる。田口浩正はもう完全に役者。この二人が今回、特によかった。あと、後から出てくる酒向芳にも唸らされた。この人、チョコチョコ重要な脇役で出てくるが、特異な容貌にも関わらず、毎回かなり違う人にしか見えないのが凄い。
ああいう窒息は普通思い付かないし、ごく普通の人がそれを実行するのも、ガリレオシリーズ独特だ。この意外性や未来性が科学犯罪を取り扱った『怪奇大作戦』みたいでワクワクしてしまう。
福山、柴咲、北村のやり取りは昔の方が面白かったと思う。それは福山の変人っぷりが、若い癖に、達観して冷静で感情より論理や自分の都合を重んじるため時に偏屈に見えると言ったものであるからだが、これ、年を取るとみなこういう方向に進むので、昔と比べると変人の度合いが薄れてしまった。ずっと研究室に引きこもっている学究肌ぼっちに対するマイナスイメージも昔より今の方が社会から認知されている。なんつか湯川先生は年相応に社会に適応した。対する柴咲、北村の刑事ペアは、事件を追う為に必要以上に感情的になって捜査する。捜査の上で連携した方が効率がいいので、誰に対しても同じ態度を要求し、捜査が全てに対して優先になる。だって、殺人者を野放しにして皆が楽しい社会生活を送れる筈がないから。そこに軋轢が生じて魅力的なやり取りになっていた。しかし、刑事のこの現場主義・身体を酷使さえすれば事件が解決するという感覚は学生ノリに近く、若い刑事のやる領域なので、ある程度、年を取ったら、闇雲にガムシャラみたいに見えるのは、まだずっとそこから抜け出せてないように見えてしまう。柴咲、北村とも福山と違って、キッチリ立派に第一線の役者なので、昔と同じ演技で仕上げてきた。それが逆に今の福山と良くない形でぶつかってる。
結果、普通の人、湯川に無理に協力を要請するダメ刑事という線がただ強調されてしまう残念な感じになった。
この部分のやり取りを面白くするには、やはり刑事は若手を使い、湯川先生は研究室に閉じ込めて白衣を着せて、オシャレな服のコーディネートとかは避けるのが正解だろう。オシャレじゃない方がオシャレ。福山雅治は地力的にかっこいい訳だから。全裸でいろとまでは言わないが簡素な服かつキッチリした感じに見えない無造作な格好の方が似合う、というか、ガリレオ的だ。スタイリストはそこを間違えてる気がする。福山を格好良く見せる事より、ガリレオ的に見せる方が重要だ。そして、社会と隔絶された研究室に訪ねて行くという儀式がガリレオの変人度をそういうルーチンで見せている安心感から守ると思う。今回のように異常に速いスピードで誰とでも仲良くなれるガリレオシンカとか、ガリレオパワードとか、特撮番組の二期過ぎたあたりに獲得するスキルだろう(いや何か違うか)。
例えで出した全裸のガリレオって妙に面白そうだ(相手が誰であれセックスしそうにないイメージが強いから安全)。北村一輝はともかく、柴咲コウの全裸女刑事も希望(無茶苦茶セックス忌避ばかり考えそう、かつ、恋心的に手ぐらいは繋ぎたいモジモジ感とかも演じてくれるだろうから、これはこれでおもろい)。まあでも成立はすまい(たりめーだ)。
「言っておくがセガールの映画じゃないぞ」
【銭】
前回有料入場割引+ネット割引で1200円。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
・沈黙のパレード@映画.com