五つ星評価で【☆☆☆強さには圧倒されるが好き嫌いは別】
戦争の怖さを真っ向から訴えるホラー映画。
いや、怖いよ。
予告編ほどじゃないけど
(予告の方が禍々しさが凝縮されてる)。
これ観た直後に戦争できちゃうとしたら頭がおかしい。
さて、下にトラックバック付けてるクマネズミさんの
「映画的・絵画的・音楽的」の中でも語られてますが、
主役の二人が物語の中でもっとコミュニケーションを
取るべきだったのではないか、と。
これは観ていてみんなが感じるジレンマだと思います。
「話せば分かる」
しかし、話さない。
話せよ!
みんな、そう思う。
私は障害があるからとか、物理的にとかではなく、
今まで話しかけた事がないから、
夫から妻に語りかけることが出来ないんだな、という風に見えました。
ここから、ちょっと私がこう見えたと言う与太話に付き合ってください。
昔の男です。
「風呂、メシ、寝る」しか言わずに済んだ時代の男です。
女子供には家父長として命令しか出さなかった時代の男です。
「ありがとう」「すまない」、感謝や謝罪の言葉が出てこない。
それを語ると彼は家父長でいられなくなる。
自ら順位を落とす事を認めた事になる。
これが、夫には耐えられない。
又、夫は自分が軍神であるし、天皇陛下(神)から勲章も賜ってるので
自分は元の自分以上、少なくとも家父長の位置にはとどまれると
思い込んでいる。
それが次第に壊されていく。
妻は自分の好む事をしてくれない。
妻は自分が嫌がる事さえ強要する。
輝かしい筈の軍功さえ、夫をさいなむ。
もはや、夫の中で命令を出し、暴力をもってしても
長たる自分に従わせる行為(=戦争)が正しい物かどうかの判断が
出来なくなってくる。
現実からも幻想からも責められる中、夫は男でさえいられなくなる。
夫は子供に戻る。
子供に戻る事が許されない世間の夫たちは
長たる自分に従わせる行為の帰結として、絞首刑に処せられる。
これが最も強い家父長制の根本(天皇制+GHQ)から命じられ、
細かい各々の家父長制の根を摘むものであったのは皮肉な結果だ。
かくして、日本の戦争は終った。
だが、強い者が弱い者を強制的に従わせる行為、
これらの被害は世界中に蔓延している。
日本は加害もしていれば、被害もしている。
日本から、戦争を国レベルで支え育んでいこうという
土壌は戦犯の絞首刑を機に、一応、幕を閉じたのだと思う。
だが、世界に戦争はなくならない。
元ちとせが歌う「死んだ女の子」の曲が流れる中
(これは強者に従わされた弱者の歌)、
いまだに、力があれば何をやっても許される
と言う考えを持つ者が残っているからだ
(そもそも世界的には減っていないのだ)。
そんな中、夫は死ぬ。
「戦争が終ったから」と解釈されているがそうだろうか。
夫は戦争の終結を知っていただろうか。
子供にまで戻った夫は喉が渇いたのでハイハイで水のみ場まで辿り着く。
そこで、今まで一回も見た事がなかった自分の身体を見るのである。
自分の醜さが分かった今、もう、子供ではいられない。
こんな醜い子供はいない。
しかも、自分は成長しないのだ。
今まで、軍神として祭り上げられてきた。
妻とセックスもしてきた。
それは家父長としての自分、勲章を貰った英雄としての自分に
常人以上の誇りを持っていたからだ。
妻が嫌がる筈がない。
自分は今まで通りだし、不自由はあるが、
勲章も貰い、今まで以上でもあるのだから。
だが、妻は怪物とセックスをしていた。
自分の真の姿を知った今、夫はもう自分を
どこにも置いておく事が出来ない。
だいたい、こんな話じゃないだろうか。
もう少し。
寺島しのぶが凄い演技だ。
夫役の大西信満も凄い。
荒れ狂う化物の表情が通り過ぎると、うっとり勲章や新聞を見詰める
無邪気な、邪心のない眼差し、あれは少年の目だ。
あの目にやられる。
夫は妻に精神的にDVを与えている。
にもかかわらず、妻が夫を許してしまうのは、
身体的有利さもあるが、夫があの少年の目を持って、
彼女を見詰めるからだ。
「だって、あの人は本当は優しい人だから」
あまたのDV加害者がみんな言われるセリフ。
優しくない人はいない。
戦争で人を殺そうが、その人を許したい人から見れば、
その人は優しい人なのだ。
だから、
優しくない人はいない。
であるなら、
優しい人もいない。
妻も夫にDVを仕掛ける。
この関係性の中では家父長制の順位が変わっただけで、
根本的には何も変わっていない。
どちらかが上になってはいけないのだ。
それから何十年も経ち、
家、村などの序列がはっきりしているがゆえに、
ドミノ崩しのように戦争賛成が起こりやすい。
そんな事はなくなった。
私は今の日本は腑抜けた、いい国だと思う。
なんだかまとまらない。
でも、いろんな事を語りたくなる映画である。
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PS2 原本は乱歩の『芋虫』なんだろうけど、私には
山上たつひこの『光る風』だ。
◆『ザ・エッグ ロマノフの秘宝を狙え』五つ星評価で【☆☆別にバンデラスの尻に興味はないし】
我らがアントニオ・バンバン・バンデラス久々の新作。
と言いながら別にバンデラスに興味はない。
対するモーガン・フリーマン、マンデラ大統領の後はコソ泥って落差激しいな。
チラシに「新旧2大スター初共演!」って書いてあるけど、
どっちが「新」で、どっちが「旧」だか全くもってして不明。
どっちが「新」で、どっちが「旧」でも、何か物議を醸しそうな気がする。
後半、あっと驚く展開があって、
そこで「あっ」と驚いているにも関わらず、
映画その物に爽快感が欠如している。
騙しに誠実が足りないのかなあ。
結局、いろいろあったものの
バンデラスが綺麗な姉ちゃんに
「俺とのSEXは本気で最高だったよね」
って尋ねて終わりみたいな、
その終わり正しいのって確認したくなるような映画。
◆『ボーダー』五つ星評価で【☆☆お皺が痛々しいんです】
デ・ニーロもパチーノもお年。
これはもうちょっと若い年寄り役者に譲ってもよかった。
なんか理由があって譲れなかったのかな? やだな、そういうの。
PS yukarinさんのところに
「デ・ニーロの『俺、デブだけどジョギング頑張るよ』という映画でした。」
というファンに刺されそうなコメントを残してしまった。
怖いものしらずだなあ、俺。
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ボーダー@甘噛み^^ 天才バカ板!どっちも「騙す」映画なんだけど、
どうも私は基本的に「騙す」映画が嫌いみたいだ。
五つ星評価で【☆☆☆いい部分も悪い部分もあるけどおおむね満足】
青春って奴は。全く。
普通に面白い。
あれはやっぱり良くないと思うけど、
それでも、そのあれが映画に致命傷を与えていないのが凄い。
あ、マンガ未読、映画でBECK初体験って立場です。
佐藤健いいですね。
単に「ふにゃんとにゃんにゃん」してただけじゃなかった。
そういう意味では『天使の恋』の佐々木希もそうだけど。
今、ヘタレ青少年をやらせたら、彼の右に出る者はいない。
いきなりの「俺はつまらない奴」というフレーズにぐっと来た。
そう、みんな「自分がつまらない奴」と自覚しながら
つまらなく生きているのだ。
佐藤健はそのつまらなさを演技とは別の次元で伝えてくれる役者だ。
「優れてる感」がないというのが彼の一番の売りだと思う。
水嶋ヒロもかっこよさが自然で嫌味じゃない。
そう言えば『GSワンダーランド』に出てたから、
バンド物は二つ目という事になる。
この強そうで硬いだけに無理をすると
簡単にパキっと折れてしまいそうな辛さが泣ける。
そして、本作で一番良かったのが
ボーカル桐谷健太。
彼の分かりやすい挫折と、気持ちいい歌が
5番手の位置にある彼を一番に引き上げたと思う。
向井理と中村蒼も抑えとしていい位置にいた。
誰かが弾けるためには、誰かが土台を支えなければならない。
意外といい味を出していたのが、カンニング竹山。
それにしても、やはり脱がずにはいられないのか。
忽那汐里とセリフの応酬を少しくらいやらせてあげたかった。
忽那汐里は何かやっと等身大でいい役貰ったという感じ。
でも、せっかくだから、心臓病にもなれ。
(きっと留学は心臓病を治しに行くのだ)
もう一人女の子、倉内沙莉。
汚ねえ、飛び道具出しやがって、あんな女の子だしたら
メロメロに決まってるだろう。
何か物事を考えてるとは思えないような役だけど、
忽那汐里の役が、いちいち何か表と裏がはっきりしないような
分かりづらい役だったので、こっちは性格がない状態で正解でしょう。
あ、あと、中村獅童のインチキ・プロデューサーの
インチキっぷりがよかったと思う。
ああ、キャラ立ってる。
やっぱりキャラが立ってると、それだけで安心して観てられる。
あと、バンドの音がロックロックしてる感じがいいですね
(割とそうでもないバンド物って多い気がする)。
さて、じゃあ、あの事だ。
ないだろ、あれ。
しかし、この寸止め感はどこかで同じような物を喰らった
事があるような気が・・・・『北京の西瓜』か。
まあ、事情は全く違うけど。
これは原作者が映画化に対して付けた条件であるらしい。
「断れ」と言いたい。
それが映画製作者としての誠実さだろう。
同じようにマンガ表現で絵の未使用が求められたらどうだ、と考えれば
この件が無法な要求である事がよく分かる。
例えば、ラブコメで男の子と女の子がキスする
そのシーンで、見開きに大きな写植のみで「キス」と書いてあるだけ。
そして、そのラブコメでは毎回「キス」はその表現で通す。
何故なら、「キス」はマンガの表現で完全に表わす事が不可能だから。
マンガとして成立しえない。
マンガから独立した話として、こんな風に変えてもいい。
ラスト一曲を前にトラブルから神の声を失ってしまったコユキ、
彼はボロボロの肉声で伝えたい相手に彼の作った歌を届ける。
そこにいつもの神の声の神々しさはないが、それでも
彼の声を聴衆は聞き逃すことが出来ない。
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BECK@ぴあ映画生活▼この記事から次の記事に初期トラックバックを付けさせて貰ってます。お世話様です。
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BECK@LOVE CINEMAS調布・
BECK@カノンな日々・
BECK@映画的・絵画的・音楽的・
BECK@映画鑑賞★日記・
BECK@京の昼寝・
BECK@狂人ブログ・
BECK@映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP・
BECK@Akira's VOICEPS じゃあ、誰の声ならいいんだ。
頭に浮かんだのがブロンスキー・ビートのジミー・ソマヴィル
あと、性別違うけど、元ちとせはそういう「神」な声だと思う。
PS2 有無を言わさず、スーザン・ボイルで吹き替えちゃえ。
いろいろ大人の事情でみんな文句が言えないぞ。
PS3 米良さんみたいな歌い方だったらやだな、きっと。
PS4 ルシール同様、佐藤健の歌声が盗品だから、
マスメディアに載って怖い人たちが取り返しに来るのを
防いでたんだな、きっと。