実はとても面白くて、途中で映画に大きな転換点があって、
最後まで観て胸を撫で下ろす、よく出来た映画だ。
北海道にある「絵本の里・剣淵町」の御当地映画なのだが、
それがまたとても上手く映画自身に機能している。
だが、いい映画でも、それが伝わらなければ誰も見る事はない。
そういった意味で『じんじん』という曖昧なタイトルは失敗かもしれん。
今は口コミでお客が広がるスピード以上に早く、映画館は興行を諦めてしまう。
大地康雄はずいぶん年を取った。
その大地康雄がはしゃいでる姿に眉をしかめる人もいるかもしれないが、
そういうキャラなんである。昔っからいるお調子者。
大地康雄は蝦蟇の油を売って全国を渡り歩く大道芸人。
年に一回、農繁期に幼馴染の農場を手伝いにくる。
これは古里のない彼の里帰りの代わりだ。
その農場で初めて会う今年から始めた農業研修の女子高生たち。
当然、双方の関係は凸凹でギクシャクする。噛み合わない。
時間が双方を和解させ、徐々に噛み合っていく中、
町の絵本コンクールの話が出てくる。
ある秘密にインスパイアされ、絵本コンクールへの出品を約束する大地康雄。
約束は守られるのか、そこにやってくる約束を守ってはいけない事情。
大地康雄の選択にドキドキだ。
大地康雄がジャマくさいのだけど、のびのびやってる。
不器用でかっこ悪い彼の個性が充分、活きている。
そりゃあそうだ、大地康雄自身のプロデュース作品なんである。
脇を締めるのは田舎者が似合う佐藤B作。
愛情を口に出せない不器用な大人、板尾創路。
精一杯頑張っているが余力がない感じがとても上手い手塚理美。
この辺がベストチョイス脇役。
あ、あと、目立たない辺りのポジションにそっと生息してる小宮孝泰。えーと、MCコミャーで絵本を読めよ。
目が寂しいけど力強い女子高生、小松美咲。
彼女の真面目さが大地康雄のチャランポランさが対比されてていい感じだ。
秘密や事情は観る人の為に書かない。
チラシを見ると「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭 ファンタランド大賞、人物賞(大地康雄)W受賞」と書いてある。ファンタスティック映画祭のこういう評価は信用に足りる。しかも、この映画は殊更にゴア描写が強かったり、ホラーキャラクターが出てきたりの元からファンの多い映画ではないのだ。こんな信用のおける評価もない。ちなみに大地康雄がシリアルキラーになったりはしない。シリアルキラーになった後、蝦蟇の油で全員治したらそれはそれで面白いかもしれん。
大地康雄が演じた蝦蟇の油売りの原型はもちろん「寅さん」なのだが、
「トラック野郎」の桃次郎の原型だって「寅さん」なんだから、まあいいだろ。
比べちゃうと、渥美清は年取っててもシャンとしてたなあ。
まあ、ちょっとゴキブリっぽいたたずまいの方が今回の役には合ってる。
「寅さん」は清廉潔白だけど、大地康雄の「銀三郎」はいい感じで濁ってる。
その味は決して無駄じゃないというのも、この映画のいい所なのである。
【銭】
新聞屋系の招待券で只で見せてもろた。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・じんじん@ぴあ映画生活
PS おらも徐々に禿げてきたから、
大地康雄にシンパシーを感じてるのかもしんねえ。
スポンサーサイト