FC2ブログ

ふじき78の死屍累々映画日記・第二章

場末にひっそり咲く映画日記。第一章にあたる無印はライブドアブログ

『春だドリフだ全員集合!!』をフィルムセンターで観て、ドリフええがなふじき★★★

特集上映「生誕100年 木下忠司の映画音楽」の1プログラム。

五つ星評価で【★★★長さんの上手くいかない加減が泣かせる】
落語界を舞台にしながら、芸者の身請け話を絡めたドリフの人情喜劇。
主役を張るのは長さん。悪い奴ではないのだけど(あ、そこ微妙だ)、芽が出なくて荒んでる、苦労人でダメ人間の落語家。長さんに丸め込まれて弟子入りさせられて毟り取られてるのがカトちゃん。ここまでがメインキャストで、荒井注、仲本工事、高木ブーは出番の多いガヤ扱い。前に見た『正義だ!味方だ!全員集合!!』でも、いかりや、加藤がメインだったので、そういう作りになるのがお約束なのだろう。荒井注の無頼漢だけど無能ってキャラは面白いけど、主役に持ってくるのは流石に難しいだろう。いかりやは苦労人キャラが顔に合うし、加藤茶はそれに絡むコメディ・リリーフ、仲本工事は二人を引き立たせるそこそこの常識人で、後はガヤという構造はとても収まりがよい。所詮、全員活躍はさせられないのだ。

いかりやがどん底、加藤茶がイケイケ状態のラストで
「このままじゃ終わらねえ、次は見てろよ」と言って終わるのだが、
この後の次回作は全然別の話で続かないのだ(ウィキで確認した)。
この辺りが無責任でいい気がする。
おで、ドリフ映画の適当でA級っぽくないとこが好き(2本しか見てないけど)。

「春だドリフだ」って季節も映画の中では全然関係なかった。

金子信夫の濃い芝居がドリフ映画には合う(アレもコレも同じような役だし)。

せっかく「ゴールデンハーフ・スペシャル」が出てるなら一曲歌ってほしかった。
歌はドリフの「ツーレロ節」と小柳ルミ子の「わたしの城下町」「お祭りの夜」
歌が入ってると楽しい。最近ではこういうの映画の中でないけど。

わざわざテロップを出して、ドリフの落語を見せたりもするのだけど、
そんなに落語がどうだこうだで見せる話ではないので、あれはどうかと思う。

突然出てくる萩原健一がいきなりなので、とても変。
たぶん製作が(松竹+渡辺プロ)なので、渡辺プロのバーターとして顔見せ出演をしたのだろう。ドリフとショーケンが同じ芸能プロダクションでマネージメントを受けてたってのは別に驚くには値しないだろうが、なんか変な感じがする。


【銭】
フィルムセンター一般料金520円。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
春だドリフだ全員集合!!@ぴあ映画生活
▼関連記事。
正義だ!味方だ!全員集合!!@死屍累々映画日記

『水戸黄門』『高瀬舟』をフィルムセンターで観て、ああ水戸黄門と文芸だふじき★★★,★★★

特集上映「生誕100年 木下忠司の映画音楽」の1プログラム。

◆『水戸黄門』
五つ星評価で【★★★東野英治郎イコールこれぞ黄門さま】
1978年に作られたTVドラマの映画化作品。
もう全然TV。
映画だから普段のTVより格差を付けようとか言う気合いが全くなく、
まあ、普段よりちょっと長いよくらいの心持ちで作られている。
こういう、ゆる~いのが許される感じはいいな。

なんつか黄門さまと言って記憶に残るのはやっぱこの東野英治郎だ。
天下の副将軍なのに、面だけ見てると百姓の爺と変わらないし、
一見そこそこ品があるようなのに、
権力を持ったものの傲慢さが陰に隠れているような強引さも併せ持つところが
チャーミングだ(天下の副将軍をチャーミングつーのも何だが)。
お付きの助さんと格さんは里見浩太朗と大和田伸也。いい感じに無個性で隙がない。
オマケが風車の弥七、中谷一郎。まだ病前で恰幅がいい。
天下の大泥棒で縁あって黄門の密偵みたいな事やってるという設定だが、
黄門さまと張りあうくらいの下品さがある。
オマケのオマケ、うっかり八兵衛に高橋元太郎。
基本的にこいつはいなくても構わないし、
いない方が目的合理性としてはスムーズなんだろうけど、
「社内のムードメーカー」的な立ち位置で黄門一行に飼われているのである。
百姓の爺顔の東野英治郎が高橋元太郎の首輪を手綱ひくみたいな絵は
似あうと思うのだが、あまりにも真に迫るのでやれはしない。
それにしても高橋元太郎声が通る。ひそひそ話とかできないくらいの通りようだ。
林家こん平師匠くらい通る。TVだといいけど、
映画館の音響で通る声だとちょっとイラっとする。

お付きに男装武士姿の栗原小巻。何をする訳でもないけど可愛くていいわ。
「貧乏人は集まって一つの風呂に入ってください」と言われた時の
セクハラもじもじが萌える。
でも、ニコニコしてるだけの基本的にはいらない役。

悪役はいつものお歴々という感じで、
リピート・フォロー・ミーみたいな調子で全く同じ演技なのが凄い。
「よもや、これまで」と言って切りかかって切られてしまう。
これか、そのままひれふするかしかパターンがないものな。

で、尺が伸びた部分には軽くニセ黄門エピソードが入る。
黄門にハナ肇、助さんに植木等、格さんに谷啓。
偶然、間違えられる悪意のないニセ黄門一行なのだが、
何かどうにでも世渡りできるみたいな強さがあふれ出てる植木等の助さんが
ちょっと底知れない怖さを控えてるように見えた。
そんなの見えてるの私だけだろうけど。

「あの人、助さんなんかじゃありません。全然知らない人です」

いや、そんなネタ振りのためでなく、何か心がなくて、ただ動いてる風に見えるのです、植木等。んー『ヒメアノ~ル』の惨殺者とかでも躊躇なくやれそうな感じ。

森繁版水戸黄門の助さん格さんは宝田明、高島忠夫。
森繁版水戸黄門のニセ一行は三木のり平、欽ちゃん、二郎さん。

こっちの方が無駄に体温高い感じで偽物としてはよかったかな。


◆『高瀬舟』
五つ星評価で【★★★真面目な短編映画】
森鴎外原作の『高瀬舟』を学校教材用として44分の短編に収めたもの。
真面目で良く出来てる。考えさせられる。
演出が工藤栄一で、スタッフロールに必殺シリーズで見かけたお歴々の名前がずらーっと並ぶが華麗な殺しのテクニックとかはない映画。


【銭】
フィルムセンター一般料金520円(二本立てです)。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
水戸黄門〈1978年〉@ぴあ映画生活
▼関連記事。
水戸黄門漫遊記(森繁版)@死屍累々映画日記

『ドグラ・マグラ』をキネカ大森1で観て、何時みても変な映画やと思うふじき★★★

「夢野久作没後80年特集」2本立てのうちの1本(『ユメノ銀河』時間調整つかず残念ながら断念)

五つ星評価で【★★★ああそういえばこんなんやった】
3、4回目。
キチガイ映画やね。よう作ったわこんなん。

松田洋治が血も何も関係ないのに松田優作っぽい。
この松田洋治を桂枝雀と室田日出男が取りあうという
思った以上にBL展開な話だった(そんなんでもないやろ)。

「お兄様」とのたまう三沢恵里が可愛いくて乳首も見せてくれて本当健気でええわあ。
可愛子ちゃんで健気で乳首を見せてくれるのはポイント高い。

b1057f5f10e508169b3655981adace3452a71949_40_2_2_2
▲ネットで拾った三沢恵里の寝顔。


【銭】
名画座専用回数券+ラスト1本割引で500円。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
ドグラ・マグラ@ぴあ映画生活

PS 石川賢の『虚空戦記MIROKU』で、
 究極の細菌兵器の名前がドグラだったなあ。
PS2 フィルム上映という事もあり、最近には珍しく映写トラブルで上映中断。
 久しぶりに「ごめんなさい券」を貰ってしまった。

『GODZILLA ゴジラ』を神保町シアターで観てやっぱピンとは来ないんだよなふじき★★(ネタバレあり)

161570_1
▲ちょっとダイエットした方がいいっすよね。

特集「シン・ゴジラ映画総進撃」から1プログラム。

五つ星評価で【★★ちょっと疲労にやられて陥没してしまったが、元からそんなに面白い映画でもないと思う(負け惜しみ)】
ファーストラン以降二回目。

ギャレス・エドワース監督が演出をしてる、いわゆる「ギャレゴジ」。
それってちょっと「ギャルゴジ」っぽいじゃん。
ガングロ、ミニスカ、生足のゴジラにみんなハァハァ(*´Д`)なんて悪趣味な!
でもまあ、脚は「エメゴジ」の方が長いから、そのボリューム的にも
上半身が「ギャレゴジ」、下半身が「エメゴジ」の「ギャルゴジ」
を作成したら中々エロくなるのではないか。CV沢城みゆき辺りでどうだろう?
何が「どうだろう?」だか、よく分からない。

ゴジラが悪相で前科十六犯の連続強姦殺人犯みたいな顔をしているんだけど、その顔が大変申し訳ないんだけど、ジャック・ニコルソンに似てる。あまり、ゴジラの顔が人間っぽいのはよくない。昭和ゴジラのギョロ目とかは、この映画の世界観的にはアウトだろうけど、ゴジラ1984以降の原型師たちが心血注いだ悪役顔だけど人間からは遠いという作りにしてほしかった。

踊るマハラジャじゃないけど、飛んだり跳ねたり愛燦燦のムートー夫婦。
飛ぶのと竹馬っぽいののどっちがオス・メスかもよく分からないのだけど、顔立ちがどっちも同じなので、あの顔には欲情しないから大丈夫。ところで、今、手元に『殿、利息でござる!』のチラシがあるのだけど、ムートーの顔って失礼を承知で言わせてもらうなら
松田龍平に似てると思う。

しかし、二匹の松田龍平とガタイのいいジャック・ニコルソンがくんずほぐれつ(しかも全裸で)息を荒げてハアハア言うような映画を見て楽しめるなんて、みなさん通ですな(ひどい事言うなよ、俺)。


【銭】
神保町シアター正規入場料金1200円。

▼関連記事。
GODZILLA ゴジラ(1回目)@死屍累々映画日記
GODZILLA ゴジラ(1回目書き足し)@死屍累々映画日記

『ヒメアノ~ル』を東宝シネマズ日本橋1で観て、吉田恵輔らしい順当な仕上がりだけど過度には褒めないぞふじき★★★

img0
▲公式HPからひったくってきた「私の好きな人岡田さんです」の佐津川愛美ちゃん。ジャニーズ・ガードが固くて画像少ないんだよね。

五つ星評価で【★★★吉田恵輔らしくキッチリ商品に仕上げてきてるけど、吉田恵輔ならもっと行けるんじゃないのかと思うと手放しに絶賛は出来ない】
原作未読。
中心は濱田岳、佐津川愛美、ムロツヨシの三人組と対峙する森田剛の四人のドラマなのだが、駒木根隆介、山田真歩も含めて六人1セットで見ると女子が強いと言うか、女子の君臨が明確になる。
この『ヒメアノール』の世界での「あがり」は何かというと、男の子と女の子がラブラブで楽しい結婚生活(SEX付き)を送れるという事だろう。この点に関して、女子二人は目標に対して非常にアクティブだ。そこそこ相手を変えて交尾しているらしい佐津川愛美、相手を信じて相手の障害を乗り越えさせようとする山田真歩、この二人はある意味正常でとても普通。
問題があるのは男子四人で、過去に同一の事件に関わった三人はみな停滞している。
森田剛は目的とする未来が見えない。彼は事件の後、ずっと今を凌ぎ続けているに過ぎない。救いのない彼は救いを得んとして佐津川愛美をストーキングしたのかもしれないが、基本、この物語の世界に聖女はいないのだ(ただこの辺の描き込みは少なくて詳細はよう分からん)。
駒木根隆介は森田剛が障害になって自立が出来ない。彼には彼を守ろうとする連れ合いがいるのだが、その連れ合いは森田剛と駒木根隆介の抱えた秘密の時間を軽視するあまり二人同時に排除されてしまう。
濱田岳は一見お人好しのように見えて、虫も殺さないように見えながら実際に虫も殺せないだろうが、彼が実は一番心ない人間ではないだろうか。彼は人からの命令を自分の意志で拒否できない。事件の前も後も。それは彼の生来のお人好しの面もあれば、気の弱さがそのまま残っているという事もあるだろう。だが、彼が常人ならやはり普通、森田剛に声はかけられないと思う。どこか心が麻痺しているから声をかけられるのだろう。森田剛が彼と自分を指して「俺たちのような屑は人生もう終わってるんだよ」と言ったのはおそらく当たっている。森田剛もクズだが、濱田岳も劣らずかなりのクズだ。そこはお人好しに見える濱田岳だからと言って「あの人いい人なのに」とか思って見てはいけない。「濱田岳=お人好し」という呪縛はそれだけ強いから見ているうちは全然悪い奴とは思えず、やっぱ濱田岳も凄いしキャスティングも偉いなあと思う。
そして、ムロツヨシはこの野郎連中で唯一、強く未来を見たがっているのに、人間としての実力の低さで夢を見る事が出来ない(笑)。おもろい。森田剛、濱田岳、駒木根隆介の三人は未来を見れない起源の事件があるのにムロツヨシにはそれがない。ただただ生え抜きのエリート的な自生のダメ人間なのだ。人間として色々問題を抱えている他の三人より明らかに魅力がないし、長生きしているだけでスキルの高い生活を望めそうな空気がない。あの奇声とか子供の反抗期みたいな髪型とか最高だ。その希望のない彼が何よりも普通に人間らしい部分を持ってたりする点がこの映画の希望になってるところがおかしくて魅力的だ。うん、ムロツヨシはいつも通り見ていてイヤないつものムロツヨシなのに、他のどの映画のムロツヨシより良かった(直近では『変態仮面』のムロツヨシは悪い意味で最低)。

森田剛は普通にいい演技。森田剛の顔と今回の役柄がジャストフィットした結果。途方もなく上手いとは思わないが、いい空気を持っている(根拠のない上から目線)。腹を刺す時はズブズブだが、背中を指す時はちょっと硬そうな感じが良かった(本当かよ!)。

出演本数の多さと何でもかんでも引き受ける敷居の低さから(そう思える)変な映画にも出てしまうのだけど、佐津川愛美は相変わらず達者。貧者の核兵器であるBC兵器のようにもう本当、貧者の大女優で、映画をどっしり支えている。佐津川、森田、ムロ、濱田が炬燵の四本足のような安定さで映画を支えている。演出手腕もあるのだろうけど下手な俳優がいない。大竹まこととか映画で見るとチョイ役でも映画の空気と合わないイメージなのだが、今回は見事に溶け込んでいた。

ヒメアノールは食餌になるようなエサのトカゲらしいのだけど、森田剛に殺される全ての人間が「ヒメアノール」としてしまっては映画のタイトルとしてつまらないので、実は肉食女子の佐津川愛美に食べられながらも、森田剛にも二重に食べられる濱田岳がキング・オブ・ヒメアノールって解釈でいいかもしれない。「器が小さい」人間の方が「器が大きい」人間より断然エサっぽいし。


【銭】
トーホーシネマズの会員ポイント6ポイントを使って無料鑑賞。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
ヒメアノ~ル@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
ヒメアノ~ル@映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
ヒメアノ~ル@yukarinの映画鑑賞ぷらす日記
ヒメアノ~ル@ノルウェー暮らし・イン・原宿

『キングコング対ゴジラ』を神保町シアターで観て、いつも通りふじき★★ @tomoyaharada

特集「シン・ゴジラ映画総進撃」から1プログラム。

五つ星評価で【★★個人的にはそんなでもない】
劇場ではおそらく三回目くらい。
オープニングが土人ソングで盛り上がる。これが一番好きな土人ソング。
見るといつも思うのが、「逆襲」のコングもひどいが、
「キンゴジ」のコングのデザインもひどい。
鼻は大きく高橋悦史っぽい。怪獣というよりスーパーとかの着ぐるみっぽい。
デザインが決まってから立体模型を2、3回床に叩きつけたみたい。
猿にうるさいリック・ベイカーが見たら泣くね。

脚本ではゴジラとキングコングが野性の本能で自然に対決対峙する、みたいに描かれているが、自然界では強い者同士はよっぽどエサがない場合を除けば避け合うだろうから言い分がおかしい。どちらも狂った生態系の狂った個体同士であるなら問題ないのだろうけど。

鑑賞前に「キンゴジなう」とツイッターに呟いたらトモヤさんから
「チンポジは大事だもんね」と返ってきた。違う、話題が違うぞ。
それじゃ「チングコング対ポジラ」だ。もしくは「チンポコング対ジラース」だ。
みたいなくだらないツイートばっかりしてて、すいません。


【銭】
神保町シアター 特集企画割引800円(5回鑑賞毎に次回割引)。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
キングコング対ゴジラ@ぴあ映画生活

『アイヒマン・ショー』をHTC有楽町2で観て、アイヒマン萌え萌えふじき★★★★

169599_4
▲きゃーアイヒマン様よおおおおおおおおおおぅ。

五つ星評価で【★★★★勝利のドラマのように見せかけて、実は敗北しているみたいな皮肉な映画が好き。そしてアイヒマンが出てるだけでワクワクが止まらない】
このアドルフ・アイヒマンという実に有能な小役人がキャラとして大好きなのである。ユダヤ人の強制収容所への移送を計画した男。結果として彼が辣腕を振るわなければ強制収容所での死者はもっと減っていたに違いない。だが、だからと言って彼が無慈悲に笑いながらユダヤ人を虐殺した訳ではない。ただ、彼は処世の為、自分の能力を使役した。後世、それは「悪魔の所業とされ、それを行わない選択をしなかった」として、彼は裁かれる。でも、「それを行わない選択」はきっと出来なかっただろう。日本でもそうだ。「それを行わない選択」を選んだものは憲兵による拷問の末、死や転向を賜ったりした。時代に抗う事は難しいのである。なので、私もきっとアイヒマン側を選ぶ。だから、アイヒマンが好きなのだ。彼は悪漢ではない。ただの小役人だ。その彼を悪漢に仕立てたのがメディアである。今回はそのメディアの一つ、TV製作者を描いたもの。

アイヒマンを悪漢としたメディアは何より新聞だろう。
ナチスの極悪人将校捕まるとの第一報は新聞から出された筈だ。
その時点でもう既に「大悪人」と決まっていた筈だ。

映画内のフルヴィッツ監督は強制収容所でのナチの悪行を証言するユダヤ人の姿を見て、表情一つ変えないアイヒマンに驚愕する。人間であるなら涙の一つも流すだろう、というのが彼の論理だ。これは間違えていると思う。ユダヤ人の痛々しい証言はこのアイヒマン裁判のプロパガンダとして必要な部位であると思うが、必ずしも裁判その物にとっては必要ではない。それらの虐待は間接的にアイヒマンによってもたらされたが、アイヒマンが恣意的に行なった罪ではないからである。自分の裁判案件と関係ない茶番を長々と見せられるアイヒマン、心が痛むより先に「そんな情動に訴えてまで自分を不利に持ち込みたいのだろう」と警戒する方が自然だろう。

だが、この証言部分が強制収容所で行われた様々な蛮行のプロパガンダとして機能し、世界は初めてそこでどのような野蛮な行為が行われたかを知る事になる。メディア戦略としてTV放映は成功だったと思う。この放映により「ユダヤ人は世界でもっとも迫害された民族第一位」を手に入れたのだ。自分達がイスラエルを建国し、先住のパレスチナ人を迫害する立場に立っているにもかかわらず。

ここにとても強い皮肉がある。

アイヒマンは「大悪人ではなく命令を聞いただけの歯車の一つ」という意見も出るが、TV製作者側は気持ちとしてそれを認められない。彼等は被害者の近くに位置しすぎているからだ。逆に彼等が加害者の近くに位置していたら、この裁判の矛盾を突いたのではないかと思う。第三者の目から見ると、所詮、感情による裁判であり、死刑は感情による処刑にしか見えない。そしてTVクルーはこの放映に参加した事により、二つのシステムの歯車として機能したのではないかと思っている。
一つ目は、プロパガンダにより、ユダヤ人やイスラエル建国を正当化するシステム。直接、手を出している訳ではないが、パレスチナ人への迫害を目立たなく矮小化させてしまった。
二つ目は、「ナチは凶悪でいかなる理由があっても、処罰すべき」という信仰の元、アイヒマンを抹殺するシステムに加担した事である。これは被害者がただ一人だから目立たないが前文の「ナチ」を「ユダヤ人」に置き換えると、そのヤバさが分かってくる。ただ、この映画の中では「アイヒマンの有罪」は正義として揺るぎがないような描かれ方をしているから、あまりヤバさとしては伝わってこないが。


【銭】
テアトルの会員サービスを使って1300円で鑑賞。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち@ここなつ映画レビュー
▼関連記事。
ハンナ・アーレント@死屍累々映画日記
スペシャリスト@死屍累々映画日記

『ディーパンの闘い』『サウルの息子』をギンレイホールで観て、世に戦いの種は尽きまじふじき★★★,★★★

なんか重いの二本立て。

◆『ディーパンの闘い』
五つ星評価で【★★★しまった。パンティーの戦いじゃないのか】
これから言う事を若い人は分からないかもしれないし、分かったからと言っても共感しえないだろう。かく言うこれからそれを言おうとしている私自身が本当にそれはどうかなと思っている節すらあるのだ。

主人公ディーパンは丹古母鬼馬二さんのようだった。
一見ならず者のようだが、別に普通の人だ。
年相応に落ち着いて昔のように蛮勇を振るう事もない。

だが、争いの方が彼を追いかけてくる。
何となく丹古母鬼馬二さんで間違えてない。
妻はイライラさせ役の上手い大竹しのぶ(すげえ姉さんになってまう)、
子供は芦田愛菜あたりで日本版をリメイクするけ。


◆『サウルの息子』
五つ星評価で【★★★サウナの息子ではないのだが、手元にしか焦点の合わない映像はまるでサウナにいるような息苦しさを感じる】
ナチスのユダヤ人迫害の物凄さは大量虐殺を工場労働ペースで行なった事だ。まるで納期に追われるが如く一分一秒を惜しんで殺されていくユダヤ人をこれほどシステマティックに捉えた映画は今までになかった。このペースが現実に即したものか、メンタルな心象風景であるかは当事者しか分からないし、映画だからそのどちらでもいいと思っている。この狂った状況で正しい事を貫こうとする主人公の狂気が際立つ。
主人公サウルは矛盾している。息子の死に直面し、息子をユダヤの教義に合う正しい埋葬を行おうと収容所内を西走東本する。正しい埋葬を行わないと最後の審判で復活の対象とならないのだ。だが、彼の非常識な行為は彼の周囲の人間の生命を脅かすし、彼が日常行っているナチスの大量虐殺の幇助は最後の審判で復活の対象とならない人間を大量に作成している事に他ならない。
映画は殊更にサウルに肩入れするでもなく、ダメ出しするでもなく、ただ近くにいる。映画は徹頭徹尾「傍観者」だ。それはおそらく観客がその場にいたとしても「傍観者」たりえてしまうだろうという無力感の現れのようでさえある。

PS 「の息子」と言えば、名画座にて『ゴジラの息子』を見たけど、
 流石に『サウルの息子』とは全然違う映画だった。そらそうか。


【銭】
ギンレイホール、会員証で入場。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
ディーパンの闘い@ぴあ映画生活
サウルの息子@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
ディーパンの闘い@映画的・絵画的・音楽的

『怪獣大戦争』を神保町シアターで観て、X星人ゲラゲラふじき★★★★

特集「シン・ゴジラ映画総進撃」から1プログラム。

五つ星評価で【★★★★X星人が好きだ】
何回か見てるが、劇場ではおそらく二回目。
キングギドラ再登場。
前作『三大怪獣地球三大の決戦』でゴジラ、モスラ、ラドンの三体でキングギドラを倒したのに、今回はモスラ抜きで均衡が保ててる。モスラ連れ回すと小美人とか扱いが面倒だからというメタな話なんだろうなあ。その甲斐もあってか、ラスト野性に戻ったゴジラ・ラドンとキングギドラは2:1でどうにか撃退。毎回ボコられて逃げ帰るキングギドラって哀しいよなあ。デザインがいいだけに、凄い刺繍の学ラン着こんだ番長が全部身ぐるみ剥されて下着で逃げ帰るような悲しさだ。

文明の力で怪獣を操作できるとしたのは、この映画が「やらかしてしまった」大いなる失敗。以後、怪獣が操られるエピソードは普通になり、怪獣の怖さは軽減した。

しかしまあ、この映画の見所はX星人だ。
あのデザイン、男尊女卑、高いプライドに、打ち砕かれた時の悲惨美とも言える叫び声。もう大層好きでたまらない。キラアク星人もそこそこ変でいいんだけど、奴らは「やられたあ」みたいなぶざまな負けっぷりがないのが残念。強がってた童貞さんがプロのお姉さんの手練手管で「ひいいいいいいい」みたいに叫んでる可愛らしさがある。
X星人女の水野久美さんはいいアイコン貰ったと思う。
痴漢警報ベルの音を少しずつあげて水野久美さんにつらそうな顔をしてもらいたい。

ただキャラ的には発明家の恋人役の沢井桂子嬢のストンと抜けたような可愛い感じが好き。


【銭】
神保町シアター正規入場料金1200円。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
怪獣大戦争@ぴあ映画生活

凄くくだらない事を書く

『ゴジラの息子』って『ゴジラの海綿体』みたいなタイトルか? いやいや、そら違うよな。確かに『ゴジラのチンコ』って題名じゃ、主要な子供のお客は呼べないだろうけど、代わりに新宿二丁目辺りでは大ヒットするぞ。新宿三丁目には映画館あるけど新宿二丁目にはないか。ミニラがゴジラの息子の象徴だとしたらカマキラスは何だ。あのカマでミニラをしごきたがる。童貞キラーか何かか? カマ持った女って言ったら『バトル・ロワイアル』の柴咲コウでそんなのが巨大サイズで二体も三体も出てきたら興奮するけどそれは完全な後付けだ。柴咲コウじゃないけどスタイルのいいカマキラスと比べて、ボリューミーなクモンガ。どことなく団地妻っぽいぞ。いや、きっと脱いだら凄いんだよ。手足がいっぱいあるからテクニシャンな気がするし。何の話だよ、おい。ナニの話だよ(バリバリ親父ギャグだ)。

身長が20メートルくらいある柴咲コウ(できれば半裸を希望)の映画とか見たいな。誰か作ってくれないかなあ。

この後、ミニラが活躍するのは『オール怪獣大進撃』で、敵怪獣はガバラ。えっ、ガバガバ姉さんかよ。いやいや、ガバラはいじめっ子とシンクロしてるので男なのだ。えっ、BLかよ! ミニラの顔を福山辺りに差し替えたらまだまだ新宿二丁目での大ヒットも見込めるんじゃないだろうか(だから二丁目に映画館ないんだってば~)


▼関連記事。
ゴジラの息子@死屍累々映画日記
前のページ 次のページ