
▲悪魔は「電王」のウラタロス風でもあり、、、か?
ネタバレです五つ星評価で【★★★猫の消失トリックがどうであるか】
猫がどう消えるかについて興味があった。
大病を患い、明日、死ぬことになった主人公が悪魔と契約し、
自分の大事な物を一つずつ消す事によって1日分の命を得るというのが粗筋だ。
1日目は電話(愛の記憶)、
2日目は映画(友情の記憶)、
3日目は時計(親の職業=男親との過去の記憶)
4日目は猫(家族の記憶)
という形で主人公は経験した過去を剥奪され、
現在の元恋人や友人を失っていく。
カラになっていくと言えばいいだろう。
悪魔との契約による消失がどう描かれるかに興味があった。
映画を見に行く前に仮説を立てた。
猫が消えるという点について、
いきなり世界から全ての猫が物理的に消えたら大混乱になるだろう。
猫を家族と思って生きている人だって多かろう。
だから、そういう消え方をする事はあるまい。
それなら「猫」という存在がなかった事になればいいのではないか。
だが、その場合、ヤマネコが飼いならされイエネコになって以来の
猫の記録が全てがなくなってしまう。そんな大掛かりなSF考証やれるだろうか?
バタフライ・エフェクト効果も甚だしいが、そういうの無視するのか?
そこで、そういう事を考えずにスマートに欠落させるなら、
主人公が猫を感知できなくなるアイデアだったらよさそうだと思った。
催眠術に掛けられた被験者が数字の「7」だけ認識できなくなるように、
悪魔の指示が強迫観念となって脳疾患を助長させる。
一日に一つずつ主人公は彼の大切な物を実質の物体はそこにあるにも関わらず
認識ができなくなるのである。あくまで欠落するのは彼一人の内面の話なので、
大きな世界の変更を要さない事から、リアリティーがあり、
そして、彼の病状ともリンクする劇的な展開になるんじゃないだろうか?
という事で、そういうクレバーな展開になるかどうかを確認しに行った。
残念ながら、そんなクレバーな展開にはならなかった。
「猫」がなくなるという事は、単に目の前にいる「猫」がいなくなって、
「猫」という概念もなくなる。但し、それによって大きく世界は変わらない。
変わらざるを得ない部分は変わったとしても差異は最小にとどめる。
そんな作りだった。
要は、彼の前に現われる「悪魔」は本当の悪魔で、
神様がやれるくらいの奇跡は鼻歌混じりに起こせるのだ。
いや、そんな事が簡単に出来るんなら、
つーより、奇跡の力が万能だったり、悪魔が本当に悪魔であるなら、
もっと大掛かりに面白い物を消せたり、
設問事態を魔的な物に変えられるのではないか。
『バットマン ダークナイト』でジョーカーが多数の人命を賭け事に使ったように、
目の前のバスが5秒後に爆発するけど1日生きながらえますか、
目の前の見知らぬ女子高生がこれから百人の男に輪姦されるけど
1日生きながらえますか、とかとか。
何はともあれ「神様」や「悪魔」を持ちだす事によって論理性を全て捨て、全て解決させてしまった。これはこの物語の基盤がSFではなくファンタジーであり、ファンタジーが嫌ならお伽話と言う事になる。つまり、どんなに破綻していても「らしい」であればいいのだ。
そう言えば「神様だから何でもできる」というのには超大名作である
フランク・キャプラの
『素晴らしき哉、人生!』があった。
あの映画の中の主人公自身がいない世界、
あれの真似事を規模を小さくして何回か繰り返しているに過ぎない。
でも、小さくではあるが綺麗にまとまっているので、これはこれでいいのだと思う。
でも、どうしても自分自身が考えた認識的な欠落の方が物語をキッチリ整合性がある物として見せてくれそうで素晴らしそうだと思えてしまう。自分贔屓であるのは承知だが、このギスギスした時代に神様や悪魔を持ちだして都合よく物語を展開させて「寓話なんだから許してくれよ」というのはムシがいいように感じるのである。
とは言え、相変わらず宮崎あおいの演技は唸らされた。
予告でも流れるあの泣き顔にはやられる。
予告と言えば、予告で流れた多幸感の強いボーカル曲は本編では控え目に感じた。
オーディオ設計やドルビー設計が予告編の時が最適に調整されていたのだろうか?
宮崎あおいもいいし、佐藤健も別に悪くないし、ぼーっと見てそんなにつまらない映画ではないんですが、見る前に評価レベルを上げすぎてしまいました。そう言えば、悪魔の容姿が佐藤健本人と言うのはいいアイデアだ。基本、何でもいいのであれば、悪魔の容姿はデーモン小暮だったり、ペロリンガ星人でもいいんじゃないかと思う。ペロリンガ星人に翻弄される佐藤健なんてのもなかなかオツではないか。
【銭】松竹の前回鑑賞割引+ネット予約割引で1200円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
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世界から猫が消えたなら@ぴあ映画生活▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
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世界から猫が消えたなら@映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評