五つ星評価で【★★★★ゲラゲラおもろい】
「いつか見た映画館」出版記念!大林信彦監督トークライブ上映Aプログラム
『ハウス』+
『吸血鬼ゴケミドロ』で、時間制約から
『吸血鬼ゴケミドロ』だけ見た。
初見。
評判は高い事は何となく知っていたが、なかなか見れないでいた。まず、上映の機会が少ないからね。
見終わって、感心したのは色々な見所が満載である事と、ラストのビックリ感。
ジャンルで言えばSFホラーなのだけど、
狭い空間に詰め込まれた人間がストレスで追い詰められてヒステリー状態になっていく人間ドラマとしても優れている。この十人前後の人間のエゴが他人を侵食していくドラマの展開が、単に化け物が出るキワモノに映画を終わらせないでいる。それにしてもこんな最低メンツだらけの飛行機に乗りあわせてサバイバルするのはイヤだ。ある意味
『オリエント急行殺人事件』のオリエント急行より、乗客のメンツが下劣さで劣る。乗客に金子信雄がいるというだけで、確実にイヤな事が起こりそうじゃない?
冒頭の、飛行機にぶつかってくる鳥もイヤ。なんか妙に身体が柔らかくて水っぽくて。あの鳥を料理しても美味くなさそうなくらいのビチョビチョ感。
飛行機のパイロットが主役の吉田輝雄。この人、あの
『恐怖奇形人間』の人で、顔の作りが一心にストレスを引き受けてしまう顔。眉間に皺を寄せてる顔が真面目すぎる。
スッチーが佐藤友美。この頃の怪奇映画は女の子がただただキャーキャー叫ぶという立ち位置にあって、人格も何もなく、ただただ叫ぶ女の子はそれはそれなりに良いと思う。少なくとも、男が叫ぶよりは格段に良い。この人、イカレちゃうけどマトモ。
そしてゴケミドロ化される人間役に高英男。私、スチール写真とかを見て勘違いしてたのだけど、この高英男という俳優さん、ゴケミドロ役をやってるから怖いのではなく、映画観てるとゴケミドロになる前から怖いのである。例えば20人くらいの全員、高英男の集団が君めがけて走って来たら、とりあえず逃げるべきだと思う。
それにしてもラストの絶望感の高さ、
『ミスト』みたい。
UFOの特撮が妙に怖い。
観終わって直後のツイッター感想。
SFなのに世界観が中川信夫の「地獄」と地続きみたいなのがステキ。松竹の映画なのに新東宝とか東映のキワモノ映画みたい。うん、なかなか適格だと思うよ、俺。
【銭】目黒シネマラスト1回割引900円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
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吸血鬼ゴケミドロ@ぴあ映画生活
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いろんな学生二本立て。
◆『奇跡の教室』
▲マンガを使ってホロコーストに意見するの図
五つ星評価で【★★★顔の映画】
劣等生クラスを立ち直らせるためにゲゲン先生は「発表コンクール」への参加を促す。
ゲゲン先生の授業全般は面白そうでいいのだけど、生徒のダメ具合がズバ抜けていて教師に対する態度がひどい。歴史の授業で過去に何があったかを知るのはもちろん大切だが、何かを教えようと教壇に立つ者を排斥しようとするような「心ない行為」に対しての咎め立てがないのはいいのかなと思ってしまった。それは高校生で教わる事ではないのかもしれないけど。
ゲゲン先生も生徒も表情が多彩。この映画の中では、授業内容がどのように生徒たちに吸収されているかについてあまり論理だって言葉で説明しない。ただただカメラが子供たちの表情を切り取る。その方法で伝わるは伝わるが、定石ではないので面食らった。また、このやり方を取ったために、生徒たちがまとめたナチス下の子供に対するレポートの内容がどのような物か、それが他のグループと比べて、内容がどう優れていたかが分からなかったのは残念だった。
物事を知るという事その物は面白さに満ちているが、それとしっかり向きあわないと手に入らない。この映画ではその契機が割と大雑把に描かれているのと、生徒を各個人として扱わず、群れとして扱っているので、それぞれの事情が見えづらかった。生徒の頭を刈ったり、衣服を剥いだり、腕に番号を入れたりはしないし、各個人の顔も個性もハッキリはさせていたけれど、普通やる不必要なほど明確なキャラ化はされなかった。ひょっとすると、そこがある意味、ナチスが個性を剥奪するというテーマに触れた映画を撮る上でのバランスだったのかもしれない。極端な没個性化もしなければ、明らかに作為と分かるようなキャラ化も避けるという。
◆『グッバイ,サマー』
▲左が美少年。
五つ星評価で【★きっとこの映画自体が悪い訳ではないと思う】
おで、ミシェル・ゴンドリーと相性が悪いんだわ。基本、それに尽きる。お嬢様にしか見えない彼、いいですね。剥いてしまいたい(え、男の子なんだよね?)。まあ、男でも女でも剥いてしまいたい。ガソリンの彼はどうでもいい。しかしまあ、あの程度の事で変人扱いされるのは懐が狭いってか、悩むほどの根の深さを感じないってか、やっぱり日本の方が陰湿で全然イヤな感じだ。で、このどうって事のない二人のどうって事のない旅の前と中と後が別に関心がないからダラダラやられてもつまんなくて船を漕いでしまった。もう、漕いで漕いで漕ぎまくった。同級生の女の子や風俗店の女の子が可愛いのは流石フランス映画。
【銭】ギンレイホール、会員証で入場。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
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奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ@ぴあ映画生活・
グッバイ、サマー@ぴあ映画生活▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
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奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ@ここなつ映画レビュー・
グッバイ、サマー@ここなつ映画レビュー
飲めや歌えや目出度くもあり目出度くもなしな二本立て。
◆『シング・ストリート 未来へのうた』
▲一番左のギター坊主はチラシからトリミングされて姿を失ってしまっている。
五つ星評価で【★★★良質とは思うが強くは刺さらなかった】
バンドの映画。
ある日、クラスから浮いてるボンボンの主人公は
女にモテるためにバンドをやろうと考える。
集まってくる有象無象。でも、みんな隠れた才能があったりして、
バンドは彼等の若者カルチャー内で一目置かれるようになる。
「バンドやる=モテる」という直線構造が肯定され、トントン拍子に名曲が作られる。
主人公たちと一体化してしまえば楽しめるのだろうか、
その為に故意に彼等に「イケてない部分」を色濃く残している、とも思うのだが、
なんか、こういうバンド文化に対する落ちこぼれとしてそれには抵抗を感じてしまった。
「あいつらは敵だ」感覚が抜けきれない文化系非バンド文化の自分なのだ。
この映画に出てくるバンド「シング・ストリート」がバンドの最適解としたら、
ロクデナシばかりが集まって、曲も大衆からの支持を得ず、
内部で女を取り合う裏切りが勃発する
『デビルズ・メタル』がバンドの最悪解だろう。
でも、個人的にはそっちのクズの方が落ち着く、安らぐ、ダメな自分であった。
『シング・ストリート』の皆さんも、
のべつまくなしにバイブが宙を舞うゲスな映画と比べられるとは思っていまい。
◆『裸足の季節』
▲脚だよ、脚!
五つ星評価で【★★★5人姉妹にハアハア(*´Д`)】
お国が違うと、家から脱出を企てる事が一大冒険物語になる。
珍しい、面白い、そして腹立たしい。
主役の五人姉妹には美人もいればブスもいる。
でも、そんなにメリハリ付けられてないなあ、というのは残念に思った。
あと、冒頭、五人姉妹がタイツのまま、砂浜で男子たちと騎馬戦ごっこしながら、
タイツをグショグショにするシーンがあって、
その辺りの遊びをご近所に「淫乱!」となじられてしまうのだが、
フェティストの身からすればバリバリ淫乱だと思った。
【銭】ギンレイホール、会員証で入場。
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シング・ストリート 未来へのうた@ぴあ映画生活・
裸足の季節@ぴあ映画生活▼関連記事。
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デビルズ・メタル@死屍累々映画日記

▲これなかなかいいデザインだと思う。
五つ星評価で【★★★★ああん、もうったらもう】
またまた、再びこういう人生の役に立たないくだらないの大好きと言う訳で、
『世界の果てまでヒャッハー!』の由緒正しい前日談。こっちの方が先に作られていて、こっちをベースに
『世界の果てまでヒャッハー!』が拡大再生産された物語である事が分かる。現地の土人とかが出てこない分、こっちの方がリアルだ。
【銭】未体験ゾーンの映画たち2017前回入場割引200円引きで1100円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
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真夜中のパリでヒャッハー!@ぴあ映画生活▼関連記事。
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世界の果てまでヒャッハー!@死屍累々映画日記PS 宣伝が弾けすぎて思った以上にヒットしなかった前作の煽りを食らって、
今作は「未体験ゾーンの映画たち2017」扱いになってしまったのだろうな。
それでも劇場上映されるチャンスがあるだけ良かった。
本当にコメディー作品の興行って難しい。
PS2 エンドロールの全員参加ケツダンスとか本当好き。
PS3 確か
『スクリーム4』と
『ディパーテッド』のネタバレがある。

▲ワーナー・ブラザーズが贈るリバイアサンもといリバイバル上映。そのチラシ。
五つ星評価で【★★ドラマラインとしてはつまらない】
1999年に公開された映画のリバイバル公開。
原作マンガ、アニメ未読、未鑑賞。映画も初見。
そういうアニメがあるの知ってるよ程度の知識で見に行った。
そういう一見さんへのサポートや親切心は一切なし。
ぶらっと映画館に立ち寄って「面白そうだな」とこれを選ぶ輩は極小だから
あまり神経質になる事もないだろうが、
基本として一見さんに優しい気遣いをするのは忘れないでほしい。
話の全貌を憶測しながらだけど、ドラマとしての盛り上がりより、
桜ちゃんと大道寺さんのキャラを先行した作り。
桜ちゃんが可愛くなかったり、根性悪かったらキツイ作品。
何だかそれって、みんなで女体盛りを褒めてるような状態じゃ、、、
、、、ゲホンゲホン何でもない。
大道寺さんの性格のいいストーカー気質とか、
ケルベロス・ケロちゃんの可愛い外見に似あわずヤサグレてる関西弁とか、
桜の兄貴のザックリした妹に対するリアルな対応とか、
そういう脇道の方が見てて面白かった(こっちがメインロードか?)。
まあ、それは元々の物語を知らないからかもしれない。
観客がみなそこそこお年の元お嬢様達なのは劇場の空気をほんわかにしてた。
同窓会っぽい空気(俺だけ闖入者みたいでゴメン)。
にしても同窓会会場(劇場)も大きいハコで、
まだまだお金に出来るコンテンツはいろいろ埋もれてるのかもしれないなあ、と思った。
劇場版アニメなんだけど、トレス線の太さが妙にTVアニメっぽいなと思わされた。
あと配色が大人しめなのも劇場版アニメっぽくないかもしれない。
逆に言えば、劇場版だからと言って浮付かないでいつもの仕事をやったという事か
(いつもの仕事を知らないから私自身は比較できないが)。
【銭】松竹のメンバーカード6回入場ポイントで無料入場。
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カードキャプターさくら@ぴあ映画生活PS ツイッターで「忍者キャプターさくら」ってボケた。
特集上映「自選シリーズ 現代日本の映画監督5 押井守」の1プログラム。
押井守が天才としか思えなかった時代のギリ長編と中編各一本。
◆『天使のたまご(71分)』五つ星評価で【★★★★圧倒的なイメージ】
のっけからイメージの奔流に負ける。
素晴らしいのは映像より音効と音響だ。
得体のしれない映像のイメージも凄いが、作画の力がまちまちであり、
映画その物の禍々しさを最高に引き出しているのは音の力である。
それにしてもイメージカットが多く、登場人物の動きは極端に少ない。
凝縮して30分でいいんじゃないかと思ってしまう。
勿論このスピードだからこそ得られる効果もあるだろうが。
少女が持つ卵は「セクシャリティ」の暗喩であろうことぐらいは分かるが、
全体、何がどうなって何なの?みたいな事は理解できず放り投げられて終わる。
それにしても動画が少ない。
動画が少ないという事は安く上がるという事だ。
現場はお金とも戦っていたのかもしれない。
費用を少なくする為に動画を減らされている様に見えないのは天野喜孝の絵の力だろう。
原画に貞本義之の名前を発見。1985年の作品、そんな昔から業界にいるのか。
声は根津甚八と兵藤まこ。
根津さん御苦労様でした。
根津さんは若いといっても少年ではなかった筈だ。ちゃんと少年だなあ。
◆『迷宮物件FILE 538(35分)』五つ星評価で【★★★★イメージの爆発と、奇想を論理で裏打ちしてしまうその暴力性】
こっちの方が好みだが、これは押井の饒舌節が活きてる作品。
同じ一人の人物が一つの世界の中で幾つにも多重に存在し、関わり合いを持つ構造は、
『プリデスティネーション』の先駆かもしれない。
にゅるんとした感じに変容する旅客機のビジュアルが凄い。
『天使のたまご』ほどではないが、かなり原画枚数を抑えた演出。
【銭】フィルムセンター入場料金530円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
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天使のたまご@ぴあ映画生活・
Twilight Q/迷宮物件 FILE 538@ぴあ映画生活
「溝口&増村保造映画祭 変貌する女たち」から
五つ星評価で【★★純愛が肉体を凌駕する異常さ】
6本目の溝口健二。溝口健二がどうこうでなく、
原作が谷崎潤一郎というのが合わなかった。
アブノーマルな性愛を純文学で描こうとする谷崎はよくよく苦手。
切り口がスキャンダラスなのはともかく、
皆がうじうじ悪い方に進み、最悪の結末しか迎えられない所に魅力を感じない。
美人姉妹の姉が田中絹代、妹が乙羽信子。
ぷくっと膨らんだ感じの田中絹代は妹を凌駕するような美人に見えない。
【銭】チケット屋で額面1000円の前売券を1000円でGET。
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お遊さま@ぴあ映画生活

▲チャンピオン
五つ星評価で【★★★濃い主人公と薄いその他】
自転車レース、ツール・ド・フランス7冠のチャンピオンはドーピングを行っていた。
これはもう映画の前提であり、やった、やってないを争う映画ではない。
主人公はドーピングを行って不正に勝利を勝ち取ってきた男。
であるにもかかわらず、観客は彼に強烈な嫌悪感を抱かない。
それはベン・フォスターが魅力的な俳優ということもあるが、
「ドーピング」という行為に関して観客はそれほど強い嫌悪感を持っていないのだ。
これが麻薬やドラッグなら別だが、映画内で推進派トレーナーが言ってるように
「乱用はいかん」だけで、ごくごく常用する分にはサプリみたいなもんにしか見えない。
あとは「フェア」かどうかの問題だけなのだが、映画はここを上手く切り抜けている。
チーム全体を汚染させ、それがそれほど特別な事でないように見せた。
みんなやっててもおかしくないような世界で今更「フェア」を言ってもせんないじゃん。
主人公がドーピングを行おうが行うまいが極限まで努力する姿を見せた。
ドーピング発覚リスク回避の為、更に努力しているように主人公が見えた。
ドーピング否定派の選手が必ずしも格好良く映っていなかった。
みたいな事から、諸手を振るって賛成する訳でもないが、
観客は多少の判官贔屓で主人公を見てしまう。
そんな中、明らかに間違っているのに、
主人公が正しい事を言っているメディアをやり込めてしまうのは底恐ろしいが痛快だ。
物凄く強い勝利への執着を持っている主人公、だが、彼は単なる我欲の強い男ではない。
彼には皆から賞賛の目で見られたいという欲求も高いが、
彼自身が勝利し続ける事で社会貢献しようという殊勝な面もあるのだ。
それに引き換え、彼の敵が手元に持っているのは凡庸な社会正義だけ。
「正義が勝つ筈だ」という緩い信念だけでは手負いの獣は止められない。
後半、引退してからは彼の軸がぶれてしまう。そこで初めて彼は負けるのだ。
この後半の失速そのものが又、ゲームの局面を見ているかのようだった。
故障を抱えたプレイヤーはその故障の波動が徐々に全体に伝播していき、
臨界点を越えると一気に決壊する。
決壊した彼はもう彼ではないので、映画はそこで終わる。
結局、彼は何に負けたのか。
彼は変容・変質してしまい、それに負けたのだ。
ドーピングをやろうがやるまいがターゲットに的を絞り、
先に進めるだけの彼に変化はなかった。
だが、コース外から仕掛けてくる敵をかわす為に動きを止め、
元の位置に戻るために向きまで変えた。
あの映画の世界の中では、ただ純粋に同じポリシーを貫く者が尊重されるらしい。
だから、主人公に詰め寄られてすぐ髭を剃ってしまう新聞記者は小物として扱われ、
外敵からの攻撃に同じ強さを維持できない第二選手はスポイルされる。
そして、世間から胡散臭げに見られながらも、全くブレてない
ドーピング推進派のトレーナーは最後まで悪びれもしない。
この世界観は、ちょっと最後の最後まで主人公が覚醒剤を肯定し続けた
『シャブ極道』みたいかもしれない。
【銭】ギンレイホール、会員証で入場。
会員証失効期限が近づいてきたので10800円を支払い14か月更新。
あと、併映作品の
『トランボ』は公開時に見ていたのでパスした。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
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疑惑のチャンピオン@ぴあ映画生活
ネットで見れる「ぴあ=ぴあplus」のタイム・テーブルをチラ見しながら、
実際、自分では行かないんであるが、
池袋シネマ・ロサで
(1) 11:00-12:50 君の名は。
(2) 13:55-16:00 シン・ゴジラ
(3) 16:20-18:15 甲鉄城のカバネリ 総集編 前編
(4) 18:30-20:20 甲鉄城のカバネリ 総集編 後篇
(5) 20:40-22:15 ソーセージ・パーティー
5本ハシゴする奴がいたら「ブラボー」と言ってあげたい。
「溝口&増村保造映画祭 変貌する女たち」から
溝口健二は多分
『雨月物語』しか観ていない
(あっ
『元禄忠臣蔵』があった)。
それしか観なかった理由は特になく、
ただ手元になく、特に食指も働かなかった。それだけだ。
なので、今回の映画祭も特に手を出そうと言う気はなかったのだが、
雑誌の懸賞で招待券が当たったので、これ幸いとイソイソ出向いていった。
うん、いやあ、やはり知名度のある監督は凄い。
満足して劇場を後にした。
◆『噂の女』五つ星評価で【★★★★軽い中に凄みがある】
『雨月物語』の時にも舌を巻いたのだが、セットが迫ってくる。
そして、カメラが王のように正しい位置に鎮座し、
その答しかありえない安定した絵を作る。
もちろん役者の演技も常に正しい。
まるで、その家に行き、その家の出来事をずっと横で見ているよう。
溝口健二の映画の印象はまず、この絵(撮影)の安定にあると思う。
そこで繰り広げられる話は、未見者の印象としては「女虐め」。
だから、あんまり陰惨っぽくない感じに見えた
『噂の女』を選んだ。
それは成功のような、失敗のような。
軽いコメディ・テイストの話の中でも、
やっぱり女は男社会に蹂躙される被害者みたいな位置づけで描かれていた。
圧倒的に男が悪辣なのだが、
それを手助けするように女も恋に盲目になってしまう。
実に「世間って絶対そんな感じしかないのだ」という溝口健二の信念が漂ってくる。
そして、おそらく、世間はそんな感じだったのだろう。
今でもそんなに変わらな・・・・・くはなく、弱い男が増えたかな(俺よ俺)。
田中絹代はとても強い遊郭のおかみさん。
早くに旦那を亡くしているが恋愛経験は少なく、職業に反して恋に一途。
その娘の久我美子は現代的な洋装で芸者座敷を闊歩する。
失恋したり、いい娘だったり、親と三角関係になりかけたり、目を離せない。
よきかな、よきかな。
「コメディー」と言われれば「コメディー」なのだけど、
おかしな世相を背景に人間がちゃんと描けているので、
普通に「とてもいい映画を見た」感が残る。
女は虐げられてはいるけど、反面、自由でもあるので、
観る前に心配した女虐めでキツイ感じはしなかった。
◆『新・平家物語』五つ星評価で【★★★カラーになっても実寸大のセットに狂気を感じる】
溝口最晩年期のカラー映画(カラー2本しか撮ってない)。
侍の平清盛が自分の出自や差別と戦いながら天下への第一歩を踏み出すまで。
マツケンの大河ドラマ
『平清盛』、
あれと本筋は同じで、差別に苦しめられる武士階級・平家が
歴史の流れに乗り勃興していく。
映画は大河にもあった比叡山の輿に弓を射るシーンがクライマックス。
清盛はやはりのし上がるまでが良いのであって、その後はオマケだから、
映画の前半生中心という組み立ては非常に正しい(でもどうやら続きの映画があるらしい)。
驚くのはやはりセットがどう見ても本当の平安時代みたいにリアルな事。
いや、そら、知らないけどさあ。
『雨月物語』同様リアルとしか思えない。
で、女性映画の大家とされている溝口健二だけど、
この映画では女性は市川雷蔵の引立て役。全然、顔とか映らない。
主役の若かりし清盛を演じる雷蔵だが、妙に眉毛が太い。
義憤にかられる熱い男を演じるため、野暮ったく眉を太くしてるのかもしれない。
この市川雷蔵がどこか草磲剛を思い起こさせると言ったら怒られるだろうか。
退屈ではないんだけど、映画としてのうねりみたいなのが今一薄い。
【銭】雑誌の懸賞で当たった額面1000円の前売券2枚を使用。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
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噂の女@ぴあ映画生活・
新・平家物語@ぴあ映画生活
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