五つ星評価で【★★★変人の鶴田浩二だよ】
1966年、カラー、92分。初見。
特集上映「任侠映画の世界 滅びの美学」から1プログラム。
今回の鶴田浩二は片目。と言うかタイトルの七人はみな障害者かつ武芸者と言うインチキ設定。こんな片輪の見本市みたいな映画、映画館でしか見れん。TVは勿論、ソフト化もあかん言われてる。七人の内訳は
・片目(鶴田浩二)
・片腕(藤山寛美)
・片足(山本麟一)
・全盲(待田京介)
・ケロイド(大木実)
・せむし(小松方正)
・おし+つんぼ(山城新伍)
で合ってると思う。最初から全員味方ではなく、味方になったり、敵になったりと言うドラマの起伏がある。最終的には全員観客側から見たら正義の人と納得できる作りになっている。ちなみに、その正反対の悪の人は金子信雄。金子信雄って大してあくどい顔じゃないのに(爆笑問題の田中に似てるじゃん)、顔を脳みそもしくは金玉の皺のように歪ませてラスボスの座に君臨するのは肥大っつか偉大。
鶴田浩二。「片目」と言う設定がハンディ・キャッパーだが、常識にも片足残している感じを色濃くしてる。普通に考えたら、片目くらいでは「フリークス」ではないので、主人公としてはちょうどいい塩梅である。その鶴田浩二、自分ルールと言うか、こだわりが強く、そのこだわりの為なら、正義すら蹴とばすのが異色。一瞬だけ映る鶴田浩二の刺青は墓石。何だよその気持ち悪いチョイス。
藤山寛美。私、「この人が面白い人」と言うフレーズに説得力を感じられない。だから、今回も徹頭徹尾、自分にルーズな男にしか見えず意気が下がった。ちなみに、鶴田浩二と諍いを起こしている時に現われるのがヒロインの桜町弘子。出番すぐ、片腕が袂に隠れて見えないので、この娘が三人目かとちょっと思ってた。桜町弘子、あまり好みのタイプではない。
山本麟一。山本麟一が正義側なんて映画これくらいだろう。両足欠損にしなかったのはおそらく機動性の問題で、その判断は正しい。
待田京介。この人も正義側の顔ではない。障害が片目と被るよなあ。
大木実。明智小五郎を何本か演じているので、変装後の姿みたいである。ケロイドは外見あーでも、何ら常人と変わらない。でもまあ差別対象という事なのね。「兵隊ヤス」と言う役名からして、第二次大戦の復員兵だろう。もしかしたら大時代(明治・大正)とか遠い世界の話だと思い込んでいたが、戦後すぐの割と今の話だったのか。TVが映らんと今っぽくない。後、西部劇のようにみんな銃を所持してるし。
小松方正。この人、積極的に悪側の容姿だし、女を食い物にする郭の変態親父みたいな演技を外さずにやるから、正義に見えなくて逆におもろい。ぴょんぴょん飛ぶ姿がどこかダニっぽい。少なくとも人間か人外かと言ったら人外に寄ってる。山本麟一と小松方正は着ぐるみ着ずにライダーみたいな世界で即、悪役できそうだもの。今、そういう人あんまりいない。
山城新伍。彼だけ外見に出ない障害。と言うより「おし」や「つんぼ」より「低能」としての側面を強く感じる。この山城新伍が目が見えなくなったら、ヘレン・ケラーと同一の条件になるのである。うーん、常人より強いヘレン・ケラーみたいなのは見たかった。
あー、おもろかった。何も残らんのも清々しい。
PS 石屋の喧嘩はこうだ、みたいな感じの爆薬と銃撃戦だらけの喧嘩も目に新しかった。【銭】通常一本立て興行価格1200円-400円(会員割引)。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・
博徒七人@ぴあ映画生活
スポンサーサイト
摘まんで5本まとめてレビュー。
◆『代立軍』シネマート新宿1
▲イ・ジョンジェ(中央)と代立軍。
五つ星評価で【★★★★イ・ジョンジェに外れ無し】
最も最初期から日本に輸入される韓国映画で主役を張っていた男イ・ジョンジェ(いや、更にレジェンド的にはアン・ソンギ様とかもいるが)。見る映画見る映画外れがない。で、最新作です。
今回は貧窮の為、他人の軍役を金で買う「代立」と言われる下層兵士。「軍」という題名から舞台は近代かと思ったら、近世、日本でいう戦国時代の物語だった。そして何と敵は朝鮮出兵した日本人。秀吉が「いてまえー」言って大陸側に差し向けた軍勢ですね。この軍勢に恐れをなし、朝鮮の王は息子を急遽、代理の王に仕立てて、自分は民を捨てて明に亡命してしまう。王に仕立てられた息子は、一度敵の手の届かない所まで逃亡し、義兵(非正式軍)をあげて抵抗すべしと前王に命令されてヒイコラ逃げる。それを守るのがイ・ジョンジェの代立軍、10人かそこらである。正式軍は前王の亡命にくっ付いていってしまった為、御付きの正式兵士は10人もいない。後は大臣とか女官とかお荷物だけ。代立軍はともかくヒエラルキーの低い集団で、常に最前線で働かされるので実力は軍隊一、国のシステムの中で家族を人質に取られているので逆らう事もままならない。この代立軍が現王を守りながら約束の地まで逃避する旅行きを描いている。
イ・ジョンジェはプロの武人。シニカルな目で状況を睨みつつ最善手を打つ。ヒエラルキーが低いので異常に評価されない。きつい、苦しい旅行きなのだが、この旅行きの一行が危機を乗り越える事で少しずつ「軍」として機能していく様は見応えがある。130分と割と長尺だが全然ダレない。
面白い。お勧めである。現王はちょっと魚クン似。
敵の日本人は無表情のキリングマシーンで実に不気味。死を恐れる素振りがない。日本語はちょっとイントネーション違うから韓国人の役者かもしらん。でも、その亜日本人的な所も含めて、今の日本と人と違うので怖かった。
でも、その頃、日本では、日本人の金のない百姓が渋々年貢代わりの足軽に取りたてられてヒーコラ言ってる勝新太郎の
『雑兵物語』みたいな映画もある。どの国でも貧乏人は一律弱し。
◆『ごっこ』ユーロスペース1
▲壊れがちのパパリンと壊れまいとするヨヨ子。後、写真見当たらなかったけど、同じく壊れだしてるママリン(ちすん)も怖い。
五つ星評価で【★★★★子役上手いわ、ジュニアもようやっとる】
脚本が千原ジュニアを充て書きして書いたと言ってるから、ジュニアは役にピッタリだ。ダメ男のニートで、彼自身その事を嫌と言うほど自覚している。そのダメ男のニートと共同生活するヨヨ子(平尾菜々花)も小さいながらどこか変な子供だ。平尾菜々花、子供なのに上手いな。彼等の上手く行くかに見えた関係性は婦警の優香が介在する事で限界を生じてしまう。生活資金を稼ぐために全てを捨てるようになるジュニア。その仕事先であった意外な人物。この意外な人物が女優のちすん。ジュニア同様、生活に忙殺され、人間としておかしくなってる様が見事だった。
そもそも、今では千眼美子を名乗る清水富美加が「清水富美加」名義で出演している事が気になって見に来たのだ。清水富美加は出番は多くないけど後半のキーパーソン。ああなんて演技が上手い。やはり出家は勿体なかった。
演技的にちょっとどうなのか?と思うのは優香くらい。ただラストのジュニアの大号泣シーンは見事だとは思うが、やりすぎてうるさい。
◆『ギャングース』よみうりホール
▲主役三人。
五つ星評価で【★★★辛辣なんだけどリアルな部分を好まない】
原作未読。
主役3人のキャラ取り合わせは良い。
敵は現実に存在するようなリアルな暴力組織でけっこう半端なく怖い。
この現実的な暴力組織に対する主人公三人の行動が悪い意味でファンタジーであり、彼等自身に致命的な秘密兵器がないので、冷静に判断すると勝てそうにない部分が問題。負けて当たり前の彼等が勝つための突破口が勢いしかないというのは物語的に練れてないと思う。主人公側と敵側のパワーバランスが悪いのだ。
敵側だけ見ると山ほどのいかついチンピラを統率してる金子ノブアキのカリスマ性が良い。その金子ノブアキの上にいるMIYAVI登場シーケンスの異常性には痺れた。パン一の女の子をあんな風にずらっと並べただけであんな気持ち悪い絵が撮れるなんて、なんて素晴らしい。
このMIYAVIに立ち向かっていく主役三人の死に物狂いのアクションは
『プロジェクトA』みたいであり、
『スパルタンX』みたいであり、ジャッキー、ユン・ピョウ、サモ・ハンからカンフー引き剥がしたみたいであった。
あと篠田麻里子、カメラはあまり彼女の近くに寄らないのだけど、遠目に撮っていても、脚がすんげ綺麗だった。うん、篠田麻里子は好き。声優はあかんかったけど、まだまだいい使い道があると思う。

後半になるに連れ、叩きの手段が雑になってくのはマイナスポイント。
◆『シャークネード ラスト・チェンソー』ユナイテッドシネマ豊洲7
▲鮫DEATH。
五つ星評価で【★★★ゲラゲラゲラ】
知らない間に時空放浪物になってたが、基本的にそれで何も困らないのが凄い。いや、話がチンプンカンプンではあるけど、その話がチンプンカンプンである事を差し引いても、困らない。これ、話なんてどうでもいいのだ(言っちゃった)。
流石アサイラムという感じでくだらないのだけど、4DXシアターの恩恵があり、ずっと席が震えてるので、こんなにくだらない映画なのに全然眠くならなくて良かった。逆に言うと、くだらなくない映画をこのシステムで見ると、そこそここのゆさぶりが邪魔に感じるだろう。
◆『遊星からの物体X』丸の内ピカデリー2五つ星評価で【★★★ぶひょひょひょひょーんLOVE】
今見てもあのぶひょひょひょひょーんなSFXはユニークで他に例を見ないが、テンポは割とカーペンターらしいテンポだ。あー、そーだ、カーペンターの映画って、そーいや、こんなテンポ感だった。昔、名画座でかかってた頃、何回か見た。今回が3回目か、4回目くらいだと思う。
【銭】『代立軍』:テアトル会員割引+曜日割引で1000円。
『ごっこ』:ユーロスペース会員割引で1200円。
『ギャングース』:雑誌試写応募当選。
『シャークネード ラスト・チェンソー』:ユナイテッドシネマ豊洲4DX2D会員番組特別料金2000円。
『遊星からの物体X』:松竹会員前回有料入場割引で1300円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・
代立軍 ウォリアーズ・オブ・ドーン@ぴあ映画生活・
ごっこ@ぴあ映画生活・
ギャングース@ぴあ映画生活・
シャークネード ラスト・チェーンソー 4DX@ぴあ映画生活・
遊星からの物体X@ぴあ映画生活▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です(一部TBなし)。
・
ギャングース@ここなつ映画レビュー

▲すんげ発射の衝撃反動とか吸収しそう。
五つ星評価で【★★スタイリッシュに過ぎる】
主役二人、知英と武田梨奈の秘めたるポテンシャルの高さは分かっている。だから、チラシに書かれている「スタイリッシュなバイオレンス・エンターテインメントが誕生!」と言う惹句も出来れば認めてあげたかった。だが、その実はおそらく逆で「スタイリッシュなバイオレンス描写に引き摺られたため、エンターテインメントが割を食ってしまった」である。売りの部分としての「バイオレンス描写」は良い。計算されたアングルとかとてもかっこいい。飲み会の孤独から逃げ出した武田梨奈をポツンと外に置く場面のハイセンスさとかもいやらしいくらいかっこよく撮れている。でも、これらのハイセンスな映像が登場人物の心の動きと比較的連動していないので、「そこで来た!」とか「ついに来た!」というカタルシスに繋がらない。また、売りである「バイオレンス描写」に辿り着くまでの道程やドラマパートがあまりドラマチックではなくつまらない。メイン知英のパートと折り合いの悪い武田梨奈のパートは話を別の話として分けるなら良いが、共存させるにはリンク具合が低すぎてメインの勢いを削いでしまう。知英も武田梨奈もどちらもあまり感情を表に出さないキャラをあてがわれたので、「殺る女A」、「殺る女B」と言う二つの「殺る女」の対比にあまりならなかったのも痛い誤算だろう。知英の絶叫シーンが前半と後半で多重している点は、「そう言う事なのね」という「腑に落ちる効果」を得られず、「それはそうであるに決まっているだろうに、繰り返すのはくどい」と言うマイナスに繋がってしまっている。
決めカットはかっこいい。
でもかっこいい絵を作るよりも大事な事がある。それを置き忘れては映画にならない。そういう人他にもいたな。あっ、そうか監督兼任してる時の木村大作監督だ。
【銭】テアトル会員割引1300円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・
殺る女@ぴあ映画生活
五つ星評価で【★★★★鶴田浩二だよ】
1967年、カラー、89分。初見。
特集上映「任侠映画の世界 滅びの美学」から1プログラム。
彫師になった鶴田浩二が師匠筋をやられながらも耐えに耐え、最後に悪い彫師と一騎打ち。
題材が「彫師」なだけに頭から尻まで刺青もんもん見せまくりつーか、嫌と言うほど本物の刺青が見れる。いやまあ、イヤとは言わねーけど(多少微妙)。物語の中で英国のさるやんごとなき血筋の方に刺青を入れるべく日本刺青グランプリみたいな物が開催され、彫師推薦の刺青が30体褌一丁で集まるのである。普通じゃない。どこからどこを見てもモンモン。で、おそらくそれらの刺青はギャグとして挟まれた山城新伍の物を除いて全部、本物である。もんもん背負ってる人がリアルに怖い。ヤクザ映画で見るような荒くれ者という風ではないのだけど、どこか薄気味悪い。世界が違うからだろう。物語なので、鶴田浩二の背中の一匹竜が満場の拍手でナンバーワンを射止めたりするが、鶴田浩二の刺青は比較すると発色が綺麗。多分、他の30人は背負ってから時間が経ってるので墨が多少、退色してるのだろう。おそらくそれが普通の事なのだと思う。なので、嘘の為に発色のいい鶴田浩二の刺青は映画では引き立つのだった。
鶴田浩二がもうヤクザなのにこんなに善人でいいのか、そして全挙動が申し訳なさそう。ああもう本当に「男」。
天津敏が悪いヤクザ。兄貴の遠藤辰雄が売出中の彫師で、技量のある彫師を目の敵にして鶴田浩二と衝突する。一家の組長だからそれなりの才覚はあるのだが、性根が曲がっているのだ。怖い怖い。
鶴田浩二と絡むいいヤクザが待田京介と山城新伍。待田京介頼りになるけど、顔が怖い。
志賀勝が天津敏のチンピラの一番格下。髪型が変に長髪で不思議ちゃんっぽい雰囲気。
丹波哲郎が旅先の大親分。この人は偉そうにしてると根拠もなく偉そうに見えるから、それはそれでいいのだと思う。グッと来る。
女郎屋の女主人、松尾嘉代、かーいーよ。こんなん絶対女将抱かせろって客が来るよ。【銭】会員ポイント9ポイント使用して無料鑑賞。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・
博奕打ち 一匹竜@ぴあ映画生活
五つ星評価で【★★★ヤング二谷英明&宮口精二】
特集企画「生誕100年映画美術監督木村威夫」から一本。
ヤング二谷英明と叩きあげ35年宮口精二の刑事バディもの。
奥さんが病気でこれが最後の事件で、科学捜査よりも自分の勘に信頼を置く宮口精二が良い。家庭を顧みない刑事で妻の葬式に来た若い刑事に事件の進展具合を聞き、子供にイヤな顔をされる。昔の「父ちゃん」って、基本みんなあーだったなあ。それにしても、定年というほど老けて見えないのだが何で退職するのだろう。
二谷英明と宮口精二がアリバイを崩そうとするメインの部分はいいが、事件の背後の手形詐欺や口封じのための誘拐など事件が大きくなって筋が見えづらかった。しまった。そこは私がバカだからか。
鈴木瑞穂とか高品格とかが刑事部屋にいると実に刑事ドラマらしい。あと大滝秀治が悪役で「ぬるん」とした感じの中国人を怪演。やっぱりあくどい顔なのだよなあ。黒幕は中国人。近年の歌舞伎町を牛耳るようなチャイニーズ・マフィアと違って、普通の経済活動をしつつ、簡単に悪事を行う怖さが、「中国人」と言う同じような外見で中身のメンタリティーが異なる人種を使う事で説得力を増している。まーそういうのヤバいような気がするが。郷鍈治が誘拐の実行犯でライフルバンバン撃ちまくるようないつもの役柄なのだが、この人東映の人と言うイメージだったけどフィルモグラフィーとか見ると、そもそも日活の人なのね。宍戸錠の弟なのか。そりゃ日活入るわな。
1963年の日活の白黒映画なのだが、ラストカットが事件が解決した東京の夜景。真っ中心に東宝のロゴマーク、そしてその下にネオンで「マタンゴ」。マタンゴは1963年公開のカラー映画なので時期は合ってるのだが、それを見て一瞬、自分の目を疑いつつ、映画の内容がほとんど飛んでしまった。
【銭】国立映画アーカイブ「映画の教室」全回鑑賞時に貰える一回鑑賞券を使って無料鑑賞。
▼作品詳細などはこちらでいいかな(何も書いてへんけんど)
・
アリバイ@ぴあ映画生活

▲得体の知れない存在感、宮原華音。
五つ星評価で【★これはあかん】
登場人物がムチャクチャ出てきて、それぞれがそれぞれに対する思いを持ってそうだったりするのに、整理されてないし、誰が誰だかだし、何に向かって誰がどう走っていく物語なのだか全く分からなかった。セーラー服で日本刀持った少女のこの世界に対する違和感が唯一気になる。
八嶋智人(刑事)と高橋克実(総理大臣)が共演をしているが、同一シーンで出会うとかはなし。出会ったら蘊蓄言いあっちゃうだろう。
【銭】シネマート新宿月曜メンズデー1100円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・
BLOOD-CLUB DOLLS 1@ぴあ映画生活


▲左が特報チラシ、右が決定稿チラシ。右の方が客を呼べるデザインだけど左のシンプルさも嫌いじゃない。おっかなびっくりの左の正雄に右のニコヤカ正雄がハイタッチしようとしてるみたいな構図になってしまった。
五つ星評価で【★★★できれば草刈正雄の魅力に悩殺されたかった】
最初に「草刈正雄でラジオ体操の映画」って聞いた時、ダメ映画臭というか、ダメで元々なのに博打も打たない臭というか、とりあえずBSかネット配信のどちらかがシャレで作った映画臭というか、ひっくるめて「強い地雷臭」を感じたのはしょうがない。だってそんな企画じゃない。
草刈正雄は普通の定年退職者を演じるというのだ。
割とそれはギャップだと思うのだが、それはグッと来ないどちらかと言うと逆構造のギャップだ。ギャップいらない。普通に真田丸のインチキ親方とかプレイボーイ・スーパースパイで構わない(スパイは過去そういう映画があってつまらなかったけど、とりあえずそれは不問にする)。でもまあ、常人としての草刈正雄は思った以上に違和感はない。それが直接面白い訳ではない。流石に草刈正雄が演じるのだから漏れ出してしまう「チャーミング」があるのだが、役柄の「退屈につまらない男」に負けてしまっているのがちょっと居たたまれない。
そして、これは娯楽映画なのだが、果てしなく粒の小さな娯楽映画なのだ。
物語が起承転結は基よりちゃんとガッチリ出来ているので、積極的に悪くはない。ただ、娯楽映画なのにカタルシスとか貰えないのだ。何だかぼやーっとして人生いいか悪いか比べてみたら51:49でそうそう捨てたもんじゃない的に終わる。いやいや映画なんだから、スカッとするとか、涙で画面が見えないとか、そういうのが欲しい。
常時機嫌が悪い木村文乃は今までにない損な役どころ。
いつも通り何も変わってないのに、味が浸みるっぽくなってきた、きたろうがおいしい役かな。
そーいや、小松政夫がピンポイントで出てた。往年の笑いとか無理に組みこまないとても役者的な使い方なのだけど、何か何もしないのも寂しい感じがする。
【銭】109シネマズ月一サービスデー(毎月10日)1100円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・
体操しようよ@ぴあ映画生活▼当該記事のみコメント欄が封鎖されている事に付いての関連記事。
・
アラビア語でコメントが付いたよ@死屍累々映画日記・第二章・
アラビア人に体操をさせない件@死屍累々映画日記・第二章

▲この映画の見所は断然、夏帆ちゃん。
五つ星評価で【★★★勿体ないキャスティング】
大元である原作小説は読んでない。
マンガ版はブックオフで底値で2冊買って読んだ。
剛力彩芽主演の大炎上したドラマ版も見ていない。
なのでマンガ版のイメージだけなのであるが、
そしてそのマンガ版でこの映画に出てくるのは3人。
ビブリア古書堂の主人・栞子とバイト大輔、あと栞子の妹。
物語は現代パートと過去パートに分かれていて、過去パートの出来が良い。ただ、この過去パートはもしかしたら原作にない部分で映画の為に膨らませている部分かもしれない。こっちがメインかと思うくらい魅力的に膨らんでいる。東出昌大と夏帆の出会いから最後の表情までとても文学的である。特に夏帆の出演シーンは全て素晴らしい。可愛い。美しい。活き活きしている。愁いを秘めている。人生に殺されようとしている。それでも生ききった。名前が分からないが気が狂いそうな境遇の夏帆の夫の役者もよかった。夏帆と愛しあうようになる東出くんは昭和40年代の男には見えづらい。明治男っぽい。まあ、それはそれで時代錯誤で面白い気もする。オリンピックで一丸となって高度経済成長に邁進する中、経済活動と無縁でいれるのは学生か身を持ち崩さなかった富裕層で、定食屋の女将さんを文学の世界に誘うのは、文学が書かれた当初の時代からやってきたような書生さんなのである。逆に彼がその当時の現代を身に付けていないからこそ、彼の文学は評価されないという事もあるのだろう。
現代パートが良く見えないのはやはりキャスティング。
黒木華は物凄い演技巧者だが、この映画のキャラクターとは合っていない。とても珍しい黒木華の負け戦である。
黒髪は剛力さんと違って長いが、髪質が重い。陽光の下、キラキラ輝く感じではなく、「和」でしっとりみたいにキャラが方向変換されている。内向的だが本の話になると見境がない。この基本設定が一度なぞったくらいで根付いていない。彼女が本好きである事の楽しさが伝わって来ない。まるで本が好きである事が一種の呪いのようだ。黒木華は彼女自身が演じる上での最適解のような演技をしてると思うが、それでも違うは違うのである。
野村周平はいい感じに地味。但し、タッパが少なく筋肉質ではない。でかくてガタイがいい男であるというのは彼自身の出自を語る上での謎の検算に当たる部分だから変えない方が良かった。
妹は適役。

▲主役だけどオマケの二人。
あと細かい話だが、「ビブリア古書堂」の店頭に出す設置看板(と言えばいいのか)がパステルっぽすぎる。
も一つ。ダメのダメ出し。
サザンのED曲がかなりクソ。こんな感じの雰囲気いい曲当てときゃいいだろ感高すぎ。
【銭】ユナイテッドシネマ、金曜メンバー1000円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・
ビブリア古書堂の事件手帖@ぴあ映画生活
同日鑑賞2本をまとめてレビュー。
『ANEMONE 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』トーホーシネマズ上野2
▲ブランコに乗るエウレカ。ブランコって「寂しさ」を表わす舞台装置になり果ててるけど、実際、遊具としての危険度は高いから近未来は許せても遠未来だとロケ地に苦労するくらいなくなっていそう。
五つ星評価で【★★何でもええねんやろ】
TV版とも前回の
『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』とも話が続いていなかったり、設定が異なる部分があるらしい。よう分からん。それはTV版も見ていないし、前回の映画を見てもその映画単独では世界観を理解できないと言われていたとおり、理解できなかったからだ。
おそらく、この映画単品で見るだけでは理解不能。アネモネの母の出自や、前作エウレカと今作の間の溝など、蓋を閉ざすように話されていない謎が多い(私が理解していないだけで基本的に語られ済んでいる話である可能性はある)。
今回の話を単純に言うとハイ・エボリューション1で不調を来たした世界に対して少女アネモネが折衝する話である。
アネモネはその折衝の中で失われた父を取り返す代わりに今の現実世界を諦めるよう説得を受ける。
そして、アネモネが世界を変える力エウレカと対峙した結果、エウレカすらも自らの力を制御できず、彼女たちは仮想現実に呑み込まれそうになる。だが、彼女たちはその事に対する退路を既に知っているのだ。
アネモネが扱うのは意識をダイビングさせた敵の仮想世界。彼女が折衝する事で現実にどう影響するかの因果関係は明確に語られない。なので、仮想世界の中の表現はやりたい放題にしても問題ないらしく歯止めが利かない。その割には自由なやりたい放題をあまり目にしないのはどんなもんなんだか。正味95分の映画であるがコアな話は30分程度で収まる内容なのではないかと思う。そして見終わっても結局、謎は解けない。何じゃそりゃ。
◆『続・終物語』トーホーシネマズ上野6
▲「今、少年マガジンに連載している展開分の少女は知っているのさ、わははははは」あっ、誰もチラシに載ってなくないか?
五つ星評価で【★★こっちもどうにでもなるんやろ】
西尾維新原作の「物語」シリーズの阿良々木暦くんの高校生活終了に伴うシリーズ終了により、「物語」シリーズ全体を包括するサブストーリーの後日談が紡がれる。148分の長さは伊達じゃない。どっぷりである。これは「物語」シリーズ全体とお付き合いした読者(とかアニメ視聴者)に対するサービス・ファン・ムービー。私は劇場用アニメを見ただけなので、そんなに足を深く沈めていない。
きっつい。
「うる星奴ら」最初の一話だけ読んで、最終回読むような物。語り口やアニメ表現は面白いが、全体置いていかれてしまうのはしょうがない。うーん、ケツが痛い割にはやはり、分からない部分も多く、そうそう一見さんに楽しめる話ではない。まー、しゃーない。イベント上映なんてそんなもんだろ。但し、この作品はイベント上映ではあるが、値段は通常料金と一緒であるし、「期間限定上映」と宣材に書いてあるのに肝心の限定期間がどれだけなのかが何にも書いていないという。そんな緩いイベントを「イベント上映」と呼んでいいのか?
【銭】『ANEMONE 交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』:トーホーシネマズデー(毎月14日)で1100円。
『続・終物語』:トーホーシネマズデー(毎月14日)で1100円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・
ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション@ぴあ映画生活・
続・終物語@ぴあ映画生活▼関連記事。
・
エウレカ関連記事リンク@死屍累々映画日記・第二章
あの国沢実の変な方向の新作と深町・友松の旧作に食指が働いた。
◆『ピンク・ゾーン2 淫乱と円盤』
▲左から瀬戸すみれ、佐倉絆、南梨央奈。とても成人映画とは思えないしっかりしたセット。
五つ星評価で【★★★大怪作】
山本宗介 主演、南梨央奈、佐倉絆、瀬戸すみれ 出演。
国沢実監督、切通理作脚本。2018年のピンク映画。
主人公のル・サンチマンの歴史に地球の終焉と異星人と「我々は戦うべきではなかった。愛し合うべきだった」が絡み、女子二人がプラグスーツで大砲発射、そしてSEX。意図的に分からないように書いている事を差し引いても、こんなの普通じゃない。主人公の野郎がとことんまでヒエラルキー下層に追い詰められるが、何かダメ側の存在主張がうるさくて全然同情できない。だが、仮に主人公が山本宗介でなく神木隆之介が演じていたら、彼が佐倉絆に要求する「僕とSEXするまでなんで処女でいてくれなかったんだ?」も許せるんだろうか? 何か許せる気がしてきた。恐るべし神木、恐るべし隆之介。神木隆之介だったらマザコンがバレても、属性として可愛いじゃんとこれも許されてしまう気がする。「隆之介君ったら母親思いね(きゅん)」とか化学反応しそう。ちなみに映画の中の山本宗介はラーメンズの片桐仁っぽい外見なので、そういうの全くなし。人生は厳しいね。
主人公の幼馴染で地下アイドルリア充ヤリマン役は南梨央奈。美人。
主人公の理科大後輩で教授と出来てるヤリマン役が佐倉絆。美人。
主人公の家に突然押し掛ける異星人からの捧げもの、宇宙ダッチワイフが瀬戸すみれ。ちょっと母属性。
見終わった後、何だったのかサッパリ分からないミミズのSEXみたいな怪作だが濡れ場はエロい。
◆『妻の秘密 エロすぎ熟れ頃』旧題
『若妻 しげみの奥まで』五つ星評価で【★★★川瀬陽太、薫桜子が素晴らしい】
川瀬陽太主演、薫桜子、里見瑤子出演。
深町章監督脚本。 2007年のピンク映画。2回目。
5か月くらい前に見たが、後半寝てしまったので、それを取り戻す為にもう一回見てみるかと思ったはいいものの、同じように後半で陥落した。何だよ、その実人生っぽい悔しい展開。最初の薫桜子の夫との濡れ場でぐいーっと力が入り(ラフなパジャマから零れる巨乳がエロい)、その後、隣の主婦・春咲いつかとの酔っぱらい不倫にそんなに燃えず、そこで緊張が切れて後半頭がシャットダウンしてしまう。全く前回と同じだ。成長ないよ俺。もう一巡はきつかったからやめて帰った。又、忘れた頃にこの映画に出あえるかもしれない。出あえないかもしれない。
◆『わいせつ性楽園 おじさまと私』
▲左から野上正義、水無月レイナ。ブランコカット。
五つ星評価で【★★★★友松監督がこういう善良な映画撮る奇跡】
水無月レイナ 野上正義 出演。
友松直之監督、大河原ちさと脚本 2009年のピンク映画。3回目。
見初めて前に見た事があるのに気づく。遅いよ俺。
音楽の選曲がすこぶる変。あの爺さんに付いてるトロトロしたテーマが変さをぐーっと盛り立てる。
爺さんの映画があると、どうしても若い女性と一緒にブランコに乗せたがってしまう傾向があるのだが、また
『生きる』かよと全く思わないのは、二人が自然にそこにいて、いきなり歌とか歌ったりしないからだろう。ブランコも単にベンチ代わりに使っているだけである。
これは映画として本当に良く出来てる。
爺さん(野上正義)の娘、里見瑤子と山口真理が交差する白と黒の濡れ場もゴージャスだがカット変わるごとに劇伴も変える演出がイカレてる(いやいや大層ステキよ)。
ただ、この映画は濡れ場より野上演じる爺さんの無駄のない魅力的な人生訓と、それを観点が違う物として素直に受け入れていくソープ嬢の女の子との交流が面白くて良い。
◆『冷たい女 闇に響くよがり声』五つ星評価で【★★寝ちゃったからなあ】
池島ゆたか監督 2018年のピンク映画。初見。
これだけ横浜光音座2で新作公開時の10月17日に観た。でも、疲れてると人は映画観れずに寝るのよ。そんな事を何回やっても覚えられないのね俺。と言う事で感想はなし。劇場に足を運んだ宣言だけ軽く上げておくにとどめる。神様がこれ又見させた方がいいというのなら、どこかの映画館でこの映画に巡りあう事もあるだろう。そこで又、寝てしまうかどうかは神のみぞ知る。
【銭】上野オークラ、一般入場料金1600円。
横浜光音座2、ラスト1本半くらいでの割引で1030円。ここの金額半端でおもろい。消費税3%だった頃の名残か?いや、知らんけど。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・
ピンク・ゾーン2 淫乱と円盤@PG・
若妻 しげみの奥まで@PG・
わいせつ性楽園 おじさまと私@PG▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です(一部TBなし)。
・
わいせつ性楽園 おじさまと私@横浜のロマンポルノファンのブログ▼関連記事。
・
妻の秘密 エロすぎ熟れ頃(一回目)@死屍累々映画日記・第二章・
わいせつ性楽園 おじさまと私(一回目)@死屍累々映画日記・第二章・
わいせつ性楽園 おじさまと私(二回目)@死屍累々映画日記・第二章
次のページ