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ふじき78の死屍累々映画日記・第二章

場末にひっそり咲く映画日記。第一章にあたる無印はライブドアブログ

『デート・ア・バレット ナイトメア・オア・クイーン』アニメシアター『天皇の料理番 第一回』ヴェーラ『切腹』神保町

同日三本鑑賞をまとめて。
とは言うものの一本目は30分、2本目は47分だ。

◆『デート・ア・バレット ナイトメア・オア・クイーン』EJアニメシアター新宿
▲画像は後から。

五つ星評価で【★★これはヒドい】
まずオープニングはゲロかっけー。それは認めよう。
前作と合わせて1時間だが、1時間の内容はない。
バックボーン(ゲームか?)を知らないと言うのはあるにしても、殺し合いの末にラストに生き残った一人が何でも可能な褒賞を与えられるという『ハイランダー』設定が一切勘案されないラストはいったい何なのか? 話は何を求めてどこに行こうとしているのか一切分からない。説明しろよ。それは物語形式の作品に金を払った観客に向けての誠意だろう。クイーンを自称するキャラクターは主人公同様オッド・アイだが、別にそこに理由はないらしい。クイーンは他者の姿を借りたり、借りた他者本体の姿を小動物に変えたりも出来るが、それ以外にも別の能力が使えるかなどの強さの制約が見えない。それって戦闘アニメであるにも関わらず、それぞれの強さが曖昧だという事だからダメダメである。主人公とクイーン以外は倒されるべきザコキャラなので、見た目(装具や武器)以上の強さは持っていないが、そもそも主人公の強さが説明できないくらい未知数なのだ。


◆『天皇の料理番 第一回』シネマヴェーラ渋谷
五つ星評価で【★★★のほほんと見れる。テレビドラマだからかな】
特集「森崎東党宣言!」の1プログラム。
1980年、カラー、47分、テレビドラマ、初見。森崎東監督。
配役表に千葉繁発見。「小坊主1」ほぼ話さない役なので、往年のキレ芸は勿論なし(無言でキレる場面はある)。若い頃の声優が役者として小さな役をあてられて、自分の声をほぼほぼ出せずに終わってしまったのは他に広川太一郎の『男はつらいよ』とか池田秀一の『獄門島』がある。千葉繁、顔が分からん。っつか、あの人は『紅い眼鏡』という主演映画があるのだったな。
さて、主演は堺正章ことマチャアキ。日露戦争開戦前夜の時代で、村一番のアホウ役。おー、鳥ガラ系、ロンブーの淳に顔が似てる。坊主頭時代の明石家さんまにも通じる、やっぱり鳥ガラ系なのだな。そして、演技は『カックラキン大放送』っぽいバラエティー発声。千鳥の大悟っぽい喋り。マチャアキの奥さんに檀ふみ。かーいー。マチャアキより身体が大きくて「あんなでかい女いやじゃ」とか言われる。何を言うか、可愛くてたまらん。後に「檀さんはコーヒーです」と言われるが、この頃はまだミルクっぽい。あー、乳の一つも見せてほしい(そりゃあ見せないだろう)。
マチャアキが檀ふみを田舎に捨てて、ツテのない中、東京に料理人修行に乗りだすまでが一回目。


◆『切腹』神保町シアター
五つ星評価で【★★★★★すげーなー。目を見張るわあ】
1962年、白黒、134分、2回目。小林正樹監督。
特集「松竹映画100周年 監督至上主義の映画史」の1プログラム。
また仲代達矢だ。仲代達矢すげーな。素人目には『人斬り』の冷血漢と大きく変わらない演技に見えるのだが、そのちょっとした差の中に喜怒哀楽の感情が乗って凄く人間らしい。何となく、剣や技の見切りの紙一重をずっと見せつけられてるみたい。ただ殺陣でのあのエックス防御、あれはよく分からん。ただ、現実の刀剣あい乱れる戦場ではアレが効くのだと言われればそうなのかもなあとか思ってしまうくらい、仲代達矢を信用してしまうのだけど。この映画の殺陣で、とても上手い事をやり抜けてるなと思うのは、決定的な場面を見せていない所である。

・竹光での切腹の際の介錯。
・仲代達矢と丹波哲郎の鍔迫り合いからの髷切断。
・仲代達矢が侍を斬り始める最初の一斬。
・仲代達矢が自分の腹に刀を突き立てた後、介錯替わりの銃撃。

これらの決定的な場面は画面に映らない。物語の流れや、別室にいて聞こえる音や、人物の表情の動きで分かる。そして、勿論、現実に見えてない物が一番効果的に脳裏に残るのだ。魔的な演出てある。

丹波哲郎、本人はいろいろ迂闊な部分は数多くあれども、普通に善人なのだと思うのだけど、この映画の丹波哲郎はイヤな奴。仲代達矢のあばら家にやって来た時の、自分より弱い立場の者に対する侮蔑が匂ってくるようで凄い。そして、丹波哲郎が親玉で、子分も沢山いて、集団で個人の非をなじって来るのだ。そういう意味では井伊家屋敷の庭先で若者の自決を責めたてる際、誰一人の異論も挟めない様は、どう見ても、今のイジメ構造に繋がってるとしか見えない。日本って一番の人間が決めたルールは鉄の掟であって、それをひっくり返す事など出来はしないのだ。あの丹波哲郎が仲代達矢と剣を交え、徐々に焦りを身体の節々に表わせていくのはとても演技に見えない。

そして峰岸徹に見える三国連太郎。うわ、そうか、あれ、三国連太郎か。峰岸徹かと思ったよというくらい、私自身の中には三国連太郎は重い、峰岸徹は軽いというイメージが培われている。自分が世の「苛立たしさ」の為に行ってしまった判断に、後から追い込まれる男、とても三国連太郎には見えない。峰岸徹チックである(両方に失礼だよ、俺)。小者は失策を取り消せない。取り消せないまま、小さな火は大きな炎へと成長していき、屋敷を舐め回して行くのだ。最後まで逡巡しながらも、汚い手段でしか場を収める事が出来ない。それが日本人。という呪詛を見るようである。仲代達矢のようにありたいという思いを持ちながら、あまりにも日本人の大半は峰岸徹=三国連太郎のように生きがちである。あの最後の寂しい姿、勝ちを収めて負け切った姿がまるで自分等のように見えるので、この映画は刺さる。

武満徹の音楽も悪夢のようで気持ち悪くて良し。


【銭】
『デート・ア・バレット ナイトメア・オア・クイーン』:均一料金1300円
『天皇の料理番 第一回』:一般入場料金1200円-会員割引400円。
『切腹』:有料入場ポイントカード5回分により無料入場。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
デート・ア・バレット ナイトメア・オア・クイーン@ぴあ映画生活
《『天皇の料理番』第一回 カツレツと二百三高地》@ぴあ映画生活
切腹@ぴあ映画生活
▼関連記事。
後から。
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『人斬り』『11.25 自決の日』新文芸坐

特集「三島由紀夫 文学と映画」の1プログラム。

◆『人斬り』新文芸坐
五つ星評価で【★★★★五社英雄監督ちと長いよ】
1969年、カラー、140分、多分二回目。
バカをやらすと勝新光る。つか、若い時は別だけど、ヒット飛ばした後の勝新はバカで女好きで滅法ケンカが強い、みな同じ人間である(キャラクターは同じだが、座頭市だけは盲人)。そして、冷血漢をやらせると、仲代達矢光る。いやあ、怖い怖い。お人好しの後輩キャラに山本圭。いやあ、お人好しだ。イメージ通りだ。にしても、人斬り以蔵に勝新太郎、坂本龍馬に石原裕次郎、ドラマ『龍馬』の以蔵=佐藤健、龍馬=福山雅彦とイメージ違いすぎで笑ってしまう。佐藤健は女のまたぐらに顔突っ込んでニヤニヤ笑ったりはしないだろ。事務所が許さないだろ。薩摩の田中新兵衛を演じた三島由紀夫が出色の出来。三島由紀夫はもう単に普通の役者としてちゃんと通用してる。この映画でも上から数えた方がいい役だし、見せ場もある。あ、コント55号なんか出てるのね。コント55号は本当にオマケ出演で下から数えた方がいい役だし、そこだけ空気がコントっぽい。
三島由紀夫、この演技の1年後だかに自決してるとの事。あー、わからねー。


◆『11.25 自決の日』新文芸坐

▲真面目くん。

五つ星評価で【★★なるほど三島由紀夫はこういう男なのね】
2011年、カラー、119分、初見。
三島由紀夫こーゆー人だったのね、と言う、何となくの概要が分かる。でも、これを見た後に役者、三島由紀夫を見ると又、はぐらかされてる気もしてしまう。井浦新と満島真之介の没入具合が凄い。満島真之介はこういう普通に熱い二枚目の役ができるのだなあ。寺島しのぶがよく分からない迫力で、三島夫人。三島由紀夫と三島由紀夫夫人がどういう関係なのかが全く伝わって来ない。いや、関係で言えば「夫婦」なのだろうけど、セックスとかしてるようには見えない。何がどうしてどういう具合に夫婦なのかが分からない。寺島しのぶが怪作『キャタピラー』みたいに陰で全てを牛耳っていそうな気がちょっとだけしてしまう。


【銭】
一版1450-300(会員割引)だが、今回は8ポイント使って無料。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
人斬り@ぴあ映画生活
11.25 自決の日 三島由紀夫と若者たち@ぴあ映画生活

腕時計切り替え

2020年11月23日購入、24日使用開始。

前回が2019年8月、どうしてもプラスチックのベルト部分が傷んであかんようになるので大事故になる前に新しいの購入。
もうすっかり諦めて次の条件だけ満たしている事を前提に購入。

① デジタルで文字がでかくて読みやすい。
② バンド取り換え可能。
③ 出来れば長持ち(電池とか)
④ 予算1万くらいまで
⑤ 多機能一切不要。

①を満たすのが案外ない。カシオとか爺泣かせの小さい文字だらけ。予算5万とか見とけば文字でかいのが変えるが、それはデジタル時計ではなく、PCモニター時計だ。
②もデジタルだと一体化型が多いかもしれない。
③は、どの機種も長持ちを保証。ソーラーやら何やらはともかく、2年くらいでベルト破損するとはあまり考えんようだ。
⑤もうずっと機能を使ってなかった。アラームすら未使用。強いて言えばMMDDが見れれば程度。

2000円くらいで買った。
一応条件は満たしているけど、どんなもんか。

日付と曜日がずれてる。どうも日付と曜日は別々に直すらしい。えっ、4年に一回の閏年の時って手動対応になるじゃん。さっそくゲー。まあ、4年後の閏まで持たんと考えるのが妥当か。いやはやなんとも。

『瞽女』『二人ノ世界』シネマチュプキ・タバタ

◆『瞽女』シネマチュプキ・タバタ

▲基本いい「べべ」着てるのだけど、旅から旅で小汚いのが本当じゃなかろうか?

五つ星評価で【★★★全体統一されている部分とそうでない部分の違和感】
105歳まで生きたという事なので、約100年、江戸時代は過ぎて、明治かそこらに生まれた人なのだろう。野郎はみなザンキリ頭、女性の方が一人として洋髪がいない、百姓の困窮した生活ぶりなどどうにもテイストが時代劇みたいである。盲目の女性が三味線を弾きながら庄屋や地主の家などで歌う「瞽女」という角付け芸、昭和にはあっても、平成では撲滅したのではないか。劇場で歌い聞かせるみたいな事はやったとしても「角付け」という芸そのものが、もう周りが分からないだろう(すんげ大雑把に言ってしまえば路上ミュージシャンの投げ銭システムと一緒)。
目が見えない身体に生まれてしまったばっかりに、鬼のような母に躾を教えつけられ、鬼のような師匠に芸を教わる。教育を授けている側は決して悪人ではないのだが、スパルタ式しかないやり方は見ていて心が休まらない。裏に愛情があっても、そういうのが幼児ゆえに意識できないのはしんどい。

主人公ハルが生まれた家は地方のそれなりに裕福な家らしく、部屋の間取りはみな広いし、門から玄関までかなりの距離がある風だった。そんな古い日本家屋を舞台にしているので、庄屋の集会場でも、室内は皆、陰気で薄暗い。昔の日本は土地は余ってたから百姓家作るのにも空間的にはゆったり作ったのであろう、部屋の明るさがどこも芒洋とした同じトーンに抑えてある。それはそれで贅沢な事だ。その陰鬱な照明が照らす、どこも決して裕福には見えない招く家を行き来する「瞽女」は映画内で「最下層の生活」と言われたりもするが、それほど困窮そうには見えない。そして、この世界のヒエラルキーの頂点はと言うと、めっちゃ上質そうな尼服に身体を隠した占い師・小林幸子である。それはどうよ? 本田博太郎はどの世界にいても本田博太郎なのだが、まあ、それはそれで良かろう。

主人公が吉本実憂、普通にようやッちょる。
主人公の母が中島ひろ子。あー、こんな役をやるようになったのね。顔立ち変わって誰だか分からんかった。

「いい映画風」であるが、いや、「いい映画風」であるので、流されるなと俺の内なる悪魔が警戒してるような映画。


◆『二人ノ世界』シネマチュプキ・タバタ

▲二人の日常が分かるスチール。永瀬正敏は寝た切り。盲人の土居志緒利は全ての物が同じ場所にある屋内であれば、自分の部屋と同様に振る舞えるので介護が可能。

五つ星評価で【★★★中々見せる】
全身麻痺の男性を介護する事になった全盲の女性、序盤の突っつきあいみたいな干渉が楽しい。
中盤から後半に向けて、世界は彼と彼女に造反を起こす。この造反の仕方の意地が悪い。
ラストシーンはその世界に対して一矢報いた風だが、現実問題何にもなってないのではないか?
永瀬正敏の良さを再確認。
その永瀬正敏を堂々迎え撃つ、土居志緒利も凄い。


【銭】
期限無期限のシネマ・チュプキの12回券を10000円で購入、9,10回目使用。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
瞽女 GOZE@ぴあ映画生活
二人ノ世界@ぴあ映画生活

『人狼ゲーム デスゲームの運営人』シネマート新宿1

◆『人狼ゲーム デスゲームの運営人』シネマート新宿1

▲可愛い姉ちゃんがしよると拘束の首輪もオシャレアイテムみたい。

五つ星評価で【★★★★デスゲームものは死なないけど死ぬほど好き】
今回はタイトルにあるように、デスゲームを運営している人達の仕事っぷりも描かれます。で、チラシに書いてあるからいいだろうけど、運営側にデスゲームを操作しようとする「運営側の裏切り者」がいます。なので、その辺の種明かしも含めて割と最後までドキドキが持続した。中々上手く作ってあると思う。あ、あれ、そうなのとラストちゃんと驚いた素直な私。
デスゲーム参加者9人、運営5人、計14人。登場人数が何時もより多いけど、運営の5人は人狼ゲーム・プレイヤーでなく、年齢等も含めて制約を外してメリハリ付けて描けるので、増員は何ら問題にならなかった。デスゲーム参加者9人は前半戦で割とサクサク処分されるのと、人狼ゲーム自体に今回のみのオリジナル設定がなかったので、プレイヤーの混同や複雑なゲーム・ルールによる混乱みたいなのも見てる限りは起こりづらかった。
運営側を描く事によって、野郎はともかく、女性陣については「可愛らしさ」が拉致などする際にも選考基準になっている事が分かり、そういう味付けはリアルでよい。
そして、午後八時の指名タイムで、各人の持ってる色々な感情が爆発し、それと同時に「ブツン」とテレビ電源を切るような音で兎の首を捻るように誰か一人が絶命するのが快感的にたまらない。今回、壮絶な裏切り劇があり、裏切られた者の最後の追い込まれ感はちょっと今までになく強烈だった。

ラスト、エンドロールでどのプレイヤーがどの役割を演じていたのかが分かるのはいつも通りだが、ビデオやDVDやブルーレイじゃないんだから、もう少しゆっくり顔写真付きで流してもらう訳にいかんのかねー?


【銭】
テアトルの会員割引カードを使って1300円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
人狼ゲーム デスゲームの運営人@ぴあ映画生活

『泣きたい私は猫をかぶる』ヒューマックス池袋2

◆『泣きたい私は猫をかぶる』ヒューマックス池袋2

▲ちょっとウルトラセブンっぽい一枚。

五つ星評価で【★★★★スタジオ・コロリド凄い】
スタジオ・コロリドの『ペンギン・ハイウェイ』の次の作品がこれ。当初、普通に公開される予定で、劇場で予告とかも見たが、コロナ禍でネットフリックス発信になり、出来が良いので一部劇場が手を伸ばして小規模での劇場公開という形らしい。ヒューマックス池袋さんやトリウッドさん、お目が高い。
『ペンギン・ハイウェイ』もSFしててゴキゲンな映画だったが、その中に「巨乳のお姉さん」的な「イヤな売れ線」を放り込んで来るところが私は逆に好きだったのだけど、今回は「女子高生が猫になる」という如何にもみんな惹かれるが故に全否定くらっちゃいそうな話でニヤっとさせられる。相変わらず表現力が地に付いてて凄い。アニメートとか凄く地道にいい動きをしています。
感覚的にそう見えるのだけど、人間が化けている猫の動きが猫生来の動きと何か少し違う気がする。顔の表情なんかも人間が入っている猫は明らかに通常の猫とは違う(目の表現だけではなさそう)。両方とも分けて意識して描かれている。人間が入っている猫は顔の表情がどこか人間らしさが出ているような気がして、それが障害になって返って可愛らしく見えなかったりする。アニメートで言えば、主人公ムゲの身体の動きとかもふわふわして、他の高校生と変えているように見える。あ、「ムゲ」という仇名の出自が凄くて驚いた。それは親もそんな仇名を知らないだろ。

▲ムゲが中に入ってる猫タロウの顔アップ。何か猫ではない感じじゃない?

ムゲはある日、「お面屋」という猫の妖に誘われて、猫として暮らす遊びを教わる。猫のお面を付けると姿が猫になり、彼女の恋してる男の子の所にいって、猫として可愛がられるような二重生活を送るようになる。

ある日、その猫のお面が取れなくなる。
人としての彼女が自分とは別に生活するようになる。
祭の日に、彼女は完全な猫になると告げられる。

怖い。怖い。絵は物凄くソフトなのに、とても怖い。
自分が人としての実体をなくしてしまう事や、自分が作りあげた自分の「社会性」が他者に侵食されてしまう事、そして一度踏み外した事により絶望的に元の世界へ戻るのを拒否されるのが怖くてたまらない。

ムゲは猫になる事により、猫としての視点を獲得し、人として見る世界と、猫として見る世界が違う事を知る。映画はファンタジーであるので、「人の世界と猫の世界は同じであるが見え方が違っている」ではなく、「そもそも違う世界が同じ空間に重なっている」という世界観になっている。そして、猫の世界には猫の世界のルールがある。それは何故そういうルールであるかは説明されないが、頑としてルールは存在する。人としてのムゲにルールは優しくない。人であるムゲがルールをうとましく思っても、ルールは頑強であり、ただ一人、反対する者がいるからと言って覆されたりはしない。異界には全く別のルールがあり、それはその異界では絶対である。その枠組が怖い。

▲人の町に重なって存在する猫の異界。

あと、主人公の義理の母の飼い猫キナコが猫らしい動きをするのがとてもいい。

私ちょっと頭がおかしいのかもしれないけど、主人公の心のドラマうんぬんは置いておいて、人の世界でしくじった主人公を迎え入れてくれるかに思えた猫の世界が、人の世界以上に主人公に優しくないという恐怖構造と絶望感にやられてしまった。だから、同じ、しくじった者達が主人公を助ける最後のピースになるのが甘口だけど嫌いではない。


【銭】
ヒューマックス池袋木曜日だけネットアプリ「EPARK」による割引があり、一般は700円安い1100円で1日1本鑑賞可能。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
泣きたい私は猫をかぶる@ぴあ映画生活

『水上のフライト』ユナイテッドシネマ豊洲12

◆『水上のフライト』ユナイテッドシネマ豊洲12

▲『ガンダム サンダーボルト』的な中条あやみ。

五つ星評価で【★★★真面目よのう】
漢字変換で『炊事用のフライト』って出てきたのはちょっと誤変換偉いと思った。
事故で半身不随になった走り高跳びの選手がパラカヌーの選手に転向する。
その時の痛みや辛さみたいなのを細かくトレースしてドラマ化。

泣き言を言ったり、メソメソすると、あの中条あやみでもブスいし、笑うとやはり可愛い。元々、高慢で取っ付きづらいという役なのだけど、観客がそういう性格を呑みこむ前に話がズンズン進んでしまうので、落ち込んだりする部分は「そら落ち込むわな」と納得はしつつも、彼女に対しては因果応報的な順番がただ回ってきたみたいに思えるのか、何だか同情しづらい。
母親役が大塚寧々。寧々ちゃん老けたなあ。父親は死んでいるので、中条あやみの愚痴は基本全てここに吸収される構成になるのが普通だが、程よく疑似親的な小澤政悦や擬似友達的な杉野遥亮が分散して肩代わりをしているので、大塚寧々はひたすらオロオロして、働いて、金は払う、と言う「世の父親」的なスタンスに立たされてしまった。なので、重要なのにずっと置き去りにされているように感じた。
陸上競技のライバルに高月沙良。こんなところに!(この娘好きなので贔屓してるの)。この映画の中ではキツイ顔しか見せてないが、実はホンワカした役も似あうのでちょっと残念。
杉野遥亮、都合よく身近な所にイケメンの装具士がいるって、びっくりラッキー。この彼の幼少時のエピには、主人公以上に同情してしまった。
パラカヌー側のライバルに富手麻妙。いきなり出てくるし、かと言ってラスボスでもないので、彼女自身の問題ではないのだけど、立ち位置的に損をしている。この彼女がキッチリ、スポ根的な一里塚として機能したなら、もちっと燃えたのではないか。あえて、そういうスポ根的な流れを絶っていたようにも見えるが、そこは「真面目さ」と両立させても、誰も困らん筈ではなかろうか。

という事でもちっと昔のスポコンドラマ風に理不尽な勢いで燃えてほしかった。

あと事故直後の転倒シーンで映る彼女の全身が脚が長くて実に綺麗。あー、やっぱ外人の血はええのう。


【銭】
ユナイテッドシネマ、金曜メンバーズデーで1100円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
水上のフライト@ぴあ映画生活

『ホテルローヤル』トーホーシネマズ渋谷2、『誰がハマー・ショルドを殺したか』下高井戸シネマ

同日鑑賞2本まとめてライトに。

◆『ホテルローヤル』トーホーシネマズ渋谷2

▲「セックス」の「セ」の字も知らなそうな波瑠。

五つ星評価で【★★★まとまってない】
なつかしや新宿ローヤル(何の関係もない)
直木賞受賞作の7本の連作短編を長編として一本に練り直したものらしい。さもありなん。出来の良い短編部分が幾つか突出してて1本の長編として見た場合、幹が細い。7本全部長編に反映してるのかは分からないが、冒頭の廃墟に写真を取りにくる話、父母の若かりし頃の話とかは割愛しても良さそう。ラブホならではの話としては5000円持ってSEXしにくる子沢山夫婦、どちらも捨てられた二人、の二つしかなく、この二つは見やすい。エピソードドラマにするなら、こういうのをあと三つくらい欲しかった。
主役の波瑠はこーゆー映画で脱ぎはしないだろうと思ってたが、まあ、そうだ。あーSEXに溺れる役とかやってほしい。性にカタクナな役はドンピシャ。スリップ姿が嵌る。ラスト、彼女の映画内での成長具合がどうも分かりづらいのが、この映画の難かしい所。伊藤紗莉のブーツ、伏線じゃないんかい。

登場人物の心情をなぞりすぎる劇伴がうるさい。


◆『誰がハマー・ショルドを殺したか』下高井戸シネマ

▲ぽすた。

五つ星評価で【★★★『ホテルローヤル』とは別の意味でまとまってない】
1961年のハマー・ショルド暗殺を皮切りにインタビューを進めていくうちに、どんどんヤバい話が掘り起こされてしまうドキュメンタリー。映画内でキッチリ事実認定が済んではいないが、おそらくこれらがフィクションという事もなかろう。コンゴ紛争でもウガンダ内乱でも遠くにいる白人の生活を豊かにする為に現地の人々の命がムチャクチャ軽く扱われた事を私達は知っている。


【銭】
『ホテルローヤル』:トーホーシネマズ火曜メンバーデー1400円。
『誰がハマーショルドを殺したか』:下高井戸シネマ火曜1200円均一。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
ホテルローヤル@ぴあ映画生活
誰がハマーショルドを殺したか@ぴあ映画生活

『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』トーホーシネマズ日本橋8

◆『ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-』トーホーシネマズ日本橋8

▲この顔写真が全部『罪の声』の宇野祥平の画像を加工されたものだったとしてもそんなに驚かない。

五つ星評価で【★★★お話はてんでダメだけど、キャラがマンガすぎてて愛しい】
綾野剛と北川景子の狂犬・番犬コンビがマンガみたいで、リアリティーが全くないけど好き。そして、ドクター・デス側もキャラが濃い。何か、その主要なメンツのキャラの濃さだけで勝負しながら、エンドロールのアレクサンドロスが掛かると、コーラぶっかけられた様な気持ち良さで騙されてグッドに終わった感じ。決して話が面白い訳でなく、ミステリーとしても「ミステリーなのか?」みたいな映画なんだけど、珍品として私はけっこう好きです。

・頭が悪いので、タイトルの『ドクター・デスの遺産』が何なのかよく分かりませんでした。
・何か捜査を見たという気が全然しない。
・安楽死の善悪に一歩も踏み込まないのは、逆に意外だった。
・ドクター・デスの意図はともかくとして、それで確実に幸せになっている被害者家族の存在とかはバランスとしてもう少し取りあげられてもいい。
・逆に、綾野剛の取り調べは人の拠り所を単に崩す事が目的で、その拠り所さえ崩れれば相手は何でもベラベラ喋るという考え方は逆洗脳みたいで主人公側の行動として認めづらい。取り調べに対しては「洗脳崩し」みたいな別の人員を配置し、かつ、現場の捜査チームと必ずしも仲が良くないという構造にした方が面白かったと思う(違う話になっちゃうけど)。
・ドクター・デス側のあの人の声がでかい田舎くさい演技が誰も反対とか抑止できなかったのかなあみたいなギリギリさで、私は好き。
・ドクター・デス側の別のあの人の澄み渡る感じの周りと空気感が違う演技もとっても好き。遠くから安楽死対象者にボディー・モーションで声を掛けるショットとか、周りと空気や時間が隔絶されていて、まるでその存在が幽霊のように見えてゾクゾクした。ラスト、主人公達と対峙する、ある場所に行ってからはごくごく普通なチンケな犯罪者にランクダウンしてしまったみたいで残念。
・綾野剛と北川景子以外の捜査チームが「ガヤ」としてしか機能していない感じ。いーよなー、あれで給料もらえるの。
・綾野剛と北川景子の二人が身体を二つに分けた『ドーベルマン刑事』みたい。どう考えても、こんな刑事は今、いないし、昭和にだっていなかっただろう。カリカチュアが濃すぎてマンガみたい。つーか、その溢れてる感じがきっと好きなのだ。逆に、そんな溢れている事に関して嫌う人もいるに違いない。綾野剛が崩れに崩れたダメ刑事なのは冒頭から分かっていて、それを調教師のように制する事が出来る北川景子が超かっこいい。俺も犬のように撫でたり、さすったりしてほしい(いや、それはしてほしいだろ)。その北川景子の手をスルリと抜けて、チョクチョク暴力刑事としてはみ出す綾野剛も目が離せなくて良い。何よりいいのは北川景子が綾野剛をビンタするシーン。あそこだけリピートで1時間くらい見ていたい。でもまあ、あそこがいいのは、刑事の相棒としての近さがキッチリ表現されているからだろう。ビンタしてまで自分を制止してくれる職場の同僚なんて普通はいない。化け物同士のバディー感、そこに目を引かれる。

PS 追加希望シーン
 北川景子の親の安楽死に対する用意を済ませ、スイッチ一つで
 親を死に追い込む事が出来るようになったドクター・デスが
 北川景子に要求を突き付ける。
 「そこにあるセーラー・マーズの衣装、それを着用しなさい」
ビンタシーン30分、着替えシーン60分でスピンオフ作ってほしい
(俺って奴はー!俺的には偉い!)。


【銭】
トーホーシネマズデーで1200円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-@映画情報のぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です(一部TBなし)。
ドクター・デスの遺産-BLACK FILE-@yukarinの映画鑑賞日記α

『野良犬』神保町シアター

◆『野良犬』神保町シアター
五つ星評価で【★★田宮二郎の波に乗れず】
特集「没後30年 異端の美学 大映の成田三樹夫」から1プログラム。
1966年、カラー、85分、初見。
田宮二郎が明るいとぼけた関西弁で宿無しの一匹狼を演じる「犬」シリーズの第7作目。『白い巨塔』のイメージが強くて、こういうライトなのやってたのは全然イメージなかった。まあでもシリーズ化されてるから世間的な認知も高かっただろう。それでも、私には田宮二郎が無理して明るいセリフを言ってるように見えてしまい、なるほど役者に付く固定イメージってよろしくないな、と。明るくて、とぼけていて、自分の中に強い正義感を持ち、女は好きだが、女に弱い。今なら大泉洋がやったら似あいそうな役だ。まあ、田宮二郎版は妙に童貞マインドが強いから、その辺は改変対象かもしれない。
田宮二郎が交通事故にあった少女の兄を探すが、その兄は刑務所から出所したばかりで、暴力組織とトラブルを抱えていた。兄の役が成田三樹夫で、一応、役柄上は拳銃を常備しているから「殺し屋」なんじゃないかと思う。冤罪を押し付けられようとしており、でも、殺し屋なら受けて相応なリスクじゃないかと思わなくもない。この成田三樹夫が妙に正義漢が強く、まだ悪に染まりきってないのに、顔がそういう顔だから配役されてしまったみたいな。なので、こちらも往年の成田三樹夫みたいな根っからのヤクザみたいな図太さはない。この役は浪岡一喜に似合ってる。

「マスゴミ」って表現が初めて使われた映画だったりしないだろうか?


【銭】
一般入場料金1300円から曜日割引で300円引いて全員1000円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
野良犬〈1966年〉@ぴあ映画生活
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