同日鑑賞3本をまとめてレビュー。
◆『俗物図鑑』ラピュタ阿佐ヶ谷五つ星評価で【★★★筒井康隆っぽい】
特集「桂千穂 血と薔薇は暗闇の映画」の1プログラム。
1982年、カラー、86分、初見。内藤誠監督。
頭のおかしな評論家がいっぱい出てくる『明石家さんまのホンマでっかTV』のアングラ版。
ああ、南伸坊って本当におにぎりだ。
巻上公一が主題歌書かなかったらもっと普通のイメージだっただろうに。
「なんだ、なんだ、奴等、逃げてるぞ」のセリフに続いて皮膚病評論家の逆光アップ。あそこがくだらないのにとても映画的なハッタリが効いてて好き。
一見軽い笑いのオブラードに包まれているのに、実体は正視に絶えないイヤな物って構造が実に筒井康隆の小説っぽい。
◆『暴る!』ラピュタ阿佐ヶ谷五つ星評価で【★★★★ある意味異世界召喚物みたいな映画】
特集「桂千穂 血と薔薇は暗闇の映画」の1プログラム。
1978年、カラー、69分、初見。長谷部安春監督。
善良なお嬢様ドライバーがふとした親切で故障車を助ける為に停車したらレイプされ、警察の取り調べではセカンドレイプ紛いの取り調べを受け、ムシャクシャしてたら優しく声を掛けてきた女に荷物泥棒に会う。町ぐるみ村ぐるみでお嬢様の尊厳を踏みにじろうとしてる感じが延々と続く。なんつか、大変に不条理で不快ではあるけど、ロマンポルノだから、そりゃあそんな事もあるだろうって飄々と進んでしまう。劇伴のモダンジャズがノリノリで、そのモダンジャズに主人公だけがノレていない。主人公は最初から最後まで「常識的な女性」のままであり、決して淫乱になったり、捨て鉢になったりしないのが変にリアルで、状況のおかしさが浮かび上がってくる。全員、男がセックスしたくてたまらない世界、そういう非常に地続きな異世界(異世界じゃない異世界)。この不快である筈の物語を世の男性は困った事にライトに楽しめてしまう。だってあまりに男尊女卑が徹底しすぎていてリアルな世界なのにリアル感が伴わないんだもの。これは女性が見たら、噴飯物で怒るんじゃないだろうか。怒らない女性ならレイプしても差し支えないだろうか。それは友松直之の
『囚われの淫獣』だ。ピンク映画を見に来る女性客に「やられたくて来てるんだろう」と劇中で暴言かましたあの映画とこの映画は繋がっている。
多分、問題なのは、男という男は狂おしくセックスが好きであり、そのセックス好きを自分と同じメンタリティーを女性に求めるのだが、女性って無条件にセックスが好きって訳ではないみたいよ、という事。いや、自分が男であるから、女側については推論の域を出ないけど、男で「セックスが嫌い」という奴はトラウマ持ちを除けば、いないと思う。「いや、俺は違う」と言う奴がいたら、そいつは単に嘘つきか聖人の生まれ変わりだ。野郎に関して言えば、普通はみんなセックス好きなのよ。この単純なすれ違いが世界を不幸にしている。男ほど「セックスが好きな女」って、物語の世界にしかいないんじゃないだろうか? 「そうじゃない」と言う人がいたら手を上げてほしい。手を上げたら、、、、、罠とかかましてるんじゃないよ、俺。
ラスボス的に主人公と対峙する女を犯したい系刑事の今井健二の「悪い顔」が怖い。
あと、真ん中あたりで登場する主人公の車が故障しているのを修理するナイーブそうなイケメンが本田博太郎(本当)。この彼がとてもいい人なのだが、この現実に似た狂った世界線の中では、成り行き任せでやっぱり彼女をレイプしてしまうと言う。でもまあ、これは本田博太郎に同情するよ、私は。別に本田博太郎とセックスしたい訳ではないけど。
という事なので、世の女性全てを敵に回してもみたいな映画ですが、私はこの映画たいへん面白かったです。
◆『ブックセラーズ』ヒューマントラストシネマ有楽町2
▲古書マイスターの一人。どんな人だかすっかり忘れてしまったが、アダムス・ファミリー味が強い。流石、古書マイスター。
五つ星評価で【★★★濃いメンツ】
米国古本業界の面々を描くドキュメンタリー。若者が少なく、お爺ちゃんお婆ちゃんが多い。そういうところってメンツがみな濃い。そういう濃い人達を撮れるのであればドキュメンタリーはまず成功を約束されたようなものだ。なので、これも特に問題なし。アメリカさんよりもブックオフが跳梁跋扈して、土地の相続問題などで壊滅的に「町の古本屋」がなくなった日本の業界の方が多分、作れば面白い物が出来ると思う。古書店街みたいに密集している所と古本チェーンを除けば、今、日本の古本屋はきっと日陰産業と言われている銭湯より少ない(ただ、本当のところ地方は知らない)。そして、古本チェーンですら、店舗を維持できなく閉店になる支店が相次ぐ。地獄かよ。地獄になるように文化を継承して、地獄にしてしまったのも又、自分達なのだが。
ネタ的にもう一言「セーラームーンともピーター・セラーズとも関係ない映画」。あー、セーラームーンのキャラクター達にピンク豹のコスプレをさせたい!(ただマモちゃんに関してはどうでもいい)
【銭】『俗物図鑑』:ラピュタ阿佐ヶ谷一般入場料金1300円。
『暴る!』:ラピュタ阿佐ヶ谷一般入場料金1300円。
『ブックセラーズ』:テアトル会員割引+曜日割引1100円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
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俗物図鑑@ぴあ映画生活・
暴る!@ぴあ映画生活・
ブックセラーズ@ぴあ映画生活