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『福田村事件』『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』

◆『福田村事件』ユーロスペース2

▲『田園に死す』のラストシーンのような二人。

五つ星評価で【★★★★畳みかける厭味】
ツイッターでの最初の感想(↓)

圧倒的なロケ力で日本の風景が綺麗。人を虐殺する時のBGMはやはり和太鼓が効く。諦めの悪いインフルエンサーが一人いるだけでみな頭がおかしくなる。その頭のおかしい人達に瑛太が掛ける一言が良い。東出くん女垂らしの役なのいいなあ。ピエールさんも頑張れ。

とてもキッチリ、こういう人やこういう人がいて、と、いろいろな立場を描いた後に、惨劇に突入する。しっかりした作り。この中で書き漏らしがあるとしたら、日本人が何故、朝鮮人を差別してもいいと考えるのかという思想的な点くらいだろう。扇動があるにしても、その扇動した者が何故、朝鮮人を嫌うかは明らかにされない。背景に朝鮮半島の統治があり、そこで恨まれるような事を日本人が積み重ねている事は暗に仄めかされるが、仄めかされるのみである。逆に、言うまでもなく朝鮮人は差別されて当たり前という基礎が元々日本人に備わっているのなら、それはとても怖い話だ。朝鮮人もしくは韓国人を嫌うという事に関して、映画の外、リアルな世界で現在どんどん機運が高まりつつある。それはつまらない生活のはけ口として為政者が用意した物のように思えてならない。韓国や中国が内政を整える為に反日を利用するのと同様の反中、反韓が仕組まれていると思う。瑛太が観客をもハッとさせるあのセリフを叫んだ時に惨劇は始まる。「おまゆう」と言うやつだ。あの流れのスムーズさが大変好ましい。ああ、それはしょうがないと観客に納得させる。それはそうだ。先に手を出した奴(と思われている奴)は後から反撃されても仕方がない。ただ、それを「民族」みたいな大雑把な括りで括るのはどう考えても正常ではない。

やはり、いいのは瑛太。全編通じて変化が描かれるのは彼と、彼のところの若者くらいだ。瑛太は汚い商売をしながらも恥を知っていて、他者から恥ずかしいと思われる事には諦めながらも憤りや苛立ちを感じている(推察)。井浦新も田中麗奈も豊原功補も東出昌大も現代人的なメンタリティーを持っていて、闇雲に扇動に乗せられる事はないが、瑛太は当事者なので剥き出しの悪意と徒手空拳の正論で立ち向かわなければならない。それが瓦解した時の映画的に美しいこと。

水道橋博士があまりにイメージが違うので彼だと気が付かなかった。よいキャスティング。

井浦新と豊原功補と水道橋博士が同級生で、井浦が反権力、豊原が従順を装いつつ意見するタイプ、水道橋博士が権力に盲従するタイプで打ち解けあえないのが皮肉。そんな中、東出昌大だけが肉体とちんちんだけの人と言うのも面白かった。

「ああ、あれだ結婚できない村の若者たちが奮闘する映画」
「それは山田村ワルツ。」


◆『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』ヒューマントラストシネマ渋谷2

▲どちらかと言うとまだ理性的な方の白人警官。

五つ星評価で【★★★★福田村事件みたいな映画】
一つのボタンの掛け違いや思い込みが惨劇を呼ぶ。
物語られる出来事の構造が『福田村事件』に似ている。一つの誤解から群衆が被害者を惨殺する。惨殺する状況に追い込まれる。後に、惨殺した者は罪に問われない。『福田村事件』は「事件」が意図的に仕組まれた節があるが、本作は突発的に起こった事件だ。それは「朝鮮人が井戸に毒物を投じたらしい」というデマ同様に、「貧乏な黒人が家のドアを頑なに開けないのは、何か隠している物があるからに違いない」という警察官の推測がある程度、確からしく通用する社会であるからで、衝突する者同士が常にヒステリーになっているというとても危機的な状況が断続的に発生していると言える。とても怖い。アメリカ怖い。
なので、『福田村事件』で、キッチリ用意した立派な土台はこの映画では省略される。リアルタイムで83分、物語の発端から誤解、殺害までコンパクトに描かれる。面白い。緊迫感凄い。
警察官の人が集まれば集まるほど、知恵ではなく、力で押し進む傾向が強まる。そういう部署なのだからしょうがない。
惨殺されたケネス・チェンバレンが意地を張らずに、すぐ警官を家に入れていたら最悪のケースは防げていたという風に捉える人も多いかもしれないが、彼等がギャングだったり、悪徳警官だったり、という可能性だって決して低くないのだ。だから、この物語に正解はない。今回は不正解だったが、バッドエンドしか用意されていないゲームかもしれない。

「ニガーだったら殺してもいいのかよ」
「たりめーじゃん」
これはそういう映画。


【銭】
福田村事件:ユーロスペース会員割引料金1200円。
キリング・オブ・ケネス・チェンバレン:テアトル会員割引1400円。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
福田村事件@映画.com
キリング・オブ・ケネス・チェンバレン@映画.com
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です
福田村事件@ノラネコの呑んでみるシネマ
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プロフィールだ

fjk78dead

Author:fjk78dead
ふじき78
映画を見続けるダメ人間。
年間300ペースを25年くらい続けてる(2017年現在)。
一時期同人マンガ描きとして「藤木ゲロ山ゲロ衛門快治」「ゲロ」と名乗っていた。同人「鋼の百姓群」「銀の鰻(個人サークル)」所属。ミニコミ「ジャッピー」「映画バカ一代」を荒らしていた過去もあり。

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