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ふじき78の死屍累々映画日記・第二章

場末にひっそり咲く映画日記。第一章にあたる無印はライブドアブログ

『キャタピラー』をパルコ調布キネマで観て、その強さに圧倒されるふじき☆☆☆(ネタバレあり)

五つ星評価で【☆☆☆強さには圧倒されるが好き嫌いは別】


戦争の怖さを真っ向から訴えるホラー映画。

いや、怖いよ。
予告編ほどじゃないけど
(予告の方が禍々しさが凝縮されてる)。

これ観た直後に戦争できちゃうとしたら頭がおかしい。

さて、下にトラックバック付けてるクマネズミさんの
「映画的・絵画的・音楽的」の中でも語られてますが、
主役の二人が物語の中でもっとコミュニケーションを
取るべきだったのではないか、と。

これは観ていてみんなが感じるジレンマだと思います。

「話せば分かる」

しかし、話さない。

話せよ!

みんな、そう思う。

私は障害があるからとか、物理的にとかではなく、
今まで話しかけた事がないから、
夫から妻に語りかけることが出来ないんだな、という風に見えました。
ここから、ちょっと私がこう見えたと言う与太話に付き合ってください。

昔の男です。

「風呂、メシ、寝る」しか言わずに済んだ時代の男です。
女子供には家父長として命令しか出さなかった時代の男です。
「ありがとう」「すまない」、感謝や謝罪の言葉が出てこない。
それを語ると彼は家父長でいられなくなる。
自ら順位を落とす事を認めた事になる。
これが、夫には耐えられない。
又、夫は自分が軍神であるし、天皇陛下(神)から勲章も賜ってるので
自分は元の自分以上、少なくとも家父長の位置にはとどまれると
思い込んでいる。

それが次第に壊されていく。

妻は自分の好む事をしてくれない。

妻は自分が嫌がる事さえ強要する。

輝かしい筈の軍功さえ、夫をさいなむ。
もはや、夫の中で命令を出し、暴力をもってしても
長たる自分に従わせる行為(=戦争)が正しい物かどうかの判断が
出来なくなってくる。

現実からも幻想からも責められる中、夫は男でさえいられなくなる。
夫は子供に戻る。

子供に戻る事が許されない世間の夫たちは
長たる自分に従わせる行為の帰結として、絞首刑に処せられる。
これが最も強い家父長制の根本(天皇制+GHQ)から命じられ、
細かい各々の家父長制の根を摘むものであったのは皮肉な結果だ。

かくして、日本の戦争は終った。
だが、強い者が弱い者を強制的に従わせる行為、
これらの被害は世界中に蔓延している。

日本は加害もしていれば、被害もしている。
日本から、戦争を国レベルで支え育んでいこうという
土壌は戦犯の絞首刑を機に、一応、幕を閉じたのだと思う。
だが、世界に戦争はなくならない。

元ちとせが歌う「死んだ女の子」の曲が流れる中
(これは強者に従わされた弱者の歌)、
いまだに、力があれば何をやっても許される
と言う考えを持つ者が残っているからだ
(そもそも世界的には減っていないのだ)。

そんな中、夫は死ぬ。
「戦争が終ったから」と解釈されているがそうだろうか。
夫は戦争の終結を知っていただろうか。

子供にまで戻った夫は喉が渇いたのでハイハイで水のみ場まで辿り着く。
そこで、今まで一回も見た事がなかった自分の身体を見るのである。
自分の醜さが分かった今、もう、子供ではいられない。
こんな醜い子供はいない。
しかも、自分は成長しないのだ。

今まで、軍神として祭り上げられてきた。
妻とセックスもしてきた。
それは家父長としての自分、勲章を貰った英雄としての自分に
常人以上の誇りを持っていたからだ。
妻が嫌がる筈がない。
自分は今まで通りだし、不自由はあるが、
勲章も貰い、今まで以上でもあるのだから。

だが、妻は怪物とセックスをしていた。
自分の真の姿を知った今、夫はもう自分を
どこにも置いておく事が出来ない。

だいたい、こんな話じゃないだろうか。


もう少し。

寺島しのぶが凄い演技だ。
夫役の大西信満も凄い。
荒れ狂う化物の表情が通り過ぎると、うっとり勲章や新聞を見詰める
無邪気な、邪心のない眼差し、あれは少年の目だ。
あの目にやられる。

夫は妻に精神的にDVを与えている。
にもかかわらず、妻が夫を許してしまうのは、
身体的有利さもあるが、夫があの少年の目を持って、
彼女を見詰めるからだ。
「だって、あの人は本当は優しい人だから」
あまたのDV加害者がみんな言われるセリフ。

優しくない人はいない。

戦争で人を殺そうが、その人を許したい人から見れば、
その人は優しい人なのだ。

だから、
優しくない人はいない。

であるなら、
優しい人もいない。

妻も夫にDVを仕掛ける。
この関係性の中では家父長制の順位が変わっただけで、
根本的には何も変わっていない。
どちらかが上になってはいけないのだ。

それから何十年も経ち、

家、村などの序列がはっきりしているがゆえに、
ドミノ崩しのように戦争賛成が起こりやすい。
そんな事はなくなった。

私は今の日本は腑抜けた、いい国だと思う。


なんだかまとまらない。
でも、いろんな事を語りたくなる映画である。


【銭】
パルコ調布キネマの会員割引で1000円。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
キャタピラー@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期トラックバックを付けさせて貰ってます。お世話様です。
キャタピラー@映画的・絵画的・音楽的
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キャタピラー@映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子公式HP

PS カラリストがいい仕事をしてると思う。
PS2 原本は乱歩の『芋虫』なんだろうけど、私には
 山上たつひこの『光る風』だ。
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