買いだめしておいたが、読むのがしんどくなって1回やめて、
今回読み直して、最後まで通すのは初になる。
なんつーかまずは壮絶な作画に唸らされる。
ここまで描けば気持ち良かろう、というレベルを通り越して、
ここまで描くのはノイローゼではないかという感じだ。
主人公に相対する盲目の美剣士、伊良子清玄が最終巻近くに、
作者から武士階級全てを否定する者としての立場をいきなりポーンと与えられる。
だが結局、遺恨の発端となる師匠の情婦いくと関係を結んだことに関しては
その釈明をさせはしない。
それは「愛」かもしれないし「欲」かもしれない、単に「過ち」かもしれない。
後付けで、その情通は何かのシンボルと捉える事はできるかもしれないが、
物語の中では、単にSEX、寝取りにすぎない。
別に武士階級(カースト)全てを覆す事を目的として
師匠の情婦を寝取った訳でもあるまい。
人間は一面ではない。
なら、一面にするような纏めをする素振りを最後にせず、
多面であるので、纏めようにも纏められないという
体裁にした方が良かったのではないか。
他方、主人公藤木源之助は多面であるところの人間を
武士という一面に収縮させようともがく悲しさがあった。
読み終わって終わったなあ。
大儀だったなあ。
という読みごたえが残る。
力作である。
その実、手を伸ばし過ぎて描かれなかったエピソード(ガマの話など)もあり、
気がかりだ。だが、これはこれで終わりであって話が続けられる事はないだろう。
化け物揃いの登場人物の中で主人公藤木の兄弟子、牛股が一番好きかなあ。
容姿が純粋に化け物で、化け物なのにロマンチックで一番人間として誠実だ
(一番誠実であるという事は社会機構が正常に機能していない中では
愚鈍に大きな被害を呑みこまなければならないという事だ)。
一番の化け物、虎眼を超越はできない、その超越を考えもしない。
なんと潔い。
こういういい位置にいる二番手三番手が話を面白くする。
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