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ふじき78の死屍累々映画日記・第二章

場末にひっそり咲く映画日記。第一章にあたる無印はライブドアブログ

『かぞくのくに』をギンレイホールで観て、絶対に立ち向かうと言う事ふじき★★★★

五つ星評価で【★★★★普通の人が巻き込まれる理由のない災厄と、それに対する姿勢それぞれ】


北朝鮮に住んでいる兄が25年ぶりに病気療養の為に日本に帰ることが許される。
広がる家族や知人への波紋、動揺。

なんて魅力的なキャスティングだろう。
誰もが説得力があり、誰もが映画の中で生きている。

兄はたどたどしい足取りで少しずつ日本を思い出すが、北朝鮮に残してきた妻や息子を人質に取られ、自己を犠牲にしてでも、耐え抜こうとしている。彼にとっては日本人としての彼を思い出してしまう事が自分や自分の家族を守る上でのハイリスクになりかねない。冷静に耐える男を井浦新が演じる。井浦新はいい意味で華がない。戦前の軍人役などがとてもよく似合う。何もないところで生きてきた男の原木っぽい硬い感じがよく出てる。

そのいかにも日本人である妹に安藤サクラ、彼女は国としての日本同様、朝鮮にも脅威を感じていない。だから、敵として楯突く事が出来る。まだ、自分自身が戦いのルールを定めれば相手がそれに従うという正攻法を信じている。
失礼ながら、安藤サクラは不美人だ。でも、ゆるーく兄貴を守ってやろうと自然に振る舞う感じと、ゆるーい笑顔がとても可愛い。

兄を理想郷と信じた朝鮮に送り出してしまった父に津嘉山正種。
凄い。地位のある在日朝鮮人にしか見えない。
朝鮮への信頼は自分への支えとして持っているが、
日本に長く暮らしているので立ち振る舞いが雑な感じだ。

母に宮崎美子。こんな演技ができる人だったんだと脱帽。
全身母。優しさも強さも。
朝鮮からの理不尽な対応に出くわした時、最善策を模索し、
誰よりも冷静で現実的な対処をする、母だ、実に母だ。
朝鮮や日本がどうであるかより、まず息子を考える。出来うることを考える。
宮崎美子の最近はもう本当に「母女優」なのだけど、
普通の家庭の「お母さん」を演じる事が多いので、
こんなに感情的な演技を見たのは初めてかもしれない。とてもいい表情だった。

叔父に僕らの諏訪太朗。
いつも通りの諏訪太朗だが、演技の上で歴戦の強者に負けてないのが嬉しい。
諏訪太朗が出てくると、どうにも血まみれで死ぬ気がするけど、そんな事もなかった。
叔父はむちゃくちゃスノップ。
生活態度から兄弟である津嘉山正種とは疎遠だが、
それでも集まると自然、家族になる。
朝鮮の血を持ちながらも、逆に持ってるがゆえに反発してなのか、完全に日本人。

兄の昔の恋人に京野ことみ。
ちくしょー、相変わらず可愛いなあ。
笑いながらふと言ってしまう「一緒に逃げようか」の基盤のない表面っぽさが、
実に日本人的だと思う。
彼と彼女だけを切り離して考えられる日本人と、
二つの国の家族全てを一緒に考えなければならない彼(皮肉な事に社会主義的だ)。
実現性は別として、京野ことみのあの一言は彼には嬉しいに違いない。
その言葉を彼は墓場で胸に噛みしめて眠るだろう、それは一つの福音なのだと思う。

兄の監視者役にヤン・イクチュン。
コメディーの線が強い『中学生円山』と比べるのは違うのだろうけど、
『息もできない』の粗暴な韓国人とも全く違う、静かな朝鮮人を演じている。
映画の中で、もっとも朝鮮の意向を体現する役でありながら、
彼自身も家族を人質に取られ、やらざるを得ないからやっている。
実に孤独だ。
同じ境遇にいる「兄」は彼を理解しているが、交流はないし、できない。
韓国映画での強い感情を削ぎ落して朝鮮人になった感じ。

衣装が素晴らしかった。
「衣装:宮本まさ江」がエンドロールに出ると
「ああ、やはりそうか」みたいに激しく納得をする。いい仕事をするのだ。

帰って来た兄の服はとても質素でシンプル。
妹の服もシンプルだが、それは豪華な服を削ぎ落としたデザインシンプルの服だ。
帰っていく兄の服は当たり前なデザインの立派なスーツ。
この選択が宮崎美子の母が選んだっぽい。

誰が何を考えているか不明のまま決定だけ下され、
その決定に対して全て従わなければならない。
見る事さえも適わぬ殿様が下した下知みたいだ。
それが物語だからではなく、現実に即しているというのは
本当に隣国として気持ち悪い。


【銭】
ギンレイホール会員証で入場。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
かぞくのくに@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
かぞくのくに@映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評
かぞくのくに@映画のブログ
かぞくのくに@映画的・絵画的・音楽的

PS 「かぞくのくにえ」
 井浦新として朝鮮に帰国した兄が田中邦衛として戻って来る。号泣必至。
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