ふじき78の死屍累々映画日記・第二章

場末にひっそり咲く映画日記。第一章にあたる無印はライブドアブログ

『甘い鞭』を渋谷シネパレス2で観て、何だか凄かったふじき★★★

五つ星評価で【★★★難しい。簡単にしないのはきっと理由があるのだろう】
  
不妊治療専門女医の奈緒子(壇蜜)は17歳(間宮夕貴)の時、
隣家の男に拉致監禁されて凌辱を受け、犯人を殺害して逃亡という過去がある。
昼は女医、夜はM嬢として働く彼女は、いつか感じた「甘い味」を
味わい直したいと思っている。

とても難しい。
だが、物語を読み解こうとせず、
壇蜜と間宮夕貴の身体だけを見ていれば、
それはそれで成立する。
そういう風に作ってあるのだ。
どこからどこまでが意図的なのか、仕掛けた罠なのかの判断が難しく、
これから書く事も、とんでもなくトンマな事を書いてるかもしれない。

一人の女性を三人の女優が演じる。
一人は成人した女性の壇蜜であり、
一人は若い頃に凌辱を受けた間宮夕貴であり、
一人は壇蜜の代わりに内面をナレーションする喜多嶋舞である。
喜多嶋舞をナレーションに据えたのは、
壇蜜にその技量と時間がなかったからではないかと邪推しないでもないのだが、
結果としては成功している。
壇蜜が間宮夕貴(未成熟な自分)と直接対面する場面があるので、
それを考えれば、壇蜜と間宮夕貴の対峙を確認している第三の自分として機能する
管理人格が喜多嶋舞ではないだろうか。
最後に現れる「謎の手」、あれも喜多嶋舞のものと一応推測する
(が、正直あれはよく分からない)。

加虐(S)、被虐(M)、エロス(E)、タナトス(T)が入り乱れる。
加虐は暴力の象徴であり、間宮夕貴は常に暴力にさらされている。
この間宮夕貴がさらされた暴力の味を再現するために
壇蜜は被虐をわざと受けているようである。
たが、被虐によってはかっての味は蘇らず、
加虐のポジションを与えられた壇蜜は徐々に我を忘れていく。
おそらく被虐時には段取を踏まえ忘我の域には達していなかった壇蜜が
加虐では段取を忘れ、忘我の域に達してしまう。
だが、ここでもまだ味は蘇っていない。
壇蜜はクラブの変質者によって殺害の危機に会い、
間宮夕貴が逆転に転じたように、変質者を刺し殺す。
ナイフを腹部に刺すのは、ペニスを男に挿入している暗喩だろう。
この時、同じ味を蘇らせたかどうかも分からない。
(ナレーションでわざわざ言っていない)
ただ味を蘇らせる為には少なくとも、被虐+加虐+プラスαが必要そうである。

間宮夕貴は身ごもっている。
後々、何も言われない所を見ると、この胎児は堕胎されたと思われる。
あくまで「子宮的に」という捻じれた状態であるが、
堕胎されるまでのエロス(生の悦び)が詰まった身体が間宮夕貴、
堕胎されて以後のタナトス(死の悦び)で空になった身体が壇蜜、と言える。
壇蜜は堕胎され、子供を持たないが、女医として不妊治療に取り組む事により、
他人の身体を使って子供を産む。
逆に言えば、他人の身体を使ってでないと子供を産む事が出来ない。
あのクリニックは彼女の子宮であり、
クリニックで「大量の仕事をする」のは彼女の出産に対する代償行為である。
それは脳内のみなので、彼女は身体にそれを刻み付けるため夜の仕事も行なう。

クラブは地下室と違い、広々と開放されたスペースである為、
そこで、彼女の求める膣内に精子を授かる行為は得られない。
そもそもSMと生殖は別の物なのだが、
地下室でSMに似た行為と生殖を同時に受けた彼女の身体はそれを混同している。
地下室は子宮の象徴である。
地下室の真ん中に大きな裂け目のような傷がある。
あれは女性性器であり、我々は女性性器の内部から、その裂け目を見ているのだ。
『胎児が密漁する時』みたいだ。
すべからく、全ての監禁ものは『胎児が密漁する時』がベースかもしれないが。
その子宮の内部で、間宮夕貴が凌辱者に対してナイフをペニスのように突き立てる行為は受精(妊娠)を意味しているのかもしれない。

壇蜜は開放された空間のクラブで被虐+加虐+エロス+タナトスの儀式を受ける事で、
17歳の自分を再現する。
その時に殺したかった父と母を殺し直す。
おそらく、父も母も彼女にとっては、彼女を拒む忌むべき外界に過ぎない。
(皮肉なことに彼女の立場は彼女を凌辱した男に似ている)
だから、あの時に立ち返って、彼女の外の世界全てを壊してしまいたい。
受精が彼女のピークであり、それを壊してしまった外界に対する嫌悪感がある。

そして、彼女の外の世界だけでなく、彼女の内の世界、彼女自身も殺したい。
受精によって「甘い味」を感じた自分を許し得ない。
その受精を堕胎によって破壊した自分を許し得ない。
だが、それでも最後の望みを繋いでくれたような存在がいたので、
彼女は自分を殺しきる事は出来なそうだ。
そういう映画じゃないか。
そうい映画なのか、どうなのか、よく分からない。
謎に満ちているが、謎の前に裸の身体がえんえん横たわっているので、
謎なんか解かなくても全く問題ないのだ。


いやあ、なんか凄い映画だった。

外面だけ見ると、
壇蜜が鞭で叩かれて、鞭で叩いて、ナイフでグサって、それだけの映画なんだけど。


壇蜜はよくやってた。まあ、大変だよなあ。風邪ひかないかなあ。心配の方向違うぞ。
それ以上に、間宮夕貴には惜しみない拍手を送りたい。
彼女の、もう「肉」にしか見えない身体が可哀想で、可哀想で。
彼女の「肉」にしか見えない身体に、浮かぶ人間としての表情が切なくて。
そして、映画の屋台骨を支えた喜多嶋舞にも目立たないよう拍手を送りたい。
誰だか知らないけどS嬢演じた彼女もよかった。ブスとか言われてるけど(笑)。


【銭】
日本アカデミー関係の特別興行で千円均一。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
甘い鞭@ぴあ映画生活

PS 壇蜜だよ。せんみつじゃないよ。ナハナハ。
 (マジレビューの疲労感に耐えきれなくなった)
PS2 せんだみつおが主役やったら嫌だなあ。若い時が工藤夕貴でもちょっと。
 団次朗と工藤夕貴がギリギリ妥協できる線だな(上から目線)。
 ・・・いや、団次朗でもダメだろ。
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