
▲美しい。そして全体にフェティッシュ(脚だけでなく草木や雨などの描写が)。
五つ星評価で【★★詩のように綺麗であるが、綺麗であるだけになってる気がする】
何とも美しい。
詩のように美しいアニメ。
それでいて描写は写実的なのだ。
一人の男の子と一人の女性のミステリアスな出会いと、
出あった事の意味を描く中編アニメ(46分)。
何とも美しく隙がない。
思えば、新海誠はそのデビュー作の『ほしのこえ』から
圧倒的な画力で見る者をねじ伏せてきた。それはまた今回もであった。
「綺麗だな」と思いつつ、ねじくれた映画観客の自分としては関心しなかった。
綺麗である事に病的になっていて、そこからはみ出る部分が感じづらい。
何かとても綺麗な書割を見せられている感じ。
全体に整っているが故に、血が通っていないように見えてしまう。
主人公の男の子は雨が降ると高校をさぼってしまう。
それは彼の弱さではなく、彼のスタイルなのだ(高校生の癖に!)。
サブ主人公の女性はトラブルを抱えている。
それは彼女の弱さと言うりは、バックボーンで描かれる社会の歪みのせいだ。
主人公は浮世離れしていて感情移入しづらい超人。
サブ主人公は凡人だが、ある理由から主人公に対して感情をぶつける事ができない。この構図はどちらかというとダメダメな女子が超然とした男子との出あいで自分の常識を変えられていく(そして恋愛に進んでいく)という少女マンガフォーマットなのだが、彼女側をあくまでサブ主人公としているので、そういう踊るような感情の流出もない。
ラストの一点で主人公の彼とサブ主人公の彼女は強い感情を一瞬だけ流出させる。
ただ、それはアリバイ作りのようであり、カメラアングルがロングで引いており、
強烈に強い感情が叩きつけられる状態ではない。
何故、そこまで抑制された作りにしてしまったのだろう。
そういう意図が明確にあったのかどうかは分からないが、『ほしのこえ』はとても綺麗で統制された世界観の中で、その世界観を打ち壊すくらい強烈な主人公たちのエモーショナルな叫びがあった。私はそこに感動したのだ。
この物語の主人公は眉目秀麗だ。
いや、物語に登場する誰もが醜い容姿を持っていない。
持つ事が許されていないかのように。
この物語の主人公が、顔に大きな火傷を負っているとか、
生まれつきの障害でビッコを引いて、まっすぐ歩けないとか、
そういうブザマと言うと口が悪いが、コンプレックスの強い人物だったら凄く物語に惹かれた気がしてならない。
私は調和が計られ美しく作られた箱庭よりも、その中央に鎮座する世界最大の花ショクダイオオコンニャクみたいな異形に惹かれるのかもしれない。▼これがネットで拾ったショクダイオオコンニャクの図。

【銭】
企画入場料金1000円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・言の葉の庭@ぴあ映画生活
PS トリウッド満席で立見席(と言いつつ椅子はある)で鑑賞。
昔、集中的に通っていた頃は、いつも一人とか二人みたいな入場者数だったので、
何だか実に感無量です。
PS2 新海監督作品はこれと『星を追う子ども』が未鑑賞。
新作の『君の名は。』は予告だけ見てると感情がただ漏れしそうな感じで
ワクワクさせられている。あー、早く見たい。
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