ふじき78の死屍累々映画日記・第二章

場末にひっそり咲く映画日記。第一章にあたる無印はライブドアブログ

『疑惑のチャンピオン』をギンレイホールで観て、これが面白いのは不正な主人公にでも観客が肩入れしてしまうからだふじき★★★

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▲チャンピオン

五つ星評価で【★★★濃い主人公と薄いその他】
自転車レース、ツール・ド・フランス7冠のチャンピオンはドーピングを行っていた。
これはもう映画の前提であり、やった、やってないを争う映画ではない。
主人公はドーピングを行って不正に勝利を勝ち取ってきた男。
であるにもかかわらず、観客は彼に強烈な嫌悪感を抱かない。

それはベン・フォスターが魅力的な俳優ということもあるが、
「ドーピング」という行為に関して観客はそれほど強い嫌悪感を持っていないのだ。
これが麻薬やドラッグなら別だが、映画内で推進派トレーナーが言ってるように
「乱用はいかん」だけで、ごくごく常用する分にはサプリみたいなもんにしか見えない。
あとは「フェア」かどうかの問題だけなのだが、映画はここを上手く切り抜けている。

チーム全体を汚染させ、それがそれほど特別な事でないように見せた。
みんなやっててもおかしくないような世界で今更「フェア」を言ってもせんないじゃん。
主人公がドーピングを行おうが行うまいが極限まで努力する姿を見せた。
ドーピング発覚リスク回避の為、更に努力しているように主人公が見えた。
ドーピング否定派の選手が必ずしも格好良く映っていなかった。

みたいな事から、諸手を振るって賛成する訳でもないが、
観客は多少の判官贔屓で主人公を見てしまう。

そんな中、明らかに間違っているのに、
主人公が正しい事を言っているメディアをやり込めてしまうのは底恐ろしいが痛快だ。
物凄く強い勝利への執着を持っている主人公、だが、彼は単なる我欲の強い男ではない。
彼には皆から賞賛の目で見られたいという欲求も高いが、
彼自身が勝利し続ける事で社会貢献しようという殊勝な面もあるのだ。
それに引き換え、彼の敵が手元に持っているのは凡庸な社会正義だけ。
「正義が勝つ筈だ」という緩い信念だけでは手負いの獣は止められない。

後半、引退してからは彼の軸がぶれてしまう。そこで初めて彼は負けるのだ。
この後半の失速そのものが又、ゲームの局面を見ているかのようだった。
故障を抱えたプレイヤーはその故障の波動が徐々に全体に伝播していき、
臨界点を越えると一気に決壊する。
決壊した彼はもう彼ではないので、映画はそこで終わる。
結局、彼は何に負けたのか。
彼は変容・変質してしまい、それに負けたのだ。
ドーピングをやろうがやるまいがターゲットに的を絞り、
先に進めるだけの彼に変化はなかった。
だが、コース外から仕掛けてくる敵をかわす為に動きを止め、
元の位置に戻るために向きまで変えた。
あの映画の世界の中では、ただ純粋に同じポリシーを貫く者が尊重されるらしい。
だから、主人公に詰め寄られてすぐ髭を剃ってしまう新聞記者は小物として扱われ、
外敵からの攻撃に同じ強さを維持できない第二選手はスポイルされる。
そして、世間から胡散臭げに見られながらも、全くブレてない
ドーピング推進派のトレーナーは最後まで悪びれもしない。
この世界観は、ちょっと最後の最後まで主人公が覚醒剤を肯定し続けた
『シャブ極道』みたいかもしれない。


【銭】
ギンレイホール、会員証で入場。
会員証失効期限が近づいてきたので10800円を支払い14か月更新。
あと、併映作品の『トランボ』は公開時に見ていたのでパスした。

▼作品詳細などはこちらでいいかな
疑惑のチャンピオン@ぴあ映画生活
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