『アイスと雨音』『たまゆら』『野球部員、演劇の舞台に立つ!』ユーロスペース2,1,1
- Date
- 2018/03/16/Fri 20:55
- Category
- 映画(FC2独自レビュー)
ユーロスペースで見た3本をまとめてレビュー。
◆『アイスと雨音』ユーロスペース2

▲予告で使われていた椅子ガッシャン手前。
五つ星評価で【★★★★傑作】
これは傑作。オーディションで選ばれ初舞台に立とうとする6人の少年少女に言い渡される舞台中止。それでも彼らは稽古し、当日、中止になった劇場に集まる。予告でも言ってる通り、74分ワンカット一発取り。詩を吟じる男からカメラがパンしていく中で演技が多重に重ねられ、そこに雷鳴のように椅子が床に叩きつけられるシーンが、予告に切り取られるだけあり、スリリングである。比較的にどのシーンもスリリングだと言えるが。
常に一つのカットに二つの意味が表裏入れ替わるという気狂い構成である。これは表面から見える筈のない横面や裏面などの他面を強制的に一度に見せてしまう絵画上のキュビズムを演劇的に展開させたみたいだ。Aくんは「Bくん」という役を演じる。映画内ではBくんを演じるAくんが各人の演技スイッチ有無のみで入れ変わる。常に彼がAくんであるかBくんであるかの判断を強いられる映画観客。いや、大体ニュアンスで分かる。おそらくわざと曖昧にして分からないような部分もあるにはあるが、それは問題ない。ただ、Bくんを演じるAくんが、映画の外ではやはりオーディションで選ばれた役者であり、その名前がCくんであるのなら、観客はBくんを演じるAくんを見ながらCくんの演技素養も見る事になる。この迷宮感が心地よい。
中央にいる6人は出番の多少でいい役、悪い役に分かれる。それは仕方ないだろう。現実の舞台でもそうだ。
たまに流れるように現われて詩を吟ずるMOROHA氏には目を奪われる。彼は「誰それ」というような役ではなく、舞台美術とか映画美術の一部である。とても大変な事を6人がやってる裏で舞台その物を異形の風体で成立させる。これは何と言う信頼されたオファーであろう。そして応えきっているMOROHA氏も凄い。
◆『たまゆら』ユーロスペース1

▲久保陽香たん。
五つ星評価で【★★★★手堅い医療ドラマ】
チラシの脇に控えめに書いてあるコピー
医療制度に翻弄される病院と優しい青年医師の運命を描く群像劇。
なかなか的を得ている。
医療制度の問題点が描かれる中で、人間ドラマもちゃんと描かれている。
ちゃんと面白いのだけど、予告見てもぼんやりとしか医療物という認識は持ててなかった。
脚本、監督を手掛ける土田ひろかず氏は現役の医師なのだそうだ。
病院の描写がリアルな訳だ。こういう部分をアピールすべきだと思うのだが。
映画の題名は『たまゆら』というあやふやな物。ポスターは主演女優の顔のアップがメインで医療の「い」の字も感じられない。
内容は地道にコツコツ、ベタだけど悪くない。面白いし、飽きない。これが一本目なら上出来だろう。
映画はいいけど、プロモーションが失敗した映画。
個人的にはこの直球の映画のネタを元に『ミナミの帝王』のようなコテコテのコンゲームみたいなドラマが盛り込まれたら面白いんじゃないかなあ、と思う。
主演の久保陽香はよう知らんのだけど、ホワンとしてていい。この後、ユーロスペースで売れない女優が泣き屋になる『見栄を張る』というのがほぼ連続上映されるので、これも見てみたい。
◆『野球部員、演劇の舞台に立つ!』ユーロスペース1

▲「に」じゃなくて「で」だと下ネタ。
五つ星評価で【★★★★手堅い青春映画】
どーしてどーして面白いじゃん。
こーゆーのが埋もれちゃうのは惜しいな。
キャスティングされた役者が大人も子供も端役に至るまでちゃんと役を生きてるのは立派。
主演の野球部のピッチャーでいやいや演劇部に派遣される渡辺佑太朗のガリガリに我武者羅に青臭く余裕がなく人と中々溶けあえない孤高なところが「ザ・青春」という感じで眩しかった。
そのピッチャーとぶつかる演劇部のじゃじゃ馬、柴田杏花もいいバランス。
名前分からんが野球部のキャプテンが憎めない奴でとても良かった。
あと、宮崎美子、林遣都、宇梶剛士の演技が奇をてらったりはしないが明確で気持ちがいい。
若手が若手として気持ち良く機能できるのは、本当脇を固める層がしっかりしてるから。
【銭】
3本ともユーロスペース会員割引価格で1200円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・アイスと雨音@ぴあ映画生活
・たまゆら@ぴあ映画生活
・野球部員、演劇の舞台に立つ!@ぴあ映画生活
◆『アイスと雨音』ユーロスペース2

▲予告で使われていた椅子ガッシャン手前。
五つ星評価で【★★★★傑作】
これは傑作。オーディションで選ばれ初舞台に立とうとする6人の少年少女に言い渡される舞台中止。それでも彼らは稽古し、当日、中止になった劇場に集まる。予告でも言ってる通り、74分ワンカット一発取り。詩を吟じる男からカメラがパンしていく中で演技が多重に重ねられ、そこに雷鳴のように椅子が床に叩きつけられるシーンが、予告に切り取られるだけあり、スリリングである。比較的にどのシーンもスリリングだと言えるが。
常に一つのカットに二つの意味が表裏入れ替わるという気狂い構成である。これは表面から見える筈のない横面や裏面などの他面を強制的に一度に見せてしまう絵画上のキュビズムを演劇的に展開させたみたいだ。Aくんは「Bくん」という役を演じる。映画内ではBくんを演じるAくんが各人の演技スイッチ有無のみで入れ変わる。常に彼がAくんであるかBくんであるかの判断を強いられる映画観客。いや、大体ニュアンスで分かる。おそらくわざと曖昧にして分からないような部分もあるにはあるが、それは問題ない。ただ、Bくんを演じるAくんが、映画の外ではやはりオーディションで選ばれた役者であり、その名前がCくんであるのなら、観客はBくんを演じるAくんを見ながらCくんの演技素養も見る事になる。この迷宮感が心地よい。
中央にいる6人は出番の多少でいい役、悪い役に分かれる。それは仕方ないだろう。現実の舞台でもそうだ。
たまに流れるように現われて詩を吟ずるMOROHA氏には目を奪われる。彼は「誰それ」というような役ではなく、舞台美術とか映画美術の一部である。とても大変な事を6人がやってる裏で舞台その物を異形の風体で成立させる。これは何と言う信頼されたオファーであろう。そして応えきっているMOROHA氏も凄い。
◆『たまゆら』ユーロスペース1

▲久保陽香たん。
五つ星評価で【★★★★手堅い医療ドラマ】
チラシの脇に控えめに書いてあるコピー
医療制度に翻弄される病院と優しい青年医師の運命を描く群像劇。
なかなか的を得ている。
医療制度の問題点が描かれる中で、人間ドラマもちゃんと描かれている。
ちゃんと面白いのだけど、予告見てもぼんやりとしか医療物という認識は持ててなかった。
脚本、監督を手掛ける土田ひろかず氏は現役の医師なのだそうだ。
病院の描写がリアルな訳だ。こういう部分をアピールすべきだと思うのだが。
映画の題名は『たまゆら』というあやふやな物。ポスターは主演女優の顔のアップがメインで医療の「い」の字も感じられない。
内容は地道にコツコツ、ベタだけど悪くない。面白いし、飽きない。これが一本目なら上出来だろう。
映画はいいけど、プロモーションが失敗した映画。
個人的にはこの直球の映画のネタを元に『ミナミの帝王』のようなコテコテのコンゲームみたいなドラマが盛り込まれたら面白いんじゃないかなあ、と思う。
主演の久保陽香はよう知らんのだけど、ホワンとしてていい。この後、ユーロスペースで売れない女優が泣き屋になる『見栄を張る』というのがほぼ連続上映されるので、これも見てみたい。
◆『野球部員、演劇の舞台に立つ!』ユーロスペース1

▲「に」じゃなくて「で」だと下ネタ。
五つ星評価で【★★★★手堅い青春映画】
どーしてどーして面白いじゃん。
こーゆーのが埋もれちゃうのは惜しいな。
キャスティングされた役者が大人も子供も端役に至るまでちゃんと役を生きてるのは立派。
主演の野球部のピッチャーでいやいや演劇部に派遣される渡辺佑太朗のガリガリに我武者羅に青臭く余裕がなく人と中々溶けあえない孤高なところが「ザ・青春」という感じで眩しかった。
そのピッチャーとぶつかる演劇部のじゃじゃ馬、柴田杏花もいいバランス。
名前分からんが野球部のキャプテンが憎めない奴でとても良かった。
あと、宮崎美子、林遣都、宇梶剛士の演技が奇をてらったりはしないが明確で気持ちがいい。
若手が若手として気持ち良く機能できるのは、本当脇を固める層がしっかりしてるから。
【銭】
3本ともユーロスペース会員割引価格で1200円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・アイスと雨音@ぴあ映画生活
・たまゆら@ぴあ映画生活
・野球部員、演劇の舞台に立つ!@ぴあ映画生活
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