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ふじき78の死屍累々映画日記・第二章

場末にひっそり咲く映画日記。第一章にあたる無印はライブドアブログ

『パンク侍、斬られて候』丸の内TOEI②、渋谷TOEI②(ネタバレ)


▲バックのピンクが映画の特殊効果を思い出させて綺麗。

バリバリネタバレするで

五つ星評価で【★★★,★★★★見直してやられた】
見る前にまず、大当たりか大外れかのどちらかだろうなあ、と思ってた。石井岳龍はそういう監督なのである。近年更にその傾向が強まってる深まってる。だから、そんな石井岳龍に金を渡してこんな怪作をホイホイ作らせてしまった東映は流石にカタギの映画会社じゃないと言おうか、それでこそイカガワシイ見世物屋風情と言おうか、いやいやいやいや褒めてるんです。まあ、興行なんて博打ですから。 当たる時もあれば外れる時もある。石井岳龍の映画で当てようなんて、それがそもそもの矛盾だもの(そこまで言うのもどうか)。

で、鑑賞一回目。予告編に流れるロック同様、音楽と絵がかっけーくて、頭から尻まで目茶苦茶で、決してそんなに嫌いじゃないけど、褒めるのは恥ずかしい。だって前半の中弛み具合が半端ないし、主役の綾野剛もかっこ良くなければ、横に立つ北川景子もダンスシーンを除けばそんなに良くないんだもの。しかも、ダンスシーンは予告で見た所以上の尺はないし。
うん、褒めつらい。褒めづらい。
永瀬正敏が猿やってるからって褒めないでしょ、そこは(ナレーションは味があって変に良かった)。
だから、ツイッターでの感想も、北川景子がやってくれるなら「パンツ侍」が一番見たい、とか書いた。それはそれで心の声だ。見たいよ、北川景子のパンツ侍。いや、パンツがダメならノーパン侍でもノーパン始球式でも一向に構わん。ノーバン始球式はどっちかと言うといらない。

何か、見逃したり見落としてる気がして(実際中弛む箇所でちょっと寝落ちしているが)、前売券が値下がりしてたのでもう一回見に行った。 そしたらドンピシャ面白かった。別にヤク打って見に行ったとかじゃねーよ。
次、二回目見た後のツイッター感想。

物凄く酷評してる人もいる「パンク侍」再鑑賞なう。メタで面白い。最初に殺されるのは原作者の町田康。そしてその子供(物語)が名前通り物語の最後になる。浅野忠信が最後にいたのは便器だろうし、次のカットで綾野剛が水を飲んでるのは便器から。猿は形而上。バカは形而下

混乱しながら法則性が発見できてとっても楽しい状態。
前回同様、中弛みはあった。綾野剛が豊川悦司に丸め込まれて腹ふり党を再起させ、それが東出昌大の藩に雪崩のように押し寄せてくるまでは何だかテレンコテレンコだらだらで停滞してる。すっ飛ばしたい。
ただ色々な構造に理由を付けて解釈していくと繋がって面白い。
とてもメタな話だが、物語の冒頭で主人公に斬られるのは原作者の町田康。最初っからオリジナルを全否定する宣言の体現。そら、パンクだなあ。
そして、その斬られた原作者に寄り添っていたのが目が見えない振りを強要されていた「ろん」と言う少女。町田康の娘である。町田康が作者なら、この娘はこの物語その物と言ってもいいだろう。
では「ろん」とは何か? 麻雀の「ロン(終了宣言)」ではないか? 
物語を作る世界創成の神である父(町田康)に寄り添う物語の成り行き「完(ろん)」。最後の最後で主役にして世界を冒頭から破壊した最大の異物・綾野剛の命を奪い、物語を終了させる。物語を破壊する者が物語から斬られて「斬られて候」と名付けられるのが、この物語。とは言うものの、この「ろん」自身は面白くない。「ろん」は美貌だけの女、形だけの女なのだ。だから、形通りに終わりを呼ぶだけの役目だ。

実質の終わりを引っ張ってくるのは浅野忠信演じる危ない男、茶山半郎。ちょっと訛って「半ろん」。半分終わり。「腹ふり党」の元党首をも裏で操っていた幹部。この男のみが物語の中で解脱して、ステータスをあげる。他の者は置き去りになるか、死して退場するか、彼の養分になる中、それら全ての事象を自分に使いきって、神の様式便所にまで辿り着く。その先の事は誰にも分からない。それはこの物語の中の事ではないからだ。神の便所から流されてしまうかもしれないし、神の便所から神の尻の穴に逆流するやも知れぬ。洋式便器にいる浅野忠信のカットのすぐ直後に便器らしき物から水を飲む綾野剛のカットに繋がるので、浅野忠信もまた、綾野剛に人知れず吸収されたのかもしれない。

この物語で戦うのは二つの勢力、猿と腹ふり党である。腹ふり党はともかく梵我一如の為には腹を振って踊るという謎の集団である。猿は猿としか言いようがない。腹を振るというのは腸を刺激して快便に努めるという事であろう。この教義は下世話に見えて実はそんなに馬鹿にした物でもない。弱肉強食の頂点に立つ者は、言って見れば糞をひる事が世界に対しての仕事だ。この集団の中でトップに立つ者が実は綾野剛が差し出した間者である士分、染谷将太演じる幕暮孫兵衛である。彼がトップに立つのは「腹ふり党」が「腰振り刀」に準じ、実は弱肉強食の頂点、更に士農工商の頂点、惰眠を貪り糞をひると言う侍の属性とリンクするからではないか。つまり、腹ふり集団内で唯一の存在に見える侍こそ、特に惰眠を貪ってきた侍こそ、腹ふり党トップの資格に値する。この腹ふり党は形而下(肉体)から解脱に至ろうとするチーム。手塚治虫版ブッダでいうところの苦行から解脱しようとするチームだ。

それに敵対するのは猿。
直感的に感じるのはどう見ても腹ふり党より猿の方が知的である。更に侍集団より永瀬正敏演じる猿の方が知的である。おそらく映画を見ている観客の誰よりも永瀬正敏の猿の方が知的である。恐るべし猿。という訳で、猿は形而上(精神)から解脱に至ろうとするチーム、という事にしておこう。猿はどこかに辿り着いたようであったが、それがどこであるかは分からない。

知恵がある者がその知恵から世界を再認識する時、俗界に蠢く有象無象が自分の身一つで世界を捕えようとする時、彼らはそれぞれ別の次元に転生する。その餌になる凡人凡夫達はただ斬られて命を捨てるばかり也。

役者で面白いのは異常な外見と内面をさらけ出す浅野忠信。
気持ちいいくらいにバカ染谷将太この二人が白眉。

綾野剛が剣を振るうと背景が変わるシーン、激カッケー。

豊川悦司はパンク侍でも、パン粉侍でもない。
豊川悦司はうどん粉侍なのである。


【銭】
『パンク侍、斬られて候』(1回目):6回分東映株主券2000円をチケット屋で買って6回分のうち1回(6枚目)。
『パンク侍、斬られて候』(2回目):前売券をチケット屋で650円でGET。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
パンク侍、斬られて候@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です(一部TBなし)。
パンク侍、斬られて候@お楽しみはココからだ
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コメント

傑作

これは痺れましたね。
『エル・トポ』を思わせるところもあって、たいへん私好みでした。

  • 2018/10/16(火) 22:21:42 |
  • URL |
  • ナドレック #cxq3sgh.
  • [ 編集 ]

Re: 傑作

こんちは、ナドレックさん。

> 『エル・トポ』を思わせるところもあって、たいへん私好みでした。

「面白い」「つまらない」で二分すると「つまらない」側でも、しょうがないと思うのだけど、ところどころ気が狂ってる部分が散見され、そんなん映画として魅力的やんと思ってしまうのを止められなかった。

  • 2018/10/17(水) 01:11:41 |
  • URL |
  • fjk78dead #-
  • [ 編集 ]

こんばんは

どう感想を書いていいのかよくわからない映画でした。
個人的には一回目のふじきさんのように
合わない、と感じたのと、
染谷さんのはじけっぷりが面白いくらい。
北川景子さんはもう少しはじけてもよかった。

  • 2019/05/07(火) 20:13:41 |
  • URL |
  • maki #jQTfdwCM
  • [ 編集 ]

Re: こんばんは

こんちは、makiさん。

> どう感想を書いていいのかよくわからない映画でした。

理屈で考えると全然ダメなんだけど、色や音が気持ちいい部分がいっぱいある。ロックだったりパンクだったりするんだよね(しないダラダラした部分が多いのが問題なんだけど)。

  • 2019/05/09(木) 02:00:24 |
  • URL |
  • fjk78dead #-
  • [ 編集 ]

何か中途半端な屁理屈だなあ、と思いましたが、士農工商で、惰眠を貪っていたのは、序列的には最下位の商人ですよ。農耕国家ですから、侍は農民の増産を期待する他になく、三ぴんと呼ばれる小役人の収入はごく僅か。中国では銅臭政治と言われたりしていますが、所謂、買官を行っていたのも豪商。封建時代で、長男以外の子供は、跡を継げないわけですから、収入のある侍の身分を買い与えたわけです。最も、田沼意次のような賄賂政治、まあ、明らかな濁流の御仁なんですが、商人に近い侍というのは、腐敗していて、一方で、侍の権威を高めた改革者などの時代というのは、庶民には厳しい時代だったそうです。

  • 2019/05/12(日) 20:30:30 |
  • URL |
  • 隆 #dmyWwwmE
  • [ 編集 ]

補足です。

江戸時代は、鎖国で内需経済ですから、外征による領土拡大は望めず、収入に見合った生活を保つだけで精一杯の侍は、喰わねど高楊枝、というように貧しく、特に薄給の三一は、内職頼りだったようです。内需には、軍役に含まれる参勤交代が経済効果があったのですが、関東に近い譜代などの親密な大名も、遠方の外様も街道を通るわけですから、江戸という中心地に近い地域ほど、潤ったと思います。これも、江戸と京都の二都体制、二極構造ですから、京都は産業で繁栄し、高度技術製品などを、天下の市場であった大阪に輸送し、繁栄していたそうです。

ふじき78さんが書かれているように、侍も、近親の仲間同士で協調し合い、馴れ合いもあったわけですから、政道や策に対する、最終結論的な、リーダーシップの決断は生まれにくく、それを堕落と言うのには賛成致します。

荒らしになりますので、これぐらいにしておきます。

  • 2019/05/12(日) 22:01:00 |
  • URL |
  • 隆 #oBCpLLHo
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

こんちは、隆さん。

映画が屁理屈で出来てるから、感想も屁理屈でいいでしょ。コメントも屁理屈で通します。
江戸も中期になると、すっかり揉め事で剣を抜くとかなくなるので、藩単位に軍事行動が出来るなんてのは、多分、戦国時代に毛が生えた程度の江戸前期でしょう。信長、秀吉の策によって商人が力を貯めている時期だから、この辺りでは例外的な豪商を除き武士がまだ強い。逆らえば国が全滅するから徴収するという気風がまだ残ってる筈ですから。
藩単位の財政で言えば特産品が生める所と生めない所に格差が生じたんじゃないかしら(ああこれまんま『おんな城主 直虎』だ/赤穂の塩とか藍染の藍とか)。基本、計画経済で共産主義国家が全国にいっぱいあるようなもんだから、トップの頭がいい所が勝つ。まあ、そういう武士のソロバン的な奸略ももちっと戦国の気風が収まってからかもしれん。

この辺り、特に調べず想像力だけで書いてるけど、『パンク侍』でそんな綿密な世界観が構築されているような気はサラサラしないから、当たっていても、外れていても、どっちもありじゃないか?

  • 2019/05/13(月) 00:22:42 |
  • URL |
  • fjk78dead #-
  • [ 編集 ]

重ねての投稿失礼します。

腹ふり党と猿が、五分で戦っているというのは、構図としては、人と猿の戦いで、そこに元はといえば、守るべき領民である党を観る侍もまた、ライバルに当てはまる、と思います。江戸時代の侍は、戦争技術を除いたら公務員であって、果たして、官僚制に届くほどの力量があったのか、上も形式的で、リアリストで無かったのではないか、と思います。

猿の勢いも凄いですが、十之進も商業主義というか、渡世慣れしてるというか、平和な時代の侍は、豪商を嫉妬したり、一方で支配したりで、信仰的な信念よりも、実利的で、あんなものでは無かったのかな、と思いました。

Re: タイトルなし

こんちは、隆さん。

> 猿の勢いも凄いですが、十之進も商業主義というか、渡世慣れしてるというか、平和な時代の侍は、豪商を嫉妬したり、一方で支配したりで、信仰的な信念よりも、実利的で、あんなものでは無かったのかな、と思いました。

ちょっと前まで百姓が落ち武者を殺して鎧兜身ぐるみはがして売ってた時代だった訳だから、十之進一人がそんなに経世家だった感じでもないのではないでしょうか? 割とトヨエツに軽くあしらわれてしまうのもトヨエツこういう手合が初めてじゃないのかも。

  • 2019/05/15(水) 00:33:01 |
  • URL |
  • fjk78dead #-
  • [ 編集 ]

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