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『愛人』新文芸坐(ネタバレ)

特集「市川崑 初期ライト・コメディの誘惑」の1プログラム。

◆『愛人』新文芸坐(ネタバレ)
五つ星評価で【★★★★面白いけどコメディかしら】
1953年、白黒、86分、初見、市川崑監督作品。

※ 映画の結末などに関するネタバレ表記がありますのでご注意ください。

「人」と「愛」についての映画ではあるが、タイトル『愛人』はないだろ。『もらい泣き』とかが合うと思う(まあ、そんなの今更な話であるが)。

父子家庭(父、長男、長女)と母子家庭(母、長女)があって、
父親と母親が結婚する。組み合わせが多少違うが、この中で子供同士が好きになるというのは『思い、思われ、振り、振られ』や、『ライアー×ライアー』みたいなパターン。両方とも、義理でも兄と妹は気持ち悪いという気持ちが恋を邪魔する話ですが、1953年のこの映画ではそういう禁忌はほぼ見られない。少女マンガの皆さん、考えすぎじゃないですか? もっとも、そういう考えの作品は他にも幾つもあるから、今はそれが正解なのかもしれない。そして、それが正解なのは、恋をする青年Aくんと少女B子ちゃんの父親が実は同一人物で二人の血は繋がっていた、「がっびーん」みたいな横溝正史の金田一物を市川崑が撮っていて、こんなに二人が呼び合うのは恋人だからじゃなく兄妹だからかも、みたいなトラウマを秘かに植えつけられていたからだったりとか(いやいやいやいや、それは飛躍が大きすぎる)

父子家庭(父(菅井一郎)、長男(尾棹一浩)、長女(有馬稲子))
母子家庭(母(越路吹雪)、長女(岡田茉莉子))
同居している父の弟子(三國連太郎)

尾棹一浩は父母の結婚前から岡田茉莉子にアチチ。
有馬稲子と岡田茉莉子は三國連太郎にアチチ。
菅井一郎が三國連太郎と岡田茉莉子、有馬稲子のどちらかをくっつけようとする。
岡田茉莉子、有馬稲子とも互いに相手を推す。それは三國連太郎の気が自分にない事を知っているから。
岡田茉莉子は三國連太郎に気がありながら尾棹一浩から好かれているのでそこに落ち着こうとするが、尾棹一浩は三國連太郎を差し置いてその位置に座るつもりはない。
最終的に、三國連太郎の意思が問題になるのだが、三國連太郎は秘かに越路吹雪にアチチなのである。

という建て込んだ関係での恋愛頭脳戦が繰り広げられるが、晴れ晴れしいのは、悩んだ結果、何一つ誰一人として恋が成就しないからかもしれない。みんなメソメソ泣いて終わり。折からも雨が降ってきて、新しく家に来た小学生みたいな女中さんが洗濯物を取り込みに外に出る。今、雨が降るなら明日は晴れるだろう。そんな風に思うのは考えすぎか。

幽霊とかは出ないのであるが、あちこち故障している豪奢なドイツ風邸宅の家相が悪いのかもしれない。と言うのは、家を出ようとする三國連太郎と尾棹一浩が悩みが解けたようにスッキリし出すからだ。仮に、あの家に呪いがあるのなら、この後、一人年の離れた菅井一郎がボケて誰も彼もが越路吹雪に見えてしまい、新しく来た女中も合わせて女性全員を抱いてしまうという流れを思い付いたが、それは怖すぎる。恋は軽い、気持ちだけでも、身体が付いていても。恋の付かないセックスは重い。やはり、三國連太郎も尾棹一浩も家を出るしかないのかもしれない。

ツンと澄ましている訳でもないのに、四六時中悩んでいる岡田茉莉子は損な役。あんなにデザインがいい顔なのに。凄くつまらないお嬢様に映ってしまっている。
正しかろうか間違えていようが人の事より自分の事と突っ走る有馬稲子の百面相がメチャクチャ可愛くてたまらん。「そんなん子供」と言われれば、まあ、そうであるのだが。子供な所がいいのよ。(*´Д`)ハァハァ
そして、三國連太郎が本当に三國連太郎で変わらない(そりゃあ三國連太郎だからなあ)。映画の中では普通の映画助監督役だが、三國連太郎自身は津山十三人殺しとかをやってそう。みんな霞を食う仙人みたいなキャスティングなのに、三國連太郎だけバリバリ実体みたい。と言うか、三國連太郎以外は社会の上級層で頭脳労働をしているエリート、彼だけが身体を動かして労働する肉体労働者なのだ。頭が身体に負ける構図ってのもなかなかコメディー・ライクだ。

しかし、これがコメディーなら『犬神家の一族』がコメデイーでもいい。市川崑の描くコメディーというより映画にジャンルの境界線がない気がしてならない。
そんな気がちょっとだけしてしまう。


【銭】
ラスト一本割り950円(会員割引)。併映の『プーサン』は割と近くに見てたので見なかった。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
愛人@ぴあ映画生活
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コメント

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お約束

♪尽くして泣きぬれてそして愛されて♪
テレサ・テンはどこに出てました?

もう一丁

「ジェーン・マーチ」の記事がないぞ。
あれ、これは邦題か。

Re: お約束

こんちは、先輩。

> ♪尽くして泣きぬれてそして愛されて♪
> テレサ・テンはどこに出てました?

時代的にはカバーしててもおかしくないけど、テレサ・テンは私の守備範囲外です。

Re: もう一丁

もういっちょこんちは、先輩。

> 「ジェーン・マーチ」の記事がないぞ。
> あれ、これは邦題か。

ググった。もうすぐググる。
「ラマン」の方が通りがいいというより「愛人ラマン」で一つのタイトルみたいなイメージ。
あの三つ編み女子の名前は忘れてた。ジェーン・マーチって白黒時代のハリウッド女優っぽい名前なんでもっと昔の人かと思ってた。
プロフィールだ

fjk78dead

Author:fjk78dead
ふじき78
映画を見続けるダメ人間。
年間300ペースを25年くらい続けてる(2017年現在)。
一時期同人マンガ描きとして「藤木ゲロ山ゲロ衛門快治」「ゲロ」と名乗っていた。同人「鋼の百姓群」「銀の鰻(個人サークル)」所属。ミニコミ「ジャッピー」「映画バカ一代」を荒らしていた過去もあり。

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