『朝が来る』ギンレイホール(ネタバレ)
- Date
- 2021/05/15/Sat 00:05
- Category
- 映画(FC2独自レビュー)
◆『朝が来る』ギンレイホール(ネタバレ)

▲ジオンのMSゴックの後ろ姿みたいだ。
※レビュー内にネタバレを含みます。
五つ星評価で【★★★★恐怖映画かと思っていたら】
見終わってドッと疲れたが、いい映画を見た後の疲労感は満足を伴ってるので心地よい。
それにしてもポスターのメインビジュアルが怖過ぎてホラー映画かと思った。
「あなたは、誰ですか。」子供を奪い返しに来た実の母親の筈なのに、その容姿は自分達の記憶とあまりにも違う。
予告編でも使われているが、この「誰」が誰だか分からないのが予告では怖い。
おま、そのテンポどうにかならないかという感じでゆっくりゆっくり語られる物語の中で、
①最初に子供を育てている育ての母と社会との隔絶の危機が語られる。
②そこで、夫婦がその育ての子を得るまでの子供入手の労苦が思いだされる。
③その子供を産んだ産みの母に話はスライドし、何故、人に譲渡する子供を産む事になったのかが恋の始まりから語られる。
④恋の始まりから恋の終わり、出産で出会った素晴らしい大人たちとの出会いと別れ、世間の尺度でしか自分を測れない家族・親族との不和。そして、自暴自棄になって家出した先での転落の日々。
育ての親が子供の為に社会と対立しながらもギリギリ危機を乗り越えたのに反するように、産みの親は社会から隔絶される。もう対比が痛い。
育ての親の半生記の後に、産みの親の半生記が凄く気紛れに語られる。とても、計算して作られていようには見えない。おそらく監督がもっと社会性を逸脱している園子音のような人物だったら、産みの親を育てた親の半生記、譲渡組織を作って、瓦解させた浅田美代子の半生記すら語り出していたかもしれない。まあ、じっくり描くのだけど、その分、長いのよ。育ての親から産みの親に行って、育ての親の元の時間で親同士が再会するのだけど、産みの親パートが長くて、話が戻った時にどこに戻ったのかがちょっと分からなくなってた。子供が育つ3~4年の間に産みの親は10年くらい心労で老けるのである。
不幸が人の容貌や性格までも変えてしまう。金を脅しに来たのは情報を知った別人ではなく、実の親だった。この時点で終わってしまえば、この物語は「安達ケ原の鬼」のようなホラーである。だが、産みの親はかって自分の子供に手紙を書いており、その中の一節、消しゴムで消した後を育ての親が気づいてしまう。
「なかった事にしないで」
ここで泣いてしまう。本当は「なかった事にしないで」と強く言い張りたいが、それを言う事で子供が幸せに生きられないかもしれないと思って、静かに身を引いて消しゴムを掛けた産みの親の優しさに気づくのである。
そして、その「なかった事にしないで」に気づいて、あとあとの面倒も重々承知で、本当の事をなかった事にしなかった育ての親の覚悟に泣けてしまうのである。決して「なかった事にする」事が子供の事を思うイコールではない筈だ。そんなベタベタな話なのだけど、ここで育ての親が産みの親を肯定する事で、産みの親は子供を産んで以来、初めて、親としても子としても救われる。その構造が上手いなあ。ついでにその時点で産みの父親はもうとっくにフェードアウトしてしまってるのもリアルすぎて痛い。まあ、でもそういうもんだろう。
育ての親の永作博美と井浦新は凄く日常的に普通である事をちゃんと演じられる俳優だ。いいキャスティングである。産みの親は蒔田彩珠、いやあ、育ての親にヒケを取らないから凄い。若いから痛々しさが際立つ。あと、お年を召してから出る映画出る映画面白い浅田美代子が今回も面白い。割と出しゃばらないのだけど深い。あと新聞屋・利重剛のボロボロの優しさも好き。ああいう昔からいる優しくて不器用な人がドタンバ近くで出て来ることが映画を優しくしてる。そして『るろうに剣心』の左之助・青木崇高がもんもん背負うと本物にしか見えない。
これを二度見るのは勇気がいるけど(やはり長さがキツイのよ)、見てないなら見た方が良いと思う、と言うのをネタバレ文書に書くのもどうかと思うが。
【銭】
会員証で入場。同時上映の『37セカンズ』は鑑賞済なので見なかった。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・朝が来る@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
・朝が来る@ここなつ映画レビュー
・朝が来る@ノラネコの呑んで観るシネマ

▲ジオンのMSゴックの後ろ姿みたいだ。
※レビュー内にネタバレを含みます。
五つ星評価で【★★★★恐怖映画かと思っていたら】
見終わってドッと疲れたが、いい映画を見た後の疲労感は満足を伴ってるので心地よい。
それにしてもポスターのメインビジュアルが怖過ぎてホラー映画かと思った。
「あなたは、誰ですか。」子供を奪い返しに来た実の母親の筈なのに、その容姿は自分達の記憶とあまりにも違う。
予告編でも使われているが、この「誰」が誰だか分からないのが予告では怖い。
おま、そのテンポどうにかならないかという感じでゆっくりゆっくり語られる物語の中で、
①最初に子供を育てている育ての母と社会との隔絶の危機が語られる。
②そこで、夫婦がその育ての子を得るまでの子供入手の労苦が思いだされる。
③その子供を産んだ産みの母に話はスライドし、何故、人に譲渡する子供を産む事になったのかが恋の始まりから語られる。
④恋の始まりから恋の終わり、出産で出会った素晴らしい大人たちとの出会いと別れ、世間の尺度でしか自分を測れない家族・親族との不和。そして、自暴自棄になって家出した先での転落の日々。
育ての親が子供の為に社会と対立しながらもギリギリ危機を乗り越えたのに反するように、産みの親は社会から隔絶される。もう対比が痛い。
育ての親の半生記の後に、産みの親の半生記が凄く気紛れに語られる。とても、計算して作られていようには見えない。おそらく監督がもっと社会性を逸脱している園子音のような人物だったら、産みの親を育てた親の半生記、譲渡組織を作って、瓦解させた浅田美代子の半生記すら語り出していたかもしれない。まあ、じっくり描くのだけど、その分、長いのよ。育ての親から産みの親に行って、育ての親の元の時間で親同士が再会するのだけど、産みの親パートが長くて、話が戻った時にどこに戻ったのかがちょっと分からなくなってた。子供が育つ3~4年の間に産みの親は10年くらい心労で老けるのである。
不幸が人の容貌や性格までも変えてしまう。金を脅しに来たのは情報を知った別人ではなく、実の親だった。この時点で終わってしまえば、この物語は「安達ケ原の鬼」のようなホラーである。だが、産みの親はかって自分の子供に手紙を書いており、その中の一節、消しゴムで消した後を育ての親が気づいてしまう。
「なかった事にしないで」
ここで泣いてしまう。本当は「なかった事にしないで」と強く言い張りたいが、それを言う事で子供が幸せに生きられないかもしれないと思って、静かに身を引いて消しゴムを掛けた産みの親の優しさに気づくのである。
そして、その「なかった事にしないで」に気づいて、あとあとの面倒も重々承知で、本当の事をなかった事にしなかった育ての親の覚悟に泣けてしまうのである。決して「なかった事にする」事が子供の事を思うイコールではない筈だ。そんなベタベタな話なのだけど、ここで育ての親が産みの親を肯定する事で、産みの親は子供を産んで以来、初めて、親としても子としても救われる。その構造が上手いなあ。ついでにその時点で産みの父親はもうとっくにフェードアウトしてしまってるのもリアルすぎて痛い。まあ、でもそういうもんだろう。
育ての親の永作博美と井浦新は凄く日常的に普通である事をちゃんと演じられる俳優だ。いいキャスティングである。産みの親は蒔田彩珠、いやあ、育ての親にヒケを取らないから凄い。若いから痛々しさが際立つ。あと、お年を召してから出る映画出る映画面白い浅田美代子が今回も面白い。割と出しゃばらないのだけど深い。あと新聞屋・利重剛のボロボロの優しさも好き。ああいう昔からいる優しくて不器用な人がドタンバ近くで出て来ることが映画を優しくしてる。そして『るろうに剣心』の左之助・青木崇高がもんもん背負うと本物にしか見えない。
これを二度見るのは勇気がいるけど(やはり長さがキツイのよ)、見てないなら見た方が良いと思う、と言うのをネタバレ文書に書くのもどうかと思うが。
【銭】
会員証で入場。同時上映の『37セカンズ』は鑑賞済なので見なかった。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・朝が来る@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
・朝が来る@ここなつ映画レビュー
・朝が来る@ノラネコの呑んで観るシネマ
スポンサーサイト