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ふじき78の死屍累々映画日記・第二章

場末にひっそり咲く映画日記。第一章にあたる無印はライブドアブログ

『デイアンドナイト』『ゾッキ』目黒シネマ

目黒シネマ二本立て「ゾッキ特集上映」

◆『デイアンドナイト』目黒シネマ

▲荒々しい登場人物達。

五つ星評価で【★★★★正義のゴツゴツした肌触り】
チラシの強めな絵に興味を引かれながらも『デイアンドナイト』というタイトルが心に残らず、劇場公開時には見逃した。タイトルから映画内容を想起しづらいのはいかん。あと、チラシも1枚1枚の写真は凄く強いのだが、何の映画であるかがパッと見、分からない。確かに「善と悪の映画」という売りでは売れんかもしれんが。面白いという噂を聞いて後悔した。でもなあ、無尽蔵に映画を見れたりもしないのよ。そして、公開時に注目を浴びなかった映画は今やかなり少なくなってしまった名画座にもなかなか流れてこない。
今回は抱き合わせ商法で1日だけの公開。どうにか見れた。ううむ、良かった。

父が死んだ後に帰ってきた故郷で、村八分のようにされている家族を見る主人公、父は雇われている会社の部品に問題がある事を知り訴訟を起こしたのだ。訴訟に負け、最後は首をくくる父。その父が懇意にしていた孤児院を手伝う主人公。孤児院はその存続を維持する為に違法なビジネスに手を染めていた。

面白いのは幾つかの正義(逆目から見たら悪になる)が提示され、それを観客が選び取れる事だ。そして、どの正義にもそれぞれ犠牲者が存在する。

田中哲司ポジション正義:町にお金を落とす大企業の正義。車の部品に問題があっても、それが原因で事故になる可能性は低いので、事故のリスクと引き換えに事実を封印する。主人公の父が自殺した事について、罪悪感はなく、余計な事の延長くらいしか思っていない。
安藤政信ポジション正義:自ら経営する孤児院の経営を維持する為、車両盗難・解体、不法移民の労働斡旋、ドラッグ蔓延阻止の自警を行っている。田中哲司の会社と直接の利害関係はないので、そこに対立はない。
阿部進之介ポジション正義:父の死を引き起こした田中哲司を許さない。安藤政信には一目置いている。「正義」は「真実」が明らかになる事。但し、「真実」が明らかになる事によって、くすむ「正義」もある事を実感させられる。

物語は主人公目線で進むので、観客は阿部進之介ポジション正義に染められながら、安藤政信ポジション正義に触れ、最後に田中哲司ポジション正義に出会う。阿部進之介ポジション正義は理想論であり、田中哲司ポジション正義はより多数の人間が損をしない方便である。この両者の接点や妥協点が見つかるなら、それは一番望ましい事であるが、見つからないからこそ衝突し、裁判で蹴りを付けなければならなかった。裁判は比較的強者の味方寄りなので、田中哲司側の部が良い。
安藤政信ポジション正義の対立概念は国家警察による順法精神だろう。順法精神だけで解決できない問題もあるので、安藤政信ポジション正義は割と正しく機能している。車両盗難についての盗難被害者は所持者ではなく保険会社だろう。保険会社の保険支払額が保険会社の儲けを著しく圧迫しないように上限を作っておけば衝突は避けられる。不法移民の労働斡旋はウィンウィンであり、順法精神には乗っ取っていないが、ここに被害者はいない。ドラッグ蔓延阻止の自警も順法精神には乗っ取らないが、これは警察組織の摘発が遅れているからであって、安藤政信が警察組織の実行行使を自衛のため肩代わりしてるにすぎず、ウィンウィンの関係であると言えよう。

美しいのは阿部進之介ポジション正義であり、妥協点が見いだせるのなら安藤政信ポジション正義にも魅力があるのだが、現実的には田中哲司ポジション正義にどうしても席巻されてしまう。物語の中においてですらだ。でも、そこに物語の美しさが溢れだす。

ローバジェット映画の核兵器女優、佐津川愛美が活躍してるが、今回は大した役じゃない。いつの間にかファブリーズの母親のイメージしかなくなってしまった小西真奈美もスピンオフして深掘りできそうなちょっと面白げな役なのだけど、この映画の中では都合のいい中途半端な役。

可愛いな清原果耶。ぶっきらぼうが年に合ってる。


◆『ゾッキ』目黒シネマ

▲どの話って言ったら右上の二人組かな。

五つ星評価で【★★あっこれは俺のダメな奴だ】
ダラダラと流れるオフビートな笑いというのが大概自分には合わない。
「オフビートな笑い」が成立するのは、話がちゃんとまとまって終わっている、そんな時だと思う。
ただ「ダラっと撮った風変わりな話」は「オフビートな笑い」以前、じゃなかろうか。


【銭】
目黒シネマ2本立て一般1500円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
デイアンドナイト@ぴあ映画生活
ゾッキ@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です(一部TBなし)。
デイアンドナイト@ここなつ映画レビュー
ゾッキ@ここなつ映画レビュー

PS これくらいの長さのタイトルはいいなあ。ただ、どちらもタイトルだけだと内容が全然わからんけど。
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コメント

デイアンドナイト

こんにちは。
「デイアンドナイト」良かったでしょう!(と、何故か得意げ)
何よりあの雰囲気が好きな私なのですが、話もきちんとしていて、胸がひりつく作品でした。
殴り合いもガチっぽかったなぁ。

  • 2021/08/02(月) 15:24:44 |
  • URL |
  • ここなつ #/qX1gsKM
  • [ 編集 ]

ゾッキ

「ゾッキ」は、これはまあ…ある種のお遊びですからね。
もう少しはちゃめちゃになるのを期待しておりましたが、(各監督の個性と比すると)比較的こじんまりとした感じだったと思います。

  • 2021/08/02(月) 15:26:15 |
  • URL |
  • ここなつ #/qX1gsKM
  • [ 編集 ]

Re: デイアンドナイト

こんちは、ここなつさん。

> 「デイアンドナイト」良かったでしょう!(と、何故か得意げ)
> 何よりあの雰囲気が好きな私なのですが、話もきちんとしていて、胸がひりつく作品でした。
> 殴り合いもガチっぽかったなぁ。

大真面目に撮った者だけに許される計算を凌駕するガチ感がありました。

  • 2021/08/02(月) 23:56:41 |
  • URL |
  • fjk78dead #-
  • [ 編集 ]

Re: ゾッキ

こんちは、ここなつさん。

> 「ゾッキ」は、これはまあ…ある種のお遊びですからね。
> もう少しはちゃめちゃになるのを期待しておりましたが、(各監督の個性と比すると)比較的こじんまりとした感じだったと思います。

遊び慣れてない俺。

  • 2021/08/02(月) 23:57:51 |
  • URL |
  • fjk78dead #-
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デイアンドナイト DAY AND NIGHT

地方の海沿いの街。 自動車整備工場を経営する父親が、大手企業の不正を告発した数日後に自殺。 東京で働いていた息子・明石幸次は、地元で真相を探るため、父の知人・北村が経営する児童養護施設で働くことに。 北村は施設の経費捻出のため、犯罪集団を率いていた。 違和感を抱きながらも、明石は犯罪に手を染める…。 社会派サスペンス。

  • 2021/08/10(火)12:51:26 |
  • 象のロケット

「デイアンドナイト」

力作。間違いなく力作。そしてとても好きなテーマだし、とても好きな作りだ。秋田県。風力発電の風車が海岸沿いに立ち並ぶ町(ロケ地は秋田県鹿角市三種町)。東京から故郷に舞い戻って来た若者の復讐と贖罪の物語。復讐と贖罪という相反した単語を並べたのは、彼が試みた「復讐」は故郷へのそして家族への贖罪ではないかと思ったから。「善と悪はどこからやってくるのか。」深く普遍的なテーマで、永遠に解けない問いだ。1...

  • 2021/08/02(月)15:27:24 |
  • ここなつ映画レビュー

「ゾッキ」第33回東京国際映画祭

TOKYO2020作品。日本映画。結構面白かった。上手くまとまり過ぎてこじんまりとしてしまった感はなきにしもあらず、だけれど。原作漫画は未読なのだけれど、話に聞くと相当ぶっ飛んだ世界観のようである。にも関わらず、ちゃんとしていた。ちゃんとしていることがいいことか悪いことかはよく判らない。多少、3人の監督の個性がぶつかり過ぎてしっちゃかめっちゃかになるのを期待していなかったかと言うと嘘になるか...

  • 2021/08/02(月)15:26:56 |
  • ここなつ映画レビュー