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ふじき78の死屍累々映画日記・第二章

場末にひっそり咲く映画日記。第一章にあたる無印はライブドアブログ

『岬のマヨイガ』トーホーシネマズ池袋1

◆『岬のマヨイガ』トーホーシネマズ池袋1

▲芦田愛菜パイセン演じるユイ。

五つ星評価で【★★★★優しく厳しく今、描かれる理由がある】
見た直後のツイートが下記。

TLで見かけないし、見る気はそんなになかったけど時間が合うから観賞。すげーいいじゃん。冗談で一本でっちあげたような「妖怪大戦争」より、よっぽど妖怪大戦争している。そして物語が物語られなければならない理由が濃厚。河童の声が素晴らしい。

という形にノックアウト。ごめん、映画を見る前は赤い大竹しのぶと青い芦田愛菜が合体する良心回路搭載済のロボが敵に人質を取られると迷ってしまって「人造人間マヨイガー」みたいなのかとか思ってた(思うなよ)。
マヨイガー01は仁王像から飛び出てトランペットで迷いを吹き飛ばすけど、やはりビジンガーの胸のボタンを外すかどうか攻撃にはきっと迷ってしまうんだぜ(俺だったら迷う)。

東日本大震災後の東北、避難所で居場所のない二人の少女ユイとひよりはキワというお婆さんに共同生活を提案される。二人はキワ婆さんと東北地方に伝わるマヨイガという家の妖怪に住み、徐々に震災などの痛みを癒されていくのだが、マヨイガの近くに封印された妖怪アガメが逃げ出し、人々の生活を脅かすようになる。キワ婆さんは二人を遠くにある別のマヨイガに逃がし、一人アガメと対決しようとする。戦いに身を投じる二人。みたいな話。

まず、主役の三人の生活がちゃんと描かれている。8歳の声の出せない少女、17歳の家出娘、80歳くらいの優しい老婆のものいいやぶつかり具合がとても自然である。そこに、居場所のない子供が徐々に居場所を確立したところに現われる居場所を奪う化け物の話が絡む。アガメは目に見えない祠から逃げだしたという設定で、これは原子力発電所から漏れている放射汚染のメタファーであり、人の居場所を奪って侵食する「災害」その物のメタファーでもある。対するキワ婆さんは二人の「居場所」が具体的に実体化したものと言っていいだろう。なので、キワ婆さんに加勢する二人の姿勢はとてもよい。間違えていない。自分の居場所は自分で守るのだ。

そして、アガメにだって言いたい事があるとする世界観は、意に沿わぬものを有無も言わさず滅ぼしてしまう弱肉強食の掟とは別に、全てのものにはそれぞれに理由があるとする八百万(やおよろず)の祖先信仰を基底としているのではないだろうか。それは強く厳格ではないけれど鈍く優しい。

とてもいい話ではあるが、地味で集客はあまり良くなさそうだ。自分自身見るリストには入れてなかった。回数もグングン減っている。でも面白いから見れる人は見てくれ『妖怪大戦争 ガーディアンズ』以上に妖怪大戦争してるし、これは今、語られるべき背景がある物語だ。

▲あと、河童がいい味出してます。


【銭】
トーホーシネマズデー、メンバーズデー(火曜日)で、割引後の入場料金1200円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
岬のマヨイガ@ぴあ映画生活
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コメント

「マヨイガ」の話が記憶と違っていた。
「日本昔話」のと混じっているのかな。

これを観た日の前日の殆ど同じ時間帯の「アーヤ」はほぼ満席だったけど、こっちはちょっと寂しかったなぁ。

この映画の河童も「尻子玉」を取らない河童だな。
「妖怪大戦争」や「河童の三平」の影響で河童は善い妖怪になってしまったのか。
薄い本なんかでは「猫娘」の「尻子玉」を狙う河童の話があるらしい。

  • 2021/11/03(水) 12:52:17 |
  • URL |
  • 粕人間 #-
  • [ 編集 ]

Re: タイトルなし

こんちは、先輩。

> これを観た日の前日の殆ど同じ時間帯の「アーヤ」はほぼ満席だったけど、こっちはちょっと寂しかったなぁ。

アーヤは割と周りでは不入り報告がいっぱい入ってきてたけど、そういう所もあるのですね。



> この映画の河童も「尻子玉」を取らない河童だな。
> 「妖怪大戦争」や「河童の三平」の影響で河童は善い妖怪になってしまったのか。
> 薄い本なんかでは「猫娘」の「尻子玉」を狙う河童の話があるらしい。

河童はテペト星人の頃からマスコットキャラと化け物の間の両極端だったので。まあ、あれね、黄桜がいけなかったんじゃないかな。

  • 2021/11/03(水) 22:35:05 |
  • URL |
  • fjk78dead #-
  • [ 編集 ]

こんばんは!

ふじきさんから以前にこの作品をおススメされていたのを覚えていたのでレンタルして観てみました。
仰る通りに『妖怪大戦争』よりも大戦争してました。
キャラクター3人もしっかり作られているし、ストーリーも抜群に良かったです。
余り皆から興味持たれなかったのは「人物絵」のせいかなあとは思ったのですが、僕はユイもひよりも婆さんも好きです!

  • 2022/02/23(水) 19:53:28 |
  • URL |
  • ヒロ之 #-
  • [ 編集 ]

Re: こんばんは!

こんちは、ヒロ之さん。

> 余り皆から興味持たれなかったのは「人物絵」のせいかなあとは思ったのですが、僕はユイもひよりも婆さんも好きです!

コロナで劇場の機能がおかしくなって、今でもおかしいままなのですが、これはコケた。凄くしっかり作られてるのだけど、大舞台女優の大竹しのぶと優等生の芦田愛菜って組み合わせが、遊びとかない映画を連想させてしまったのかもしれない。今は最初の第一週、初動が悪いと口コミが立とうが立つまいが滅多な事では興行ぶり返さない作りになってるから。いかんなあ。

  • 2022/02/24(木) 11:48:11 |
  • URL |
  • fjk78dead #-
  • [ 編集 ]

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岬のマヨイガ

ある事情から家を出た17歳の少女ユイと、両親を事故で亡くしたショックで声を失った8歳の少女ひより。 居場所を失った二人は、キワさんという不思議な力を持つおばあちゃんと出会い、海を見下ろす岬に建つ古民家“マヨイガ”に住むことに。 ある日、“ふしぎっと”と呼ばれる優しい妖怪たちがキワさんを訪ねてきた…。 アニメーション。 ≪あなたを信じる場所が、ここにある。≫

  • 2021/09/27(月)22:44:49 |
  • 象のロケット