
▲芦田愛菜パイセン演じるユイ。
五つ星評価で【★★★★優しく厳しく今、描かれる理由がある】
見た直後のツイートが下記。
TLで見かけないし、見る気はそんなになかったけど時間が合うから観賞。すげーいいじゃん。冗談で一本でっちあげたような「妖怪大戦争」より、よっぽど妖怪大戦争している。そして物語が物語られなければならない理由が濃厚。河童の声が素晴らしい。
という形にノックアウト。ごめん、映画を見る前は赤い大竹しのぶと青い芦田愛菜が合体する良心回路搭載済のロボが敵に人質を取られると迷ってしまって「人造人間マヨイガー」みたいなのかとか思ってた(思うなよ)。
マヨイガー01は仁王像から飛び出てトランペットで迷いを吹き飛ばすけど、やはりビジンガーの胸のボタンを外すかどうか攻撃にはきっと迷ってしまうんだぜ(俺だったら迷う)。
東日本大震災後の東北、避難所で居場所のない二人の少女ユイとひよりはキワというお婆さんに共同生活を提案される。二人はキワ婆さんと東北地方に伝わるマヨイガという家の妖怪に住み、徐々に震災などの痛みを癒されていくのだが、マヨイガの近くに封印された妖怪アガメが逃げ出し、人々の生活を脅かすようになる。キワ婆さんは二人を遠くにある別のマヨイガに逃がし、一人アガメと対決しようとする。戦いに身を投じる二人。みたいな話。
まず、主役の三人の生活がちゃんと描かれている。8歳の声の出せない少女、17歳の家出娘、80歳くらいの優しい老婆のものいいやぶつかり具合がとても自然である。そこに、居場所のない子供が徐々に居場所を確立したところに現われる居場所を奪う化け物の話が絡む。アガメは目に見えない祠から逃げだしたという設定で、これは原子力発電所から漏れている放射汚染のメタファーであり、人の居場所を奪って侵食する「災害」その物のメタファーでもある。対するキワ婆さんは二人の「居場所」が具体的に実体化したものと言っていいだろう。なので、キワ婆さんに加勢する二人の姿勢はとてもよい。間違えていない。自分の居場所は自分で守るのだ。
そして、アガメにだって言いたい事があるとする世界観は、意に沿わぬものを有無も言わさず滅ぼしてしまう弱肉強食の掟とは別に、全てのものにはそれぞれに理由があるとする八百万(やおよろず)の祖先信仰を基底としているのではないだろうか。それは強く厳格ではないけれど鈍く優しい。
とてもいい話ではあるが、地味で集客はあまり良くなさそうだ。自分自身見るリストには入れてなかった。回数もグングン減っている。でも面白いから見れる人は見てくれ。『妖怪大戦争 ガーディアンズ』以上に妖怪大戦争してるし、これは今、語られるべき背景がある物語だ。

▲あと、河童がいい味出してます。
【銭】
トーホーシネマズデー、メンバーズデー(火曜日)で、割引後の入場料金1200円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
・岬のマヨイガ@ぴあ映画生活