五つ星評価で【★★★仲代達矢の眼力にやられた】
特集企画「映画で愉しむ山本周五郎と時代小説の世界」から一本。
1971年、白黒、121分、3回目か4回目、小林正樹監督作品。
少なくとも二回は見ている。
だから、初回見た時の「ビビっ」と来た感覚に引っ張られる。
ロクデナシ共が自分の得にならない善行に身を投げていくアウトラインがそもそも好きなのだ。
だけど、あー、仲代達矢、間がたっぷりだとか思ってしまうようになった。
ならず者の吹き溜まりの深川安楽亭に巣食う穀潰しが不運な一組の男女を命を賭けてぬかるみから助け出そうとする人情譚。主役の仲代達矢は目玉ギラギラで薬物中毒みたいだし、客演の勝新太郎は割といつも通りにズタボロのアル中みたいだしで、人情譚なのに気軽に心温まらせてくれない。そんな掃き溜めの中で唯一綺麗なのがずっと商家で丁稚奉公してたのに不運に突き落とされて流れてきた山本圭の涙。これが本当に綺麗で純真無垢ですーっと流れる。掃き溜めにいるメンツの中で、佐藤慶と栗原小巻は善人素養が強いので別として、それ以外の近藤洋介、岸田森、他三名が仕事に加担するのはちょっと勢いに乗って端折ったなと感じた。まあ、人数多いからゆっくりもやってられまい。
佐藤慶が悪人の中だとしても善人寄りなのは珍しい。でも、佐藤慶だから手放しでいい人には見えなかった。まあ、それくらいのバランスでいいのか。
安楽亭を目の敵にする同心が中谷一郎と神山繁。中谷一郎って風車の弥七以外は本来はイヤな役の役者だよなあ。神山繁はもうどこからどう見てもいつもイヤな奴。
小林正樹が撮ったから、堂々立派な重い演技演出が付いたが、これが同じ四騎の会の市川崑だったら悪人ももっとライトになって娯楽活劇っぽくなったのかなあ、とか夢想する。武満徹の音楽は気を張らされてちょっと疲れる。
【銭】
一般入場料金1300円。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
・いのちぼうにふろう@映画.com
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