五つ星評価で【★★★長門勇どうよ】
特集企画「映画で愉しむ山本周五郎と時代小説の世界」から一本。
1964年、白黒、91分、初見、内川清一郎監督作品。
勇ましいタイトルだが、松竹らしい人情劇をベースに、主人公の悲哀や手足が飛ぶような残酷剣劇をまぶしている。重厚な剣劇カットの後、余韻を残さずすぐ人情劇で打ち消しにかかるのは何やら勿体ない。長門勇が自分の剣劇カットのない乱戦場面でファニーフェイスをチョコチョコぶち込んでくるが、これが何にもなっていない逆効果でイライラする。長門勇の顔の中心は調子いい時の左とんぺいに似てる。ヘイユウ! しかし、『雨あがる』と同原作(勿論こっちの方が早い)との事だが、あれってこんなだったっけ。主役が長門勇と寺尾聡じゃそれだけでもう別物か。
長門勇の妻役が岩下志麻。綺麗すぎて長門勇に操を立ててるのが極めて不自然。最後まで長門勇を裏切るのでないかとの疑念が晴れなかった。だって岩下志麻は超絶美しいけど、壁ドンきゃっうふふ的な恋の揺らぎが演技になく、どっちかって言うともう既に極妻っぽい。惚れられる側の長門勇は人柄こそ優しいが、優柔不断で、身なりは汚く、女性に接する態度にも全く自信が見えない、いわゆる一般的な女子が忌み嫌うタイプなのですもの。
家老の娘が倍賞千恵子。さくらなのにキャンキャンしてて、脳内がバグる。
この倍賞千恵子との関係が深くなり、岩下志麻がジャマになったら『四谷怪談』になるのだが、そうはならない。いっそなれ。
丹波哲郎がかっけーけど謎の役。最後まで見ると納得できるが実に傍迷惑と言えば傍迷惑な役だ。
そして、殿山泰司の乞食宿に居付いてる貧乏人代表が左卜全、ここに家老の宮口精二が訪ねて来るだけで漂う『七人の侍』感。白黒だからか。まあ、左卜全が白黒で全力で貧しいというだけで『七人の侍』感濃厚である。
いい人だけど、世渡りは下手という善人談なのだが、善人の度が過ぎて自分を大切に出来ない奴ってのは、あまり共感できない。そこが、この映画にあまりのめり込まされず、ラストもうすら怖く見える所だろう。あそこに行けば必ずいい事があるだろうと言う主人公の希望の言葉が世迷言に聞こえてしまう。
【銭】
一般入場料金1300円。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
・道場破り@映画.com
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