『夏へのトンネル、さよならの出口』ユナイテッドシネマ豊洲11
- Date
- 2022/09/13/Tue 09:20
- Category
- 映画(FC2独自レビュー)
◆『夏へのトンネル、さよならの出口』ユナイテッドシネマ豊洲11

▲浦島トンネル内での彼。「夢を叶えるのは一人だけ」みたいな選別性がないのは、かなり大判振る舞い。
五つ星評価で【★★★とてもたやすい日常の地獄にはおののく】
主人公の彼も、ヒロインの彼女も眉目秀麗で硝子細工のように綺麗である。彼等には普通に生きていく上での障害があり、それが彼等を必要以上に外界から隔てさせているのかもしれない。彼にとっても、彼女にとっても、現実は自分達から幸福のシンボルを取りあげた失楽園=地獄に他ならない。彼は日常的に暴力にさらされ、彼女は生きていく目標を否定される。どちらも、いともたやすく行われ、それが突飛に見えないリアリティーを持つ。だから、怖い。そんな現実を打ち消したい彼等がすがるアイテムが怪異「浦島トンネル」。この浦島トンネルを利用して、彼等は運命から幸せを奪還しようというのだ。
彼等の調査によれば、地方の伝承とは無関係であり、どうやら彼等の近辺に都市伝説的な噂が流布しており、そこでは年齢と引き換えに願いがかなうらしい。この浦島トンネルのビジュアルが素晴らしい。ある場所から時間の流れが変わるが、そういう事が起きそうな説得力がある。ただ、「願い事がかなう」という御褒美が何故そういう事が起こるのかも合わせて漠然としている。この怪異の内容や願い事の範囲が漠然としている所(主人公の彼の視点でしかない)が、映画の欠点でありつつ、奥行きを深めている点でもある。又、トンネルとは言うが、入り口に呼応した出口はない。中に入った者は入りっぱなしになったまま外界と遮断されて死ぬか、何かを得て元の道を戻るかの二択を迫られる。怪異には中に入った人をもてなすような知性がある。決して万能ではないが、中に入った者の記憶を辿り、必要な物を用意したり、過去の人生を再シミュレートしたりする。そういう事は知性なしにはできないだろう。
トンネルが何者かは分からないが、トンネルに知性があるのなら、それは物語に飢えていて、物語性に富む者を「願い事がかなう」というエサを撒いて呼び寄せているのかもしれない。トンネルに好かれる、より、濃い物語の者は長く居座り、神隠しになり、薄い者は社会復帰したりする。普通の者はトンネルを見つける事すらできない。トンネルの入り口は外見三角形の穴で、中は湿っていて、温かそうで、これは女性性器(子宮)のイメージ。エロい。ああ、トンネル自身が乙姫様という事か。作者が男性か女性かは知らないが、メタ的な視点で見ると、貪欲に物語を切望してやまない作者こそが浦島トンネル自身なのかもしれない。ただまあ、物語としては浦島トンネルが何者であるかが分かってしまったら、つまらなく収まりそうなので、そこはかとなく謎のままという閉じ方に終わったのは正しいのだろう。
ムチムチの女体になった彼女と、男子高校生のままの彼って、個人的には凄くエロさが濃厚。
『夏へのトンネル』と『夏への扉』の違いは前者は時系列に対して一方向しか許していないが、後者は両方向に進む事も可能である点。両方向は物語る事を考えると、けっこう複雑になってしまうからしんどいよな。
あまり、映画自身で出ていない解答を、後から補完するのもどうかと思うが、入場者特典の小冊子『さよならのあと、いつもへの入り口』はちょっと納得できたりもする良い特典だった。
【銭】
ユナイテッドシネマ、会員ポイント2ポイント使って1000円で鑑賞。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
・夏へのトンネル、さよならの出口@映画.com

▲浦島トンネル内での彼。「夢を叶えるのは一人だけ」みたいな選別性がないのは、かなり大判振る舞い。
五つ星評価で【★★★とてもたやすい日常の地獄にはおののく】
主人公の彼も、ヒロインの彼女も眉目秀麗で硝子細工のように綺麗である。彼等には普通に生きていく上での障害があり、それが彼等を必要以上に外界から隔てさせているのかもしれない。彼にとっても、彼女にとっても、現実は自分達から幸福のシンボルを取りあげた失楽園=地獄に他ならない。彼は日常的に暴力にさらされ、彼女は生きていく目標を否定される。どちらも、いともたやすく行われ、それが突飛に見えないリアリティーを持つ。だから、怖い。そんな現実を打ち消したい彼等がすがるアイテムが怪異「浦島トンネル」。この浦島トンネルを利用して、彼等は運命から幸せを奪還しようというのだ。
彼等の調査によれば、地方の伝承とは無関係であり、どうやら彼等の近辺に都市伝説的な噂が流布しており、そこでは年齢と引き換えに願いがかなうらしい。この浦島トンネルのビジュアルが素晴らしい。ある場所から時間の流れが変わるが、そういう事が起きそうな説得力がある。ただ、「願い事がかなう」という御褒美が何故そういう事が起こるのかも合わせて漠然としている。この怪異の内容や願い事の範囲が漠然としている所(主人公の彼の視点でしかない)が、映画の欠点でありつつ、奥行きを深めている点でもある。又、トンネルとは言うが、入り口に呼応した出口はない。中に入った者は入りっぱなしになったまま外界と遮断されて死ぬか、何かを得て元の道を戻るかの二択を迫られる。怪異には中に入った人をもてなすような知性がある。決して万能ではないが、中に入った者の記憶を辿り、必要な物を用意したり、過去の人生を再シミュレートしたりする。そういう事は知性なしにはできないだろう。
トンネルが何者かは分からないが、トンネルに知性があるのなら、それは物語に飢えていて、物語性に富む者を「願い事がかなう」というエサを撒いて呼び寄せているのかもしれない。トンネルに好かれる、より、濃い物語の者は長く居座り、神隠しになり、薄い者は社会復帰したりする。普通の者はトンネルを見つける事すらできない。トンネルの入り口は外見三角形の穴で、中は湿っていて、温かそうで、これは女性性器(子宮)のイメージ。エロい。ああ、トンネル自身が乙姫様という事か。作者が男性か女性かは知らないが、メタ的な視点で見ると、貪欲に物語を切望してやまない作者こそが浦島トンネル自身なのかもしれない。ただまあ、物語としては浦島トンネルが何者であるかが分かってしまったら、つまらなく収まりそうなので、そこはかとなく謎のままという閉じ方に終わったのは正しいのだろう。
ムチムチの女体になった彼女と、男子高校生のままの彼って、個人的には凄くエロさが濃厚。
『夏へのトンネル』と『夏への扉』の違いは前者は時系列に対して一方向しか許していないが、後者は両方向に進む事も可能である点。両方向は物語る事を考えると、けっこう複雑になってしまうからしんどいよな。
あまり、映画自身で出ていない解答を、後から補完するのもどうかと思うが、入場者特典の小冊子『さよならのあと、いつもへの入り口』はちょっと納得できたりもする良い特典だった。
【銭】
ユナイテッドシネマ、会員ポイント2ポイント使って1000円で鑑賞。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
・夏へのトンネル、さよならの出口@映画.com
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