
▲冒頭の割とコミカルな場面。オオカミ様剛力ハイヒール。
五つ星評価で【★★★一般的に評価は高いだろうが、城の設定が雑な部分が受け付けづらい】
鏡の中の世界に入ると誰か一人の希望が適えられるという『仮面ライダー龍騎』かよ。だが、それにしてはいつまでも殺し合いを始めないのである。選ばれし7人なのに野武士を退治しに行かないし、白バイに乗って悪を退治しに行かないし(違うだろ)。その7人の背景にある問題に対する本気度には打たれる。家に押し掛けてくるとか絶望的に怖い。そして、いじめる側の情報があまり開示されないのもリアルで怖い。いじめる側にも実は深刻な問題があって、みたいな攻撃側を被害者みたいに扱わないのが現実とシンクロしてて、より怖い。いじめが怖いのは気軽に始められるけど、大きくなると止められない所で、大きくなった後でも気軽に始まったので、攻撃側の罪悪感が被害を受けている側のダメージと釣り合わないくらい小さい。だから、簡単に調停出来ると加害側は思うだろうし、それで調停しても何らいい結果に結びつかない。調停する人物が加害側の都合のいい「大きな流れに流されがち」な人物がチョイスされるのも怖い。被害を受ける側は少数であり、加害を与えるのはおおむね集団だ。社会は社会全体が安定する為に、一般的には集団の意見を聞く流れが形成されるだろう。その方が社会が傷まない。そんな中、被害者側の親身になり、正義を貫く事のなんて気高くも不自由なこと。主人公が内向的であるが、とても普通であるという事が見る側の痛みを大きくする。と言うリアル描写が凄い部分。
そして、でも、ちょっとどうなのって部分はファンタジー要素の設定が適当としか思えない部分だ。原作ではしっかり理由があるのかもしれないが、7人が選ばれた理由やその周期に必然性が感じられず、7人の中の1人が破ってしまうルールも、そのルールに対する処罰も物語をまとめる為の作為を強く感じてしまう。城を作った者は明かされるが、その者が何故、城を作りえたか、その力の源泉は明かされない。選ばれた7人の辛辣な問題がリアルにしっかり描かれていて、その解決の最初のきっかけとなるのが「城」なのに、城に物語上のリアリティーがないのでチグハグな印象を受けてしまう。そこは残念だと思う。
選ばれた7人の中で「嬉野」に関して、みな軽視しがちであるという部分が、実は恐怖の二重構造である。主人公を含む他の6人が彼を軽んじる構造の先に更なる地獄の口が待っている。
「嬉野くん、ちょっとぶひぶひ鳴いてみて」
「嬉野くん、豚なんだからちょっと全裸になってみて」
「やめなよ、そんなの」
「お前、嬉野菌に感染したな」
「お前も全裸になれ」
「お前らみんなの見てる前でセックスしろ」
極めて韓国映画『ハン・ゴンジュ』的な流れ。
鍵はこの地獄を終わらせる為に使われるかも知れない。
と言うより、学校に居れず、家に居れず、城に居れなかったら、彼等はどうするのか。別の城に行くのか。オオカミ様はその時、どうするのか。そういう地獄を見たい気もするが、やっぱり映画はハッピーエンドがいいので、こころちゃんは天から降臨してきた重機関銃を手に自分を救わなかった社会に牙を剥いた。天から授かった銃弾は無限にある、みたいなのでもいい。
【銭】
金曜メンバーズデーでユナイテッドシネマは1100円。
▼作品の概要はこの辺り見てください。
・かがみの孤城@映画.com