ふじき78の死屍累々映画日記・第二章

場末にひっそり咲く映画日記。第一章にあたる無印はライブドアブログ

『怪談蛇女』『象を喰った連中』をシネマヴェーラ渋谷で観て、ぞぞぞーふふふ★★★,★★★

特集上映「安倍徹生誕百年記念悪い奴ら」から2プログラム。

◆『怪談蛇女』
五つ星評価で【★★★ポップで生臭くて怖い】
中川信夫ってもうオープニングから生理的に怖い。日本人の恐怖の根源を知りぬいてる気がする。だから逆に外人がこれを見て怖いと思うのかはよく分からない。オープニングにも映っている物凄く年季の入った仏壇(何故かただ古いだけで怖い)が呪われた地主が近づくとありえない速さで奥に逃げていく。これは外人に見せたらあまりに突飛で笑うんじゃないだろうか。でも、私はかなり怖かった。仏壇を設置する場所に「奥」があるというのは通常ありえないし、確かなる信教を表わす筈の仏壇が怪異現象にあたかも賛同するかの如く自在に動いてしまう事が怖い。タイトルの「蛇女」のビジュアルが中々よい出来なのだけど、思ったより「蛇」と「女」の間に強い関連性はなかった。しかし、被害者をいびっていた当事者が復讐に会うのは構わないのだが、嫁に来た無関係な若妻がトバッチリにあってしまうのは哀れだなあ。
極悪地主は河津清三郎。女中にすぐ手を出す。小作人を同列の人間と捕えられない所は『それでも夜は明ける』の白人主人を思い出させられた。
地主のバカ息子に山城新伍。チンチンたぎらせてるバカのボンボンが本気で日本一似あう。
そして圧巻は西村晃。生きてる時は「おねげえだぁ旦那様、借金もうちょっと待ってください」を走る馬車にすがりながら連呼。もう一生のうちに1回見れるかどうかというくらい強烈な「卑屈」その物の姿。そしていよいよ命を落とし、憑依霊として主人に憑りつくのであるが、あくまで低姿勢。「土を食ってでも借金返します」と言いながらあちこちに現われる。ともかく恨み言を言うでもなく、ただただ呪う相手に謝り続けるという狂った展開。でも怖い。



◆『象を喰った連中』:
五つ星評価で【★★★まさかのライトコメディー】
象を喰った科学者たちが潜伏菌による恐怖(感染後30時間で致死)に怯えながら過ごす。しかし、こんな実のないライトコメディー今では作れないに違いない。シネコン全盛の昨今、映画を作るという事は1本立てに耐えられる作品を作るイコールになってしまった。こんな添え物みたいな、やくたいのないコメディーもいいと思うんだけどね。

役者で分かったのは笠智衆と安倍徹。
笠智衆かなり若目なのに演技があまりに変わらないので客席から温かい笑いが起こっていた。
安倍徹、新婚の科学者。うーん、そんな役もやってたのね。
数人出てくる女優が何やらみんなテカダンで大正的。時代とともに美醜は変わるんだろうけど、本気で可愛いとも美人とも感じなかった。



【銭】
『怪談蛇女』:通常二本立てて興行価格1500円-200円(夜間割引)-400円(会員割引)。カップリングの『誘拐』は時間の都合で全く見れず。
『象を喰った連中』:興行特別企画価格1100円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
怪談・蛇女@ぴあ映画生活
象を喰った連中@ぴあ映画生活

『アサシン クリード』をよみうりホールで観て、ガン寝★


▲バカ機械。

五つ星評価で【★よく寝た】
寝る子は育つ。いやいやもう育たなくていいよお。
題材がDNAに眠る先祖の記憶を読み覚まし、隠された謎を探る、
と言う事で360度可動可能なバーチャル・リアリティー装置を使い、
ある過去を再現し、その時の実験主体の五感を計測できる
みたいな事をやってるようである。
御大層な機械を使っているが、被験者に昔の人間の人格を
憑依させるのだから、科学潮来と言っていいだろう。
なんかご苦労な事に再現される人格が前後左右上下5メートル
くらいは自由に飛んだり跳ねたりできるので、計測機械が
それに合うように作られている。
こんなん過去の人間の超体力を想定して作っておくなんて
常軌を逸しているね。流石わるもの。

で、そんな機械で過去を仮想空間に蘇らせるので、
蘇った過去が霧や霞のようであまりハッキリしていない。
そして、よみうりホールの映写って建築構造上そんなに
上質の映写にはなりえないのだ。場内が真の闇ではなくほの明るい。
スクリーンに映る映像にシャープさが欠ける。
まあ、言い訳だけど、それにやられたね(言い訳だなあ)。

それにしても「DNAに眠る祖先の記憶を呼び覚ます」ためには
祖先が冒険した後に子を成さなければならない。
祖先はみんな晩婚だったのかなあ。


【銭】
平日、夜の部がない朝から3回の上映の招待券を常設ダフ屋で180円で買った。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
アサシン クリード@ぴあ映画生活

『大魔神逆襲』『透明人間』をシネマヴェーラ渋谷で観て、ダラダラぴんぴん★★,★★★

特集上映「安倍徹生誕百年記念悪い奴ら」から1プログラム。

◆『大魔神逆襲』
五つ星評価で【★★大魔神登場からとその前が乖離しまくり】
逆襲も何も大魔神は全く窮地に落ちないので、この題はイメージ題。近場の殿様の築城武装のため不当に労働酷使される百姓と、その百姓の親を助けるために禁断の山に入った子供たちという設定で、子供たちの冒険が話の大半を占めるのだが、これがタルい。いや、殊更演技や演出が劣っている訳でもないのだが、やっぱりそういうのが見たかった訳ではないので気分がダレる。
なので、やっと大魔神が出てくると気分が上がる。やってる事は前二作と変わらない。歩いていって攻め落とすだけだ。何者も大魔神を止める事は出来ない。抜群の安定感でありながら、目新しい攻防戦もそんなになく、何となく終わってしまう。相変わらず伊福部昭の音楽が超絶重くて、エア子宮にズンズン来る。安倍徹は悪い殿様。「心が籠ってない演技」が秀逸と書きたいところだが、何かやっつけで「よくある背景のないただの悪い奴」。通常営業っぽい感じ。
あ、雪の大魔神は中々綺麗。盆栽みたいな味わいがある。



◆『透明人間』:
五つ星評価で【★★★透明特攻隊ってネーミングがグー】
モノクロ映画。光学合成で肌の地色を飛ばして透明人間にするのだが、特撮は大味。そして透明人間弱い。まあ、可視化できないだけでマッパの人間だからムチャクチャ強いのも嘘くさいけど。日常生活に支障を来たさない為、ずっとピエロ姿のサンドイッチマンで生活しているのだけど、下宿だろうが何だろろうがメイクを落とさないでいるのは普通に不自然というよりなんか犯罪の匂いがしてもいないのに漂ってしまいそう。
ちなみに、この映画の中でガス人間の土屋嘉男が透明人間と共闘を張り、最初に轢死して姿を現してしまう透明人間が実は中島春雄、ゴジラである。全然そんな事はないけど和製アベンジャーズっぽいと言っちゃえば言っちゃったもの勝ちだ(笑)。



【銭】
通常二本立てて興行価格1500円-400円(会員割引)。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
大魔神逆襲@ぴあ映画生活
透明人間〈1954年〉@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です。
透明人間〈1954年〉@或る日の出来事
▼関連記事。
大魔神怒る(1回目)@死屍累々映画日記・第二章
大魔神怒る(2回目)@死屍累々映画日記・第二章

『奥田民生になりたい~』と『散歩する侵略者』をユナイテッドシネマ豊洲11,6で観て、まずまずダメダメ★★★,★★(ネタバレ)

同日鑑賞2本をまとめてレビュー。

◆『奥田民生になりたい~』

▲まだ幸せな二人。

五つ星評価で【★★★楽しめなくもないが、割と予告編通りと言うか、思った以上の展開にはならない】
題名なげーよ。

ネタバレ感想です。
映画が出来て、とりあえず一番得したのは奥田民生だと思う。
あと、水原希子は名刺代わりの一本を作って貰えてラッキーだ。
でも、奥田民生はとても良い人選だし、
ブラ見せるだけでドキドキさせる水原希子も納得にフォトジェニックだ。

予告通り冴えないボクが超美人の彼女に振り回される話で、こんなのは恋愛作品の基本であって、物語に目新しさはない。チラシに書いてある「最狂にポップで、かつてないエンターテインメント!!」という自画自賛は過剰広告だろう。でも、旬の役者をはめて、オシャレに撮ると、ちゃんと商品になるのだから不思議だ。
主役がジャニタレにAKBとかでなく、ちゃんとした役者なので演技が良い。このポップでチープな世界観の中で演技できない人を泳がせたらJKと超S彼氏の壁ドン映画みたいな映画になってしまう。そう言った意味で役者はトコトン演技の出来る人が集められていた。スキがない。如才ない。
最終的にボクが振られるのは自明の理であり、最後に出てくる同次元にいる新しい男との邂逅は正確には違うんだけどツルゲーネフの『初恋』っぽい。この大混乱な状態で話を閉じず、成長後のボクを映して閉じたラストの味わいが中々いい。そこでボクは自分とはレベルが異次元に近い相手を確認させられ日常に戻っていく。その格好はブザマだし、ズボンには立ち食い蕎麦で付けた染みが奥田民生のエピソードよろしく付いている。ボクは自称、奥田民生にはなれなかった男なのだが、この時の彼はどこからどう見ても奥田民生になった男なのだ。奥田民生とは日常で戦い続ける男なのではないだろうか。そして、それを見た彼女が「ふふふ、ちょっとかっこいいじゃない」という微笑を漏らす。その微笑は決して彼から見える事はない。このラストカットがなかなかかっこいいわあ。

妻夫木くんはいつもちゃんと役に生きてていい感じ。
松尾スズキはともかく、リリー・フランキーが役に生きてて、あの役が普段の生活で抜けなくなったら芸能界からいなくなってしまいそう。あとさらっとリアリティーを底上げするような江口のりこは何気にいい。

チョイ役で出てた松本まりかちゃん相変わらず可愛かった。


◆『散歩する侵略者』

▲この後、みんな首が伸びてろくろっ首になります(嘘)。
 中央が垣松祐里、右が高杉真宙。

五つ星評価で【★★そもそも黒沢清が合わないのだ。いつも通り合わなかった】
原作があるので、その原作を書いた人には申し訳ないのだけど話がつまらなかった。
概念を盗む事と侵略その物が関係ないという構図には驚いた。
何か侵略の効率が悪い。
概念など盗まず、メンツが複数であるなら同一場所に移送し、通信機も現地調達せず持って行けばいい。これでスムーズに進行するだろう。

役者で面白かったのは高杉真宙と垣松祐里。あと前田敦子。
垣松祐里は『サクラダリセット』の100倍くらいいい。


【銭】
ユナイテッドシネマ、メンバー割引キャンペーンデーで各1プログラム1000円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール@ぴあ映画生活
散歩する侵略者@ぴあ映画生活

『モンキー・シャイン』『ダーク・ハーフ』を新文芸坐で観て、ロメロったらんもう★★★★,★★★

新文芸坐が企画したロメロ追悼レイトショー(一本立て×2)。

◆『モンキー・シャイン』
五つ星評価で【★★★★無茶苦茶面白かった】
事故により四肢機能不全になった患者のケアを訓練した猿にやらせる実験。だが、そこに特殊な臨床実験中の猿が紛れ込んだ事により、患者の近親者の命が奪われていく事件が多発する。
ファーストランの時に見てて2回目。
もうメチャクチャ面白かった。

高知能猿エラと同調して見る猿目線カメラの気持ちいい事。
エラが牝猿である事から、主人公にラブ目線送って、間を遮る者は敵になる。なので、被害者の大半は女性。でも、看護婦も、元カノも、母親もゲスい奴等オンパレードで全く同情できない。特に母親については「もうほんま許してやれよ」という主人公最大の罰ゲーム状態で、居たたまれなかった。エラさまさまである。

あと、スタンリー・トゥイッチがまだ全ハゲじゃない所が見どころ。


◆『ダーク・ハーフ』
五つ星評価で【★★★雀】
初見。『雀たちの沈黙』かよ!
雀のカットいい。
手術という物理的な兆候から始まって、
後半ではそれを超自然的な存在として処理する。
何やら不整合でギシギシ言ってるみたい。
まあ、そんな方がキング原作らしいか。


【銭】
新文芸坐・会員割引なし均一料金1プログラム1300円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
モンキー・シャイン@ぴあ映画生活
ダーク・ハーフ@ぴあ映画生活

『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』をユナイテッドシネマ豊洲2で、『プリズマ☆イリヤ』を角川シネマ新宿1で観て、どっちもおいおい★★,★★

今一だったアニメを2本一緒に落とす。

◆『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』『プリズマ☆イリヤ』

▲エウレカちゃんほとんど出ていません。

五つ星評価で【両★★どっちも配慮がない】
エウレカは既存のドラマ+新作を三部構成で新たに作るという物らしい。『まどマギ』の劇場版構成に近い構造と考えていいだろう。原典であるTVアニメシリーズを見てないので、今回の映画が原典の一部なのか、全部なのか、原典に描かれていない部分かなどは全く分からない。ただ一つ言えるのは、頭から作った物語であるにもかかわらず、一見さんには分からないように作られており、少なくとも一見さんにとっては大変、不親切な作りであると言う事だ。
物語の主人公レントンの成長具合はとてもよく描けているが、その背景である作品の世界観、背景は「そんなんお前ら知ってて当り前だろ」という傲慢さで全く描く気がない様である。リブートはリブートらしく、新規参入観客に納得がいくように作ってもらいたい。じゃないなら、単にシリーズの再構成ではなく、続編を作った方がいいと思う。
あ、でも、エンドロールの曲が予告編でも使われていた大変素晴らしい曲で、このエンドロールを聞き終わって大層素晴らしい作品を見たと勘違いしそうになった。恐るべし、音楽の力。


▲桜のお兄ちゃんのゲス具合は良かったな(図案の中にいないんだが)

『プリズマ☆イリヤ』は何本か劇場版アニメがつくられてる『Fate』の最新作。これも見終わって煙に巻かれたみたいに何だか分からなかった。今までの『Fate』の設定と微妙に外れているのだが、それが何故なのかは描かれない。いやいや、そんな今まで出された情報を何でも丸呑みして全て咀嚼してきたような親切かつ優良な観客ではないのだよ、私は(あかんのか、俺があかんのんか?)。という訳で、こっちもよく分からなかった。まあ、よく分からないなりにアクションシーンはパッション響いててなかなかかっこよかった。でも、夜の戦いが多く、スクリーンの光量にはちょっとコントラストが足りない感じで、かっこいいアクションが存分に楽しめる感じではなかったのは残念な事だ。ちゃんとやろうよ。仕事なんだし、お金を取ってるんだから。


【銭】
『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』:8,9月期間限定割引サービスクーポンを7月入場時に貰い割引1800円→1300円。
『劇場版 Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い』:テアトル系会員割引で1300円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1@ぴあ映画生活
劇場版 Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ 雪下の誓い@ぴあ映画生活
▼この記事から次の記事に初期TBとコメントを付けさせて貰ってます。お世話様です(一部TBのみ)。
交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1@だらだら無気力ブログ
交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1@あーうぃ だにぇっと

倍賞千恵子版『霧の旗』を神保町シアターで観て、傑作に震える★★★★

特集「女優倍賞千恵子」から1プログラム。

五つ星評価で【★★★★いやあ面白い】
1965年白黒、初見(『霧の旗』自体が初見である)。

倍賞千恵子が今の顔のイメージと違う。若いと言う事は勿論だが、眉毛が太くて濃い。その眉がしなやかさ、たおやかさより、田舎者の純情だけど野太い感じを上手く出している。倍賞千恵子怖い。頑固で一途。不退転。後ろに下がらない。ああ、怖い。この映画の4年後に『男はつらいよ』のさくらを演じるのだけど、この映画でも親のいない二人兄妹で兄の問題に悩まされる。そして兄の問題がどうにもならなくなった時、倍賞千恵子は静かに狂いだしてしまうのである。何という「裏寅さん」。この狂えるさくらの純粋だが手の付けられない感じが素晴らしい。心の底が見えない感じが怖い。ゾッとする。これは倍賞千恵子より松本清張の功績かもしれない。
兄貴が露口茂。また、山さんである。なんつか「山さん」に出会うまで、この人はろくでもない人間の役ばっかだったのだろうなあ。極悪ではないけど、善人よりは悪役の顔をしている。

倍賞千恵子が田舎から登って来たばかりの「オノボリさん」なら、同郷でママにまでなってるのが市原悦子。今とそう変わらないような感じなのが凄い。そら、流石に今の方が全然老けてはいるけれど。

ちょっと話が面白すぎて、山口百恵版も見たくなった。



【銭】
有料非割引時に貰えるスタンプ5回分で無料入場。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
霧の旗〈1965年版〉@ぴあ映画生活

『それでも夜は明ける』『ムーンライト』『ディストピア パンドラの少女』『ゾンビ処刑人』

キネカ大森の名画座企画「月が照らす希望とアイデンティティ」と
「未来はゾンビの手の中に!!!」と。二本立て×2

◆『それでも夜は明ける』キネカ大森1

▲主人公(左)とカンバ演じる飼い主(中)

五つ星評価で【★★★クロンボに生まれると大変だ、な一本】
自由黒人という人たちがいるのね。
彼等は常に自分が「自由黒人」であるという証明書を持ち続けていなければ、自分の立場を保持できない。現代日本で大袈裟にデフォルメするなら、免許証を携帯し忘れたら捕縛されるみたいな状態だ。人間の身分から家畜に落ちる。良くてペット扱いである。「うちのわんちゃんはペットじゃないんです、家族なんです」と言い張ろうが、射殺されてもお金さえ積めば保証は済んでしまう。そんな存在になるという事なのである。そういう位置への転落がとても簡単にシフトチェンジできてしまう事が怖い。1841年、日本では天保12年、明治元年の27年前、まだチョンマゲだ。それを考えるとアメリカの生活様式は見た目、ほとんど変わらない。逆に奴隷制度がなくなった事が日本がチョンマゲやめて世界に鎖国を解いたくらい大きな事なんだろうなあ。
今回この映画ではシスティマティックなビジネスではなかったが、自由黒人を奴隷として売る闇ビジネスが普通に成立してたと思うとこんな話はゴロゴロしてたに違いない。ただ、奴隷から自由黒人に戻ってきた例が希少すぎて規模も何も分からないと言うのが実情ではないだろうか。
奴隷商が奴隷を売るのに、古代ローマの市場みたいな競りにせず、全身裸に剥いた奴隷を室内に調度品のように立たせ、サロンのような雰囲気の中、売買しているというのが、絵空事でないリアリティがあった。ヨドバシカメラやビッグカメラの1フロアに奴隷専門のフロアがあるみたいな感じである。

SF小説の中でドイツ・日本が第二次世界大戦に勝利する、架空戦記物等は日本にもあるが、同じようにアメリカでは南北戦争で南軍が勝利を収めて奴隷が解放されなかった架空未来SFとかあるのだろうな。あまりに現実から遠くて日本人には予想できない。

カンバーバッチみたいに、いい人なんだけど奴隷制度に支えられた生活をしているので、奴隷制度は肯定せざるをえないという飼い主と、骨の髄まで奴隷制度を支持している飼い主とを併記している所は構造として良心的だと思う。

『それでも夜は明ける』って何かタイトル的にどこかで聞いたような気がすると思ったが、アレだ。藤圭子の『夢は夜ひらく』だ。せっかく思い付いたのに、そんなに似てないなあ。


◆『ムーンライト』キネカ大森1

▲色覚検査っぽい。

五つ星評価で【★★★切ない一本】
切ない話だ。
でもまあ、そんなに主人公に同一化できなかったので、思った以上にグッとは来なかった(人非人俺)。主人公の3世代を演じる役者はみんな真剣なよい表情をしている。麻薬ディーラーという存在は本来、撲滅すべき悪党だと思うが(アクション映画で唯一一切の背景なしに殺されても文句言われない悪役)、街の風景の中ではしっかり根を張って、それなりに人格者みたいな撮られ方をしてるのは面白いと思う。押し付けて売っているのでなければ、売る方より買う方が悪いという皮膚感覚が場所によってはあるのかもしれない。
章立てで使われる名前が
「リトル(チビという意味の別称)」
「シャロン(親からもらった社会的な名前、ウィキによると女性の名前)」
「ブラック(焦がれている人からもらった名前)」
という形で主人公が徐々に自己確立していく事を表わしているのではないか?


◆『ディストピア パンドラの少女』キネカ大森2

▲ポスタービジュアルに使われてるマスクもそうだけど、拘束用車椅子とかアイデアやビジュアルが斬新。

五つ星評価で【★★★ムチャクチャ作り込んだ世界観に好感が持てる】
新種ゾンビもの。ハングリーズと呼ばれる新ゾンビはキングが手掛けた『セルラー』の携帯ゾンビと行動がちょっと似てる。襲う時は果てしなく襲い、静かな時は集団として統制が取れながら静か。キングのアレ、あくまで映画だけを見た限りにおいては設定が適当なので、この映画のゾンビの複雑な設定には太刀打ちできない。と言うか、行動パターンはゾンビであるが、もうこんなに設定を作り込まれたら単純に「ゾンビ」ではないわな。
主人公側のゾンビ特性を持ちながらそれを抑制している少女のゾンビ特性演技が素晴らしい。いや、彼女に限らず、ハングリーズになった者の演技はみな素晴らしい。従来のゾンビとは異なる特徴のあるボディー・アクションが付いており、それがとても良い。演出の演技付けが上手いのかもしれない。
エンドロール見てグレン・クローズが出てるとは思わんかった。グレン・クローズなんてじっくり撮ったら確実にゾンビより怖い女優だもんなあ。
但し、あの特に何も解決せずに時間だけ先延ばしにしてるように見えるあのラストはちょっと好きじゃない。


◆『ゾンビ処刑人』キネカ大森2

▲ふじき的にビックリする結末が待っていた。

五つ星評価で【★★割と安い】
冒頭とラストに付けた特殊な場所での行動以外は
今までどこかで見たようなデジャ・ブが蘇ってくるありがちな話。

と思ったら、今はなきシアターN渋谷で昔一回見てた。

おいおいおいおい。覚えてなかったなあ。
どうりで見た事があるような映画と思った筈だ。


【銭】
2017年4月始まりで購入したキネカード(名画座回数券)。キャンペーン期間中につき半年間で3回入場券付で2000円。うち3回分の使用を終わったので一回1000円で見れるフリーパスとして使用(4回目と5回目)
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それでも夜は明ける@ぴあ映画生活
ムーンライト@ぴあ映画生活
ディストピア パンドラの少女@ぴあ映画生活
ゾンビ処刑人@ぴあ映画生活
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それでも夜は明ける@映画のブログ
それでも夜は明ける@映画的・絵画的・音楽的
ムーンライト@映画的・絵画的・音楽的
ムーンライト@或る日の出来事
ディストピア パンドラの少女@だらだら無気力ブログ
▼関連記事。
ゾンビ処刑人(1回目)@死屍累々映画日記(コメとかTBとか)
ゾンビ処刑人(1回目)@死屍累々映画日記・第二章

『トリガール!』をユナイテッドシネマ豊洲5で観て、98分一発のリズム物か?★★


▲ムカデ人間やるとしたら土屋太鳳はつらいポジション

五つ星評価で【★★不思議な映画。明らかに嫌いな部分があるので点は辛目】
ジャンルで言うとコメディーになると思うが、意図的に記号として埋められているコロコロチキチキペッパーズ・ナダルの薄い美声や、これ見よがしの池田エライザのスマイル、矢本悠馬軍団の画一的なナーズ芝居とかを除くと、物語的なコメディー要素は低い。通常のコメディー作品のように、ドラマを引っ掻き回す異常な人間や異常な設定が用意されていない。にも関わらずコメディーのように見えるのは中央に位置する間宮祥太朗と土屋太鳳の丁々発止のやり取りが内容は別にしてテンポが異常にいいからだ。この内容とは無関係のテンポの良さはアレに似てる。オリエンタル・ラジオのネタ「武勇伝」だ。ネタの当たり外れ関係なく、押せ押せテンポが脳内麻薬を排出させる。この映画は漫才・コントのリズムネタを映画98分一本に凝縮させたリズムネタ映画だ。

なので、それを成立させた中心ユニット間宮祥太朗&土屋太鳳は凄い偉い。
間宮祥太朗、『帝一の國』『お前はまだグンマを知らない』と同一人物に見えない。引き出し多すぎ。
土屋太鳳はカマトト芝居でどちらかと言うと苦手な役者なのだが、この映画の土屋太鳳に関しては積極的に褒めたい。ちゃんとやってる。面白い。これ、素に近いんじゃないだろうか。

土屋太鳳を誘うイケメン部長の高杉真由。「イケメン」という設定しかない役。いーんか、それで。
池田エライザなんて要所要所、微笑むだけの役。いーんか、それで(あ、変にオッパイのでかさが気になるようなスタイリングしてる)。エライザはもうちょっと恋バナの線を広げようとしつつ、バッサリ切ったみたいだが、そこにいるだけの人間として深く扱う気のないキャラなら、回収されない恋バナの伏線とか中途半端に貼らず、もっとキッチリ、ネタ要員として機能させるべきだったのではないか?

間宮祥太朗と土屋太鳳のベシャリはいいのだけど、「鳥人間コンテスト」の映画化として本当にこれで良かったの?という疑問はとても強く感じる。中心になるパイロット3人(体育会系)を支える約100人の理系メンバーが一切の人格を認められていないのは不快だ。パイロットに奉仕する働き蟻みたいな描かれ方をしている。こっちにも熱いドラマはある、と言うより本当はこっちのドラマの方が熱い筈なのだ。でも全て捨てた。潔いが、あまりその選択に拍手を送りたくない。一生懸命な奴が成果を評価されないというのは単純にストレスがたまる。あと「鳥人間コンテスト」で、前走者チームがちょっと出てくるだけで他のチームが一切出てこない。分からん。これでは「鳥人間コンテスト」がどんなものなのか全く分からんだろう。ルールの解説もしないし、何が最高到達目標かも話さないし、何故、飛行禁止区域が設けられているかも分からない。いや、もうちょっとちゃんとやろうよ。コメディーとは言え、マルクス兄弟みたいにギャグの間をドラマで埋めるようなコメディー映画じゃないんだから。

って事で「すげえうめえイクラ丼を作ろうとしたのに、土台のご飯を赤飯を使って硬炊きしちゃったので、全体はボロボロだけどイクラだけ掬って食べれば美味しい」みたいな、おめ、例えが分かりづらいよな映画でした。


【銭】
ユナイテッドシネマの有料入場ポイント2ポイントを使って800円割引の1000円で入場。
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トリガール!@ぴあ映画生活
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トリガール!@だらだら無気力ブログ
トリガール!@映画通信シネマッシモ☆映画ライター渡まち子の映画評

PS 坂場先輩と二人で殺し屋になる『トリガーガール』を作れ!

『おクジラさま ふたつの正義の物語』をユーロスペース2で観て、公平であろうとすること★★★★

五つ星評価で【★★★★イルカ問題の太地町に関する新しいアプローチ】
非常に冷静な映画で、偏見ありきで作られた『ザ・コーヴ』と、その反証で作られた『ビハインド・ザ・コーヴ』と比べると実に冷静に公平な視点で作られている。そもそも『ザ・コーヴ』が与太話の映画なので、『ビハインド・ザ・コーヴ』の時点で冷静さはあったのだが、今回の映画は更に冷静。

悪意があって(としか思えない)町を陥れようとしている問題発端となった『ザ・コーヴ』製作者達を除けば、対立してるけどみんないい人である。でも、対立軸は正しくぶつからないし、解消もされない。騒ぎは大きくなるばかり。

ちなみに私はバリバリの鯨なんか食ってまえ派です。
イルカ漁を反対するシー・シェパードも悪人ではない。このイルカ反対活動そのものが彼等のプロパガンダになり、それによって寄付金などの収入を得ているエコノミックな面はあるだろうが、イルカ漁をやめさせたいという彼等の熱意は伝わってくる。その根拠は「鯨・イルカは知能を持った高級な生き物であるから」。鯨やイルカは勿論、鶏や兎ほどバカではないだろうが、彼等が独自のイルカ語を持っているなどは、実は科学的には解明されていない「ぼやーっ」とした物らしい。そもそも、「賢い動物」という観点その物が「その動物の何を賢いとするか」という点によってバラつきがあるものであり、「賢い動物」というのはかなり茫洋とした概念にすぎない。そういう具体性のない物を根拠にするのは単なる感情論ではないかと思う。私は人間が人間以外の動物や植物を犠牲にして食べる事はそういうシステムで生物が作られているのだから、善悪で考えてもしょうがないと思っている。何を食べてもいいのだと思ってる。但し、諸事情があるから共食いは止めましょう。あと、絶滅種作成に寄与するような食べ方も未来の事を考えてやめましょうと思っている。シー・シェパードは「賢い生き物を食べるのはやめましょう」とは言うものの、「賢くない生き物を食べる事に問題はないのか」という論争には踏み込んでこない。賢い・賢くないが生殺与奪の観点になるのなら、犬と豚では豚の方が賢いというリポートだってある。でも、あんたら豚は食うけど犬を食ったら怒るだろ。
シー・シェパード以外の環境団体は太地町がイルカを斬殺し、絶滅に追い込んでいるような論調をSNSにあげ攻めてくる。でも、太地町が漁対象にしているのは絶滅危惧種以外のイルカである。この辺がすれ違っている。単に「殺している、殺している」と叫んでいるが違法ではないし、環境も悪くはしない。食べるための漁だからこれを非難するなら、牛や豚の「屠殺」をもっと騒いでもいいのではないか。ともかく、この「殺してる」コールが凄まじい物量でやって来て、太地町を「悪の観光地」として定着させてしまった。三千人の住民の町に対して全世界から「殺してる」コールが投げつけられる。単純に物量で勝てる訳がない。やはりここも感情論が論理を飛び越えてしまう。

私個人は鯨を食う事には賛成だ。
太地町を応援する派だ。
でも、捕鯨全面解禁になったからと言って鯨を食うかは別だ。
小学生の頃、給食で食った鯨に美味しい記憶がないからだ。
映画の中でも太地町の住民だが「俺は食わないね、それは不味いから」
と堂々と言う人間のインタビューがちゃんと残ってるのが面白かった。

「正義の反対は悪ではなく別の正義。」 というコピーはとてもクレバー。


【銭】
ユーロスペース会員割引1200円。
▼作品詳細などはこちらでいいかな
おクジラさま ふたつの正義の物語@ぴあ映画生活
▼関連記事。
ザ・コーヴ@死屍累々映画日記(コメント・TBあり)
ザ・コーヴ@死屍累々映画日記・第二章
ビハインド・ザ・コーヴ@死屍累々映画日記・第二章
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